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2026.05.24

「華氏マイナス320°」を見る

NODA・MAP第28回公演「華氏マイナス320°」
作・演出 野田秀樹
出演 阿部サダヲ/広瀬すず/深津絵里
    大倉孝二/高田聖子/川上友里
    橋本さとし/野田秀樹/橋爪功
    安東信助/大村わたる/近藤彩香/白倉裕二
    谷村実紀/田花遥/中澤聖子/中島多羅
    八条院蔵人/引間文香/藤井颯太郎/間瀬奈都美
    的場祐太/MISAKI/森田真和/吉田朋弘
スウィング 横山千穂/菊沢将憲
観劇日 2026年5月23日(土曜日)午後2時開演
劇場 東京芸術劇場プレイハウス
上演時間 2時間25分
料金 13000円

 ロビーではパンフレット(1500円)が販売されていた。野田秀樹と山中伸弥の対談が面白そうで購入するかどうか迷ったけど、購入せず仕舞い。
 終演後にパンフレット販売ではない行列ができていた。何かと思って覗いたら、舞台のミニチュア撮影の行列だった。

 ネタバレありの感想は以下に。

 野田地図の公式Webサイト内、「華氏マイナス320°」のページはこちら。

 「ネタバレあり」といつも通りに書いてみたものの、見終わったときの感想は「久々に何ひとつ分からなかった!」だった。
 いつもは、これだけはある「あの話か!」というひらめきというか心当たりすらない。困った。
 誰かに(できれば野田秀樹自身に)解説してほしいくらいだ。

 いつもだと、何というのか、歴史というか出来事というか事件というか、そういう何かをテーマにして全く別方向というかとんでもない方向から物語を立ち上げていって、終盤に「そうだったのか!」とぽんと手を打つ、みたいなところがあるのだけれど、今回は、手を打つ瞬間がないままカーテンコールを迎えてしまった。
 何故なんだ。
 レイ・ブラッドベリの「華氏451度」を事前に読んでおくべきだったのか、読んでいたら「何か」の片鱗くらいは掴めたのか。

 あと、堕天使とかファウストとか悪魔とか、キリスト教的なモチーフが全く分からないことが問題なのか。流石に新約聖書を読んでから観劇に臨もうとは思っていないけれど、教養レベルの知識があれば理解できたのか。
 卑弥呼とその母と娘という3世代の女が出てきてけれど、邪馬台国を知っていれば分かったのか。卑弥呼は巫女だったのか祭主だったのか、邪馬台国の成り立ちと宗教の関連を知っていれば分かったのか。
 こう書き出して行くと、とりあえず私が苦手な分野の集まりだったんだなと腑に落ちた。

 物語は全く入って来ず、舞台上ではアンサンブルの美しさが際立つ。
 ここまでアンサンブルが一人で語ったり独立して演じているシーンの多い舞台は、野田地図としては久々なのではなかろうか。久々というよりも初めて? というくらい、珍しいという印象を受けた。この印象が正しいかどうかは謎だ。
 開演前からアンサンブルが数人舞台上にいて、地面を掘り返したりさすったり喜んだりと言ったパフォーマンスをしていた。開演すればそこは遺跡発掘現場で、45cmだけ、様々な物が埋まっている地層があるという話をしている。

 発掘された「骨」を表す動きが歌舞伎のようで面白い。
 阿部サダオが最初に出てきたとき、二人羽織の姿が見える版のような感じで、彼の前に立って手話で台詞を表現する役者さん、その台詞をしゃべる阿部サダヲという構図が面白い。
 そして、その形でしゃべっているときは、何故か阿部サダヲは阿部サダヲで、役であるところの「たすけて」ではないらしい。

 野田秀樹は相変わらず中途半端な白衣を着た怪しげな教授だし、深津絵里はその遺跡発掘現場の最高責任者としてやってきた教授だ。彼女の役名がずっと「きゅうり」と聞こえていたのだけれど、実際は「キュリー」だったのかも知れない。
 配役表などは配られず、恐らく、劇場ロビーに貼ってあったQRコードの先にあったと思うけれど、うっかり取得するのを忘れてしまったので、役名が分からない。

 とにかく、深津絵里演じる教授は、人類は遺伝子で繋がれてきたのではなく、骨で繋がれてきたのだという新説を唱えており、野田秀樹演じる教授はその新説を評価しているらしい。
 そして、この二人の教授に付いて歩いているのが川上友里演じる助手だけれど、この助手の衣装と化粧が何ともピエロっぽい。ピエロというよりもクラウンっぽい。

 広瀬すず演じる堕天使は、悪魔であり、かつ「あくまでもてんし」であると主張する。だから悪魔なのか天使なのかはっきりしろ! と言いたいけれど、要するにその二つは分けられない、兼ねた存在である、ということなんだろう。
 そして彼女がまた舞台上をがんがん駆け回るし、体が軽い。声も通る。素晴らしいことであるよと思う。
 声といえば、深津絵里と広瀬すずの声の質がとても似ていると感じた。深津絵里は後半になるにつれて上がって行き、広瀬すずは初っぱなから全開、という感じだった。

 高田聖子と橋本さとしの新感線コンビは、姉弟の役で、かつ製薬会社の会長と社長として覇権を争っているらしい。
 そしてこの製薬会社は、遺跡発掘のスポンサーであるらしい。
 かつ、深津絵里演じる教授の研究(不老不死だったり若返りだったりするらしい)のスポンサーでもあり、記者会見でそれこそ二人羽織よろしく「研究は完成した」と言わせてしまうくらい強引だ。お金って凄い。

 大倉孝二が何をしていたかと聞かれると一番困る。掃除をしていたような気もするし、ハーメルンの笛吹きもやっていて研究室からマウスを逃がそうとしていた。
 いや、橋本功が何をしていたかと聞かれても困る。悪魔だったような気もするし、何やら実験をしている錬金術師っぽい何かだったような気もするし、早速記憶が定かではない。
 あと、橋本功演じる神様と、広瀬すず演じる堕天使は「人類が素晴らしいことを達成するか」を賭けていて、堕天使は「達成する」と言い、神は「達成しない」と言う。堕天使が負けを認めていたから、人類は救われなかったようだ。

 時空を越えた先には、それまでは舞台上にすっくと立っていた電話ボックスが斜めに傾いて砂に埋もれており、これは猿の惑星か? と思ったけど、特に彷彿とさせるような展開はない。

 やはり、印象に残っていたあれこれを書き出しても、この舞台が何を描いていたか、それでも分からない。
 これは多分、分からないままでもいい奴だ、ということにしたい。
 たくさんの人が駆け回っていながら舞台上が静謐に見えたのは、多分、深津絵里の醸し出す雰囲気の影響だろうと思う。
 彼らが何を目指し、何に翻弄され、彼らの本当の願いは何だったのか、分からないままカーテンコールに突入した。
 舞台億の曇り空のような映像が綺麗だった。

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コメント

はな 様
 初めまして、でしょうか。
 コメントありがとうございます。

 「分かっていない」と言ってくださる方がいらっしゃって嬉しいです。嬉しいと言いますか、ほっとしました。
 やまゆり園の事件というと、「生きる価値がある」かどうか、それを誰が決めるのか、そういうお話だったという解釈ですよね?
 なるほど、そういう読み解き方もあるのだわ、と思いました。

 私はまだまだ「分からない」なので、もう少し考えてみます。
 2回見られたら良かったなと思っています。

 またどうぞ遊びにいらしてくださいませ。

投稿: 姫林檎 | 2026.05.30 09:31

私も昨夜(5月28日)観に行って、詳しいレビューが読みたくてたどり着きました。
まだ、よく分かっていません。
でも、芝居を観ている途中から、大倉さんが「生きている価値の無い天使(マウス?)を掃除してやる」「こいつと喋っていて、分かるか?意志疎通できるか?」みたいなことを言っていたり、タスケテが「15歳まで生きられないと言われていたけれど、まだ生きている」と言っていたところから、うっすらと、やまゆり園の事件を思い付きました。正しいか分かりませんが。どうでしょう?

投稿: はな | 2026.05.29 08:43

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