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2026.04.12

「ポルノ」を見る

「ポルノ」
作 長塚圭史
演出 松居大悟
出演 玉置玲央/前田敦子/鳥越裕貴/藤谷理子
    小野寺ずる/岩本晟夢/うぇるとん東
観劇日 2026年4月11日(土曜日)午後1時開演
劇場 本多劇場
上演時間 2時間5分
料金 9000円

 ロビーではパンフレットが販売されていた。パンフレット以外の物販があったかどうかはチェックしていない。
 ネタバレありの感想は以下に。

 「ポルノ」の公式Webサイトはこちら。

 最初に書いてしまうと、この芝居のタイトルが何故「ポルノ」なのか、見終わってもさっぱり分からなかった。
 むしろ、見終わったときに「で、ポルノって何だったの?」と思ったくらいだ。
 今さっきサイトを見て、この作品が長塚圭史の旗揚げ公演をリライトしたもので、リライトした時点で「その当時の自分をさらけ出す」というような意味合いで付けたのかもしれない、というコメントを読んだ。
 なるほど。分からない訳である。分からなくても良くて良かった。

 では「ポルノ」はどんな筋立てだったかといえば、前半は玉置玲央演じる町議会選挙に立候補して「弱者の代弁者」を名乗り、弱者を体感するために自分の足を前田敦子演じる妻に漬物石で折ってもらった男の話、後半は同じ町内で着ぐるみ劇団の活動をしていた女子がテレビに進出して売れ始めたところで足を折って見知らぬ誰かを居候させる話である。
 嘘っぽい。ちょっと違う。でも筋立てとしてはこうだ。

 幕開けは、真っ暗な舞台上に玉置玲央の声が響く。男が選挙演説を行っている。
 ここで暗闇にも何にも負けない声を届けられるのが玉置玲央の真骨頂だと思う。足を折ったという設定なのに、何故か軽々と松葉杖を使いこなし、軽く片足ジャンプで階段を上り下りしてしまう身体性ももちろんだ。全然弱者を体現していない。
 というか、何故「弱者の代弁者」なのか。町のすべての坂をエスカレーターにするという公約も意味が分からない。何がしたいのか。

 この二つの話を繋げているのが、妻に軟禁されてしまった若い男と夫の選挙活動を着ぐるみを着て手伝うことになった若い男の二人である。
 軟禁されていた男は、実は女子の恋人だったし、女子の女友達の恋人が着ぐるみの男である。
 随分と狭い町でぎゅっと詰まってぐるぐる回っている人々の話なのだ。狭い。狭すぎる。近くて近すぎる。
 でも、多分この狭さと近さが濃縮された奇妙な関係を浮かび上がらせるために必要なのだと思う。
 身近なところに、この狂気のぐるぐるは存在している、みたいな感じだ。

 妻は、拉致してきたらしい若い男を「子供だ」と思い込んでいるかのような言動を続ける。その「子供」はあっという間に大きくなっている。男が「成長が早くなっていることに気がつかないのか?」と若い男に意味ありげに言っていたけれど、種明かしがなかった。どういう意味があったのか今からでも教えて欲しい。
 そして、実はその妻は男が8年前くらいにどこかから拉致してきてずっと自宅に監禁していたらしい。別に身体を拘束されている訳ではないけれど日々「家から出ちゃダメ」と言っている。言っているだけなら出て行けるよね、と思っていたら、警察から保護された後も女は自分が拉致監禁されていたことを認めなかったらしい。

 妻に監禁されていた男は、両足を折られて身動きができなかったり、鎖で繋がれたりしていたけれど、何とか逃げ出して恋人の家に向かう。
 もちろん、ずっと連絡していなかった彼女は怒り心頭である。
 彼女の女友達は、着ぐるみバイトの男と付き合っていて、お互いに目を刺して失明させ合った後も付き合い続けている。
 若い女のところに突然現れた「妖精」を名乗る男は、実は彼女が着ていた着ぐるみだったらしく、二人が握手した瞬間、着ぐるみの妖精(?)の男は消えてしまう。

 ラストシーンが秀逸で、秀逸だと書きつつよく覚えていないのだけれど、とにかく暗転で幕である。
 ラストシーンっぽい盛り上がりもないし、独白シーンのようなものもない、カーテンコールもない。暗転し、客席に電気が入って幕である。
 スタッフの方が「これにて終演です」とわざわざ客席で断りを入れたくらい、あっけない幕切れである。
 この潔い感じというのか、終わったんだか終わってないんだか分からない感じは珍しいと思う。
 今回の演出でこうなったのか、初演の際もこういう最後だったのか、気になる。

 登場人物たちは概ね狂気に囚われている。
 なかなか濃い空間である。
 その濃い空間を外から見ると、若いな、という感想が浮かぶ。これは若い頃にしか書けない作品だな、という風に思う。若かったからこそ書ける芝居という方が正確かも知れない。

 そういえば、客席の男性率がかなり高かったように思う。客席にこんなに男性がいる芝居って最近なかなかない。
 前田敦子効果なんだろうか。
 小悪魔風かつ暴力的な女を演じた今回の前田敦子はかなり可愛かったと思う。AKB時代よりも今の彼女の方が好きだ。
 刺激的な舞台だった。

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