ケニア旅行記9日目
2003年9月21日(日曜日)
今朝のモーニング・サファリの集合は昨日より1時間遅い6時だった。5時半にモーニングノックが来る。
レストランに行くと、添乗員さんがすでに待っていてくれた。やはりサファリに出掛けるヴィンセントもいる。コーヒーと紅茶のサービスがあって、担当しているロッジのスタッフとヴィンセントはもちろん顔見知りのようだ。
出発してすぐに象の群と遭遇した。添乗員さんに「幸先がいいですね」と言われる。
ツアーの方々が乗っていると思われる気球が見える。概ね私たちの車と同じ方向に進んでいるらしい。「見えないかな」と言いつつ手を振る。
その後しばらくは遠出のためのドライブという感じで、ひたすら走った。ついにはマサイ・マラに4つあるという飛行場のうちのもう一つも通過してしまう。セレナ・ロッジを遠目に見て、車に揺られ続ける。連日の寝不足もあって、車内も盛り上がらないことこの上ない。
そうこうしているうちに久しぶりに別の車の姿を見たなと思ったら、茂みの中で寝ているライオンに遭遇した。狩りの後らしく、膨らんだお腹を大きく上下させて熟睡している。
ドライバーのオボッチャが、サファリ・カーのエンジンをふかして強引にライオンを起こそうとする。
彼我の距離5mでそんなに強引なことをしていいのかと思っていると、ライオンが目を覚ました。 おぉ! そんなに怒ってはいないようだ。
雌ライオンのお腹が大きいのは、たくさん食べたからではなくて赤ちゃんがいるのかもしれない、と教えてもらう。ちょうど1ヶ月前くらいがハネムーンのシーズンだったそうだ。
思いついて、ライオンのドアップの写真を撮った。
動物図鑑の本にあった「空を入れる」「動物の進行方向をあける」という注意を(なるべく)守って写真を撮っていたので、こんな写真は珍しい。たまにはいいだろう。
これまで、大抵はデジカメで写真を撮っても撮った写真を確認している暇はなかったけれど、このロング・サファリでは四人しかいないという気楽さもあり、かなり長めに車を停めていてくれるので、撮った写真を見る余裕もある。車内の方々に披露したらなかなか好評で、CD-Rに焼いて送ることを約束する。
さらにしばらく車を走らせたところで、オボッチャが「あそこの蟻塚の上にチーターがいる」と教えてくれた。
指差す方向に目をこらしてみても、確かに蟻塚はたくさんあるけれど、チータなんて確認できない。「見えない」と騒いでいると、オボッチャはおもむろに車道から外れてランクルをサバンナに乗り入れた。
親子4頭のチーターの家族に、3〜4mの距離まで大接近だ。
大興奮で写真を撮りまくっているうち、ふと気が付くとチーター(特に子どもたち)が結構活発に動いてこちらを伺っている気配がしている。
「狙われているー。」と騒いでいると、オボッチャが「赤い服に反応しているんだ。」と私を指差して教えてくれた。動物が赤い色に反応するというのは本当だったらしい。
もうかなり日も高くなって暖かくなっていたことだし「脱ごうか?」と聞いてみたところ、「大丈夫」という返事だった。
プロが言うのだから大丈夫でしょうと、赤い服を着たまま、チーターに威嚇されつつ写真を撮りまくる。
流石に姿勢を低くして今にも飛びかかって来そうになったときには、車中が大騒ぎになった。
チーターのしなやかさを堪能した後、川べりに移動して朝食になった。オボッチャが周辺の安全を確認してから、「車を降りていいよ」の合図をしてくれる。
ロッジで用意してくれたお弁当は、タッパの中にサンドイッチやソーセージ、ゆで卵、リンゴなどなどが入っていた。
朝食を食べた場所から少し離れたところにカバの群れが寝ているのが見えた。そこは、マラ川のヒッポ・プールだそうだ。40頭くらいの集団で、なかなかの迫力だ。
「近くで見たい!」とお願いしたら、「危ないからダメ」という返事だった。カバは結構凶暴な動物らしい。
朝ごはんを食べながら(もちろん添乗員さんの通訳付きで)しゃべっているうちに、オボッチャがムパタ・サファリ・クラブのチーフドライバだということが判明した。ムパタ・サファリ・クラブのドライバーはみんな優秀で、みんな自分がコーチしたんだ、と話す彼が誇らしげなのが可愛い。
食休みし、木の陰でブッシュトイレを済ませ、再びサファリに出発する。
小さな川をシマウマとヌーが渡っているところに出会った。
ヌーとシマウマの川渡りポイントでは、昨日は川岸にたくさん集まってきていて今にも渡りそうだったので30分くらい待ったけれど、結局見ることはできなかったそうだ。
今日はまだ動物も集まっていなくて、「午後にまた来てみよう」ということになった。
しばらく走ると、サファリ・カーが1台停まり、テレビカメラで何かを狙っているのが見えた。自立すべく親に置き去りにされたチータの兄弟がいるらしい。
ドライバー同士で話がついたらしく、オボッチャがその兄弟チータのそばまで近づいてくれた。
この兄弟チータは私の赤い服を見ても反応しない。彼らも不安がっていたのかもしれない。
「バッファローの赤ちゃんって見てないね」「バッファローは赤ちゃんのときからあんなにゴツイのかな」という話になり、添乗員さんからオボッチャに伝えてもらう。するとあっさりとバッファローの群れ(もちろん赤ちゃんもその中にいる)の近くまで連れて行ってくれた。
その途中、あまりにも可愛い「お馬の親子」がいたので車を停めてもらう。実はこの頃には、シマウマとヌーにはかなり飽きていたけれど、「子供」となると話は別だ。シマウマの子供は茶髪でとても可愛い。
そのすぐ近くでは、鷲(だと思う)がシマウマをついばんでいるところも見た。オボッチャによると、そのシマウマはハンティングで殺されたのではなく病死したらしい。
象やキリンも見ながら12時半にロッジに戻り、そのまま昼食を食べた。
レストランのすぐ上に図書室があり、そこにヴィンセントがいた。彼のお父さんはマサイ族、お母さんはキクユ族で、彼自身は子供の頃はマサイ・ヴィレッジで育ったそうだ。
「マサイ・ジャンプもできるの?」と聞いたら「得意です」という返事だ。
「夜に一緒にビールでも飲みましょう」という話をして別れる。
昨夜、添乗員さんから、今日の午後はツアーの日程上はフリータイムだけれど希望者はサファリに無料で参加できるという話があった。もちろん私は参加する。その出発が15時だから、少しだけ時間がある。
ケニアに行く前から「絶対やる」と決めていた、「ケニアで『海辺のカフカ』を読む」をやっと実行した。
朝夕にサファリがあって、昼間はフリータイムだから時間はたっぷりあるだろうと思っていたら、フリータイムになるとお洗濯を始めたり、友達に絵はがきを書いたり、日記を書いたりして、本を読んでいる時間がまるでなかったのだ。
窓を全開にすると涼しい風が入ってきて、ベッドに寝転がってかなり心地よい読書タイムを過ごした。
イブニング・サファリは、ツアー17名のうち9名が参加した。添乗員さんも一緒に行ってくれると言う。
人数が減ったせいか、面倒になったのか、「もういいですよね。適当に車に乗ってください」ということになり、適当に3台に分乗する。
「何を見に行くの?」とドライバーさんに聞いたら「ヌーの川渡りを見たいということなので、まず川に行く」という返事だ。
朝のロング・サファリで見た川に着くと、ヌーとシマウマが川岸に押し寄せて、まさに渡らんとするタイミングだった。
先に渡ったシマウマが、なかなか来ない後続の集団を心配して何だかせつないような声で仲間を呼んでいる。
それでも川に入る気配がないことを察して、何頭かのシマウマが迎えに戻る。何故かガゼルが一頭だけすいすいと泳いで川を渡り始める。
そうこうしているうちに、いきなりヌーが集団で川を渡り始めた。 一度決めてしまうとやたらと大胆で、特に足元を確かめもせずに次々と川に飛び込んでいく。後から後から続いてくるので、後ろから押されて、ということもあるのかもしれない。一列になって川を泳いで渡っている。
渡り終えたヌーとシマウマはそのまま川のこちら側をタンザニアに向けて歩いて行く。
ふと気が付くと、川の向こうに見えていたカバがいなくなっていた。
ツアーの人によると、さっき渡っていたガゼルがワニに捕まってしまったらしい。ワニはガゼルをくわえて川を渡っていたそうだ。ヌーとシマウマに気をとられて、全く気が付かなかった。
ロッジへの帰り道でドライバーさんに聞いたところでは、ヌーが川を渡るシーンは1ヶ月滞在して2〜3回見られるかどうかというくらい珍しいそうだ。そう聞くと、嬉しさも倍増である。
アンボセリに到着したとき以来目にしていなかったダチョウを発見し、車を停めてもらう。ダチョウは黒っぽい羽毛のものが雄、茶色っぽい羽毛のものが雌と教わったけれど、私には見分けが付かなかった。
帰り際にとうとう雨が降り出した。結構強い雨で、ドライバーさんにオープントップを閉めてもらう。
それでも遠くの方は晴れていて、地平線から地平線に半円状にかかる虹を見ることができた。
そんな虹を見たのは生まれて初めてだ。
このツアー最後の夕食は、19時40分からという微妙な時間に集合だった。
えびのマリネ、チキンとそば入りのスープ、メインは選べたのでビーフのベーコン巻きにする。デザートにいちごのムースとコーヒーというメニューだ。
ツアー中に誕生日を迎えた方がいらして、その方のお誕生パーティになる。シェフがバースディケーキを作ってくれて、ろうそくを立て、ロッジのスタッフが歌いながら持って来てくれた。みんなで周りを囲んでお祝いだ。
夕食の後、添乗員さんがみんなに声をかけてくれ、ほとんどのツアーメンバーがそのままバーに移動した。
ヴィンセントも後から合流し、日本語と英語のちゃんぽんでしゃべる。どう考えても私の英語よりも彼の日本語の方が達者だ。
「今日はヌーの川渡りを見たんだ」と自慢すると、ヴィンセントも「それはラッキーだ」と驚いていた。その幸運と一緒にケニアに残ってくれ、なんて言っていた。彼は明日、川渡りを見るために再チャレンジするそうだ。
「ヒョウが見たかったな」と言うと、「ずっとこっちにいれば見られる」と言う。そりゃあそうかも知れないが、そういう訳にはいかないのだ。
ヴィンセントは、ヒョウは主に木の高いところにいるから運転しながら見つけるのは大変なんだと言う。
ガイドドライバーという仕事はかなり季節労働のようで、「今はヌーがマサイ・マラに来ているから肉食獣もこちらにいるけれども、彼らがセレンゲティにいる間は観光客も来ないから、寝ているしかないくらい暇だ」と言っていた。
23時には消灯になるので、22時半にお開きになった。
ちなみに、私がそのとき飲んだのは「アフリカン・ブラウン・カウ」というカクテルである。ケニアのコーヒーリキュールをミルクで割ったカルアミルクのようなカクテルで、甘くて美味しかった。
2005年6月4日画像追加
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