アイスランド旅行記5日目
2005年8月17日(水曜日)
何故か5時半に目が覚めた。外を見るといいお天気で、今日は日差しがかなり強そうである。
7時過ぎに朝食を食べにレストランに行くと、もうお散歩をして来た方がいらして、ホテルから歩いて5分くらいのラーガルフリョート湖に行くと景色がとても綺麗だと教えてもらった。今日は出発もゆっくりになって時間がある。朝食後、散歩に出た。
湖畔に出ると、アイスランド・ポニーが2頭飼われていた。
湖があって、小屋があって、空は青くて、ポニーがのんびりと緑の草を食んでいる。まるで絵に描いたような牧歌的な風景が広がっていた。
何故かポニーが寄って来た。木の棒と針金だけで作られた柵では少々心許なく、動物が余り得意でない私はつい逃げ腰になる。
9時にホテルを出発し、1時間くらい走ると、バスはガタガタ道に乗り入れた。
今日行く筈だったアスキャ山は、途中の道がヨークルスアゥ・アゥフョットウム川の増水のために通行止めになってしまい、行くことができない。
その代わり、モズルダル周辺の山岳道路(旧国道1号線)を通って、デティフォスの滝(ここは当初から今日訪れる予定だった)に向かい、そこからアウスヒルギ渓谷、フーサヴィークの街に寄ってから、今日の宿泊地であるミーヴァトンまでという行程に変更になっている。
この山岳道路周辺の景色は、アスキャ山へ向かう道の風景に近いという。
フォト・ストップをした場所は標高が500mくらい。もの凄い強風で、手がかじかみ、とても寒い。ここは森林限界を超えており、「不毛の溶岩地帯」といった眺めが広がっている。
少し歩いて登るとさらに眺めの良い見晴台があるという標識が出ていたけれど、あまりの寒さに断念した。
旧国道1号線は昔から使われていた道に沿って作られている。だから、旧1号線沿いには、昔、荒天でも道を失わないようにと作られたケルンが今も残っている。
そして、現1号線は、道路工事の技術に発達に伴って、旧1号線のように「通りやすい道を通る」のではなく、山を削ったりトンネルを通したり橋を渡したりして「早く走れる道」に作り替えられつつあり、「毎年長さが短くなって行くから覚えるのが大変」とガイドさんが笑っていた。
この山岳道路を抜ける直前、11時過ぎに標高468mというアイスランドで最も高地にあるモズルダルの農場でトイレ休憩を取った。この農場にはトイレの他に教会やお土産物屋さんが併設されている。
その後、バスは一路デティフォスの滝に向かった。
途中、大粒の雨が降り出してどうなることかと思ったけれど、12時過ぎに到着したときには何とか小降りになっていた。
デティフォスの滝はヨーロッパ最大と言われ、高さは44mある。例えばスコウガフォスの滝よりも高低差はないけれど、幅100mに渡ってヴァトナ氷河を水源とする水が毎秒200t流れ落ちている。
どうもこの「流れ落ちる水量」が滝の大小を決める要素らしい。
駐車場から岩がごつごつした道を歩くこと数分で、デティフォスの滝を見渡せる展望台に着いた。
ここだけはウッドデッキのように作られ、柵も設けられているけれど、ここからさらに歩くこと数分で滝の落ち口に近づくことができる場所があった。そこには全く柵も道も存在しない。
ちょうど反対側の岸に向けて風が吹いており、これだけ大量の水が流れ落ちていてもほとんど水しぶきがかかることはない。
嬉しくなって、本当にぎりぎりのところまで滝の落ち口に近づき、下をのぞき込む。
落ちる水ももちろん迫力があるけれど、その滝に流れ込んでくる川も、グレーに濁った勢いの良い水が波立ち、ちょっと怖かった。
今日のお昼ごはんはボックスランチである。
メニューは、チーズとキュウリのサンドイッチ、サーモンとレタスのサンドイッチ、チキンピラフ、ジュース、オレンジ、コーヒー、紅茶などなどだ。
お昼ごはんは、デティフォスの滝の下流にある、ハプラキルフォスという小さな滝や湧き水があるのかそこだけ濃いグリーンに見える水溜まりなど、広大な渓谷をパノラマで見ることができる高台の広場のようなところで食べた。すでに13時を回って、お腹はかなり空いている。
ただ、見晴らしが良いということは風をまともに受けるということでもある。折悪しく降り出した雨にも祟られ、とても寒いお昼ごはんになった。
次に向かったのは、ヨークルスアゥルグリュ国立公園の中心をなすアウスビルギ渓谷である。
この渓谷は馬蹄形をしており、高さ100mくらいの崖に囲まれている。その中央に玄武岩の大きな一枚岩があり、そのおかげで、一番奥にある見晴台から叫ぶと「こだま」を楽しむことができる。
また、これだけ高い崖に囲まれているために渓谷の中は風がほとんど吹かず、珍しいことに森が形成されている。アイスランドでは、各家庭の庭木以外の木を見ることはかなり珍しい。
遊歩道に沿って進むと、まずは池のような湖ようなところに到着した。水回りの崖は苔が生えており、ウッドデッキも設えられていてなかなか気持ちがよい。この池には鴨らしき鳥までいる。
そこから少し登ったところに見晴台が作られていた。作られているというよりは、崖のくぼみが見晴らし台になりそうなので、そこまで行ける道をつけてみました、という感じだ。
その見晴台に立つと、この渓谷の全体を見渡すことができる。もちろん「やっほー」と叫んでこだまも試した。
駐車場に戻る遊歩道の両脇にはブルーベリーがたくさんなっていた。
バスはさらに北上し、チョールネス半島に足を伸ばした。
途中、海沿いの展望台でフォト・ストップを取る。海の向こうに見える島(か半島か)の一部に雨が降っていることが判る。黒い雲から落ちるグレーの雨、その雨の向こうに青空が透けて見えたりするのが面白い。
雨が降る中ではあったけれど、バスの窓から北極圏にあるというグリムスエイ島を望むこともできた。ちなみに、アイスランドという国の中で北極圏にかかっているのはこのグリムスエイ島だけである。
チョールネス半島を一周し、その付け根にあるフーサヴィークの街で一休みとなった。
この街はホエールウォッチングの拠点として知られているけれど、残念ながら今回は街中の散策のみである。バスが停まった駐車場の目の前にホエールウォッチングに行く船の乗り場があったのに残念だ。それともこの荒天では船は出ないだろうか。
割と強い雨の中、小さくて可愛い教会の内部をちょこっとだけ拝見し、お土産物屋に立ち寄った。
雨が降っているときでも風が強いために傘はほとんど役に立たず、私は大抵ポンチョで歩いていた。
お店に入ったり写真を撮ろうとしているうちに、アイスランドの家にはほとんど軒がないことに気がついた。例えばお店の入り口でポンチョを脱ぎ着したり、ちょっと雨宿りをして写真を撮ったり、ということができない。
夏の間にたくさんの太陽を浴びるために、少しでも日を遮る物は作らないのだろうか。
17時過ぎ、今日の宿泊地であるミーヴァトンに向けて出発した。
湯気の出ている池など雨越しの景色を楽しんでいるうちに、ミーヴァトンのレイニフリズ・ホテルに到着した。
バスを降りると、思ったよりも虫(蚊)が少ない。ミーヴァトンは「虫(蚊)の湖」という意味だし、小さくてじゃまっけな虫が多いけれど、蚊柱が立つほどではないように思う。
お部屋で少し休憩し、虫除けスプレーの性能を試すつもりで、夕食前にちょっとだけ表に出た。
だめだ。集まってくる。
マチュピチュの蚊には威力を発揮した手製かつ特製の虫除けスプレーも、ミーヴァトンの虫には敵わないらしい。慌てて退散する。
夕食は19時からだった。メニューは以下のとおりである。
前菜 薫製マスのサラダ
メイン チキンのカレーソース ライス添え
デザート ルバーブのパイ コーヒー
レストランの入り口に小さなバーカウンターがあり、そこに生ビールのタップらしきものが見えた。ビール好きのツアーの方と一緒に、添乗員さんに飲み物を聞かれたときに「生ビール!」と元気よく伝える。
果たして生ビールをいただけたのかどうかは謎だけれど、アイスランドに来て初めて泡のあるビールを飲めたことは確かだ。
このビールは500クローナだった。
このホテルのレストランは盛りつけもとても綺麗だった。
「おぉ! アイスランドに来て初めて、みんなのお皿が同じ向きに置かれている!」と失礼なことで騒いでいたら、添乗員さんに一言「四つ星ホテルですから。」と言われてしまった。
四つ星ホテルでこんなに騒いではいけません、ということだろう。申し訳ない。
アイスランドで出されるコーヒーは概ね濃い。紅茶はお湯だけ出てきてティーバッグを選ぶケースが多いので、大抵コーヒーを選ぶようになった。
その濃いコーヒーに、デザートにたっぷり添えられた生クリームを少し溶かしたら、まろやかになって美味しかった。
食後にツアーの方とおしゃべりしていて、ホテルのお部屋の作りなど、一人参加の全員が同じわけではないことが判った。例えば、その方のお部屋はダブルルームで、私は何故かシングルベッドが縦に並んでいる角部屋だ。
この「シングルベッドが縦に並んでいる」話は非常にウケた。なかなか信じてもらえずにデジカメで撮った写真をお見せしたところ、今度は「部屋の写真を撮っている!」と大笑いされる。
ところで、角部屋でかつ2面が窓であるそのお部屋は、当然のことながら見晴らしが良い。
このホテルの裏手は教会とお墓とキャンプサイトになっていて光源も少なく、空がばっちり見える。
ここでオーロラが出ればいいのにと時々窓の外を覗いたけれど、残念ながら雲がかかっていて、オーロラどころか星さえ見ることはできなかった。
2006年1月3日写真追加
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