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2026.04.26

「岸辺のアルバム」を見る

モチロンプロデュース「岸辺のアルバム」
作]山田太一
脚色 倉持裕
演出 木野花
出演 小林聡美/杉本哲太/細田佳央太/芋生悠
    前原滉/伊勢志摩/夏生大湖/田辺誠一
観劇日 2026年4月25日(土曜日)午後1時開演
劇場 東京芸術劇場シアターイースト
上演時間 2時間55分(15分間の休憩あり)
料金 12000円

 ロビーではパンフレット(1800円)が販売されていた。
 ところで、最近、パンフレットはA5サイズが増えてきたように思う。 

 モチロンプロデュースの公式Webサイト内、「岸辺のアルバム」のページはこちら。

 舞台セットが凝っていて、客席の通常舞台がある場所がメインの舞台、両脇に空間があって座席が設置されている。私はちょうどこの辺りの席で、階段を真横からみる感じだった。客席の真ん中より後方にサブの舞台があり、少し高くなっている。そこは椅子っぽかったりベッドっぽい感じの家具が出たり入ったりするのみで、壁や天井はない。その二つの舞台を通路が繋いでいて、途中に赤電話が置いてあり、外っぽい空間になっている。

 赤電話である。
 メインの舞台は田島家のリビングダイニングと2階に子供二人の部屋があり、そのリビングダイニングにある電話もダイヤル式の黒電話である。
 古い。
 今見てみたら、「岸辺のアルバム」のドラマは1977年放映だった。1974年に実際にあった多摩川水害がモチーフに取り上げられている。
 赤電話と黒電話は、間違いなく「時代」を感じさせるための小道具だろう。

 時折電車の音が響き、聞くたびに「うん、きっと京王線だね。このドラマに出てくる電車はJRじゃなくて私鉄よね」と思っていた。理由は不明である。
 田島一家は4人で、杉本哲太演じる商社で部長を務めている父、小林聡美演じる専業主婦でミシンの内職をしている母、芋生悠演じる上智大生の姉、細田佳央太演じる高3で受験生の弟で構成されている。

 1970年代だからなのか、この父親の亭主関白っぷりが半端ない。すぐ威張るしすぐ怒鳴る。仕事は一生懸命やっているけど、それを逃げ道にしているところもあって、母親は常に父親に気を遣っている。何なら、子供達にも気を遣いまくっていて、二人の子供は「りつこちゃん」「しげるちゃん」とちゃん呼びである。若干、気持ち悪い。1970年代はそうだったのか。
 こういう家族は、当時よくある感じだったからドラマになったのか、当時としても珍しい感じだったからドラマになったのか、その辺をぜひ知りたいと思う。

 とにかくこの父親が私は苦手で、怒鳴るたびにビクッとなる。その怒鳴り声に対抗して姉は不機嫌顔を崩さず、理に勝った反論をしている。その様子だって決して好感を持てるものではないけれど、それも許せてしまうくらいには、父親の亭主関白圧制者という感じの佇まいが苦手だ。
 今の「よくあるファミリードラマ」はどういう感じなんだろうと思う。

 母は突然かかってきた「雑談しませんか」電話に引っかかり、「後腐れのない誰にも迷惑をかけない不倫をしませんか」に進んでしまう。
 父親な、仕事で、東南アジアから女性を連れてきて風俗で働かせるようなことをしている。
 姉は米国人のボーイフレンドがいたが、その男に嵌められて妊娠させられ、堕胎手術を受ける。
 その姉に手助けしたのは、弟の高校の担任教師だ。

 年齢構成がよく分からなくなってくる。ドラマでは、母親な42歳の設定だったらしい。長女が大学3年生だとすると、20歳そこそこで結婚したということになる。
 自分は42歳、娘が21歳、そも娘が「結婚したい」と連れてきた息子の担任教師は34歳。
 舞台での見た目よりも、父親がショックを受けたことは理解した。年齢をこうして考えてみないと理解できなかったけれども、何もかも、今よりも「お約束」があった時代の話である。

 その「お約束」があるから、不倫した母親は父親に詰められて「この家にいたい」「お父さんと生きたい」と言うのかしら、と思う。
 それって二重三重の意味でなくない? 経済的な理由以外で、その選択はないんじゃない? と思ってしまった。
 そういう浮世離れした感じを出すためなのか、小林聡美の演技がやや固いというのか、棒読みっぽいというか、そういう風に見えたことにちょっと戸惑ってしまった。
 多分、台詞がかなり書き言葉に近かったのだと思う。
 それはなぜ? と思うけれど、木野花の狙いなんだろうな、としか分からない。

 長男も大学受験を放棄して家を飛び出した後、多摩川の本堤防が決壊しそうになり、決壊する。
 その中で、アルバムを2階に上げていなかったと最初に主張するのが父親だったことが意外だった。? アルバムに固執するのは父親なの? と思っていると、一次避難所に避難した田島夫婦が戻ってくる。
 夫は「この家しかない。この家に残る」と言い、妻は「何を莫迦なことを言っているの」と抗議する。外から警官が呼んでいる音がする。何とか消防署員に頼み込んでもう一度家に入ったとき、家族の明確な目的は「アルバム」だった。
 家の前で笑顔で撮るのが恒例になっている写真等々、いわば田島家の表の顔の写真集だ。
 このアルバムを「大切なものだから」と強引に言って家に取り戻るのが妻であったことも意外だった。
 この男、思いつきでしかしゃべってないな、と思わず当たりが強くなる。

 多摩川に流されてしまった我が家の一部を発見し、「心機一転」と口々に4人揃って言い合い、幕である。

 綺麗にまとまりすぎない? とか、長男だけ周りに隠す秘密がないっていうのが嘘っぽい、とか、色々とツッコみたい部分がありつつ、あっという間の3時間で楽しかった。
 見て良かった。

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