「成瀬は天下を取りにいく」を見る
「成瀬は天下を取りにいく」
劇作・脚本・演出 G2
出演 山下美月/藤野涼子/山崎静代/ISSEI
明星真由美/千賀由紀子/櫻井淳子/小林大介
黒田篤臣/アサヌマ理紗/青山美郷/中川大喜
段隆作/中村守里/天宮良/田畑智子
観劇日 2026年7月11日(土曜日)正午開演
劇場 サンシャイン劇場
上演時間 2時間30分(20分間の休憩あり)
料金 13500円
ロビーではパンフレットやアクリルスタンドなどが販売されていた。
主演二人のアクリルスタンドは個数制限をしているらしく、帰り際に見たら「本日昼公演分完売」といった感じの貼り紙がしてあった。
ネタバレありの感想は以下に。
「成瀬は天下を取りにいく」と「成瀬は信じた道を行く」の2冊を原作とした舞台である。
と堂々と書いてはみたものの、ベストセラーシリーズだというのに、私は3冊とも読んだことがない。
原作小説がある舞台や映画は、舞台や映画を先、小説を読むのは後、というのが正解だと思っているので、読んでいなくて逆に良かったなと思いつつ、チケットを取った後も小説は全く読まずに見に行った。
12時半開演だと思い込んでいて、「今日は早めに到着したわ」と12時5分前くらいに劇場に到着したら、「間もなく開演です」と言われて焦った。開演時間が早いのに早めに到着した自分、偉かった、と思いつつ、もう暗くなっている劇場に入って席に着く。席が列の真ん中とかでなく世かったと思う。
座ってすぐ開演した。
舞台を拝見した感じ、「成瀬は〜」のシリーズは短編集っぽいのではなかろうか。章によってテーマも登場人物も成瀬の年齢も変わる。その短編のうち何編かを選んで舞台化したという感じがした。
舞台の各エピソードを繋ぐのは、もちろん山下美月演じる「成瀬あかり」だけれど、彼女は何というか本当に独特な人物らしい。しゃべり方からして、何というか少し前の武士のようだと言えばいいのか、ですます調ですらない。声も意識して低めに発声しているっぽい。
まあ、変わり者であることは間違いない。
要するに成瀬あかりはただ存在して、思うとおりに言ったり行動したりしているだけで、悪い子では全くないけど、「話をつなぐ」とか「説明する」ということにとことん向いていない。
必然的に狂言回し役は相棒が務めるしかなく、この舞台で一貫してその役割を担っているのが藤野涼子演じる島崎みゆきという幼なじみである。
幕開けの14歳中学生のときは同級生、高校・大学は違う学校に行ったようだけれど、島崎が東京に引っ越すまでは同じマンションに住んでいて縁が続いている。
この島崎が、成瀬に振り回され引っ張り回されときどき情けなくなったりもやもやしたりしながらも、彼女と一緒にいられることをかけがえのないことだと感じているその心持ちが舞台全編を通じて流れていて、なかなか良い。
うんうん、こういうぶっとんだ友達には常識的な友達が不可欠だよね、と思う。
成瀬あかりがぶっとんでいつつも誠実な人間というか誠実であろうとする人間だからこそ成り立っている関係だよね、と思う。
何というか、書店で見かけていたときは、成瀬あかりという人物がもう少し天才的というか、オールマイティというか、そういう感じのキャラだと思っていたので、ここまで変わっているキャラだと逆に安心する。変な言い方だと思うけれど、劣等感を刺激されずに済んでありがたい。
それには多分、周りの感じも良くて、明星真由美演じるさばけた感じの島崎の母親もいいし、しずちゃん演じる一人漫才と始めちゃいそうなクレーマーと自認している主婦もいいし、天宮亮演じる成瀬の父親とも思えないごく普通の父親と田畑智子演じるお嬢様然とした母親のコンビもいい。
小説の登場人物としても、舞台の登場人物としても、もの凄くバランスがいい感じだ。
この小説が時代を特定しているかどうか知らなかったし、舞台上でも多分語られなかったのだけれど、どうやら物語の始まり成瀬14歳のときはちょうどコロナ禍という設定だったらしい。
成瀬が、閉店してしまう大津の西武デパートに毎日通うことにしたのは、デパートに愛着と思い出があったことはもちろん、病気のおばあちゃんのお見舞いに行けない代わりにテレビで自分の姿を見て貰おうという気持ちもあったらしい。
せっかくのエピソードなのだから、「コロナ禍だ」という点をもっと分かりやすく伝えてしまっても良かったんじゃないかと思う。
島崎が「成瀬が毎日デパートに通ったのはおばあちゃんのためもあったんじゃないかと思う」と語るだけで悟らせるのは若干厳しい。というか、私は気がつかなかった。
東京に引っ越した島崎が、成瀬を驚かせようとこっそり大晦日に戻ると、成瀬は何故か「探さないでください」という書き置きとスマホまで置いていなくなってしまっている。
母親はゆったり構えているけれど、島崎と父親は焦って探しまくる。成瀬がバイトしているスーパーのクレーマー主婦や成瀬と一緒に大津観光大使を務めている女子大生と繋ぎをとり、「成瀬捜索班」のLINEグループを作り、行方を追う。
実は、成瀬は紅白歌合戦でけん玉に参加するために東京におり、テレビでそれを見て探していた全員で息をつく。
可笑しい。
成瀬は11時59分に自宅に戻り、「紅白でけん玉をすることを他言するな」というNHKスタッフの指示を四角四面に了解した結果、「探さないでください」であり、GPSを警戒してスマホを置いて行ったのだ、というオチがつく。
そこで幕だ。
それにしても、こんなに男性率の高い客席は久しぶりだった。
半分とは言わないけれど、30〜40%は男性だったんではなかろうか。しかも割と「中高年」という、劇場でほぼ見かけない年代の方が多かったように思う。山下美月効果なのか? かなり謎だった。
それはともかく、原作小説は「成瀬は都を駆け抜ける」と含め3冊でシリーズが完結している。
この3冊目をメインにした続編舞台がありそうだ。
そちらもぜひ見てみたいと思った。
| 固定リンク
「*芝居」カテゴリの記事
- 「聖地X」の抽選予約に申し込む(2026.08.09)
- 「頭痛肩こり樋口一葉」を見る(2026.08.04)
- 「特別な情熱」を見る(2026.07.29)
- 「プライマ・フェイシィー私の声を聞いてー」を見る(2026.07.26)
- 「スリーゴースト」の抽選予約に申し込む(2026.07.25)
「*感想」カテゴリの記事
- 「頭痛肩こり樋口一葉」を見る(2026.08.04)
- 「特別な情熱」を見る(2026.07.29)
- 「プライマ・フェイシィー私の声を聞いてー」を見る(2026.07.26)
- 「アケチコ!~蒸気の黒ダイヤ、あるいは狂気の島~」を見る(2026.07.10)
- 「成瀬は天下を取りにいく」を見る(2026.07.12)

コメント