モンゴル旅行記3日目
2006年8月14日(月曜日)
前日に「6時頃にツーリストキャンプのスタッフがストーブの火をつけに来てくれる」と言われていた。6時過ぎに起き出していたのは、多分、寒さのせいだと思う。
この日は、日の出前に目が覚めて大正解だった。真っ平らな地平線の上に雲がたなびき、その雲を太陽がオレンジやピンクに染める綺麗な朝焼けを見ることができた。
7時30分からの予定だった朝食は、少し遅れて、食べ始めたのは8時近かった。油で揚げたナンのようなパン、バターとジャム、ビスケット、ソーセージ、お粥というメニューだ。
朝食が遅れた分、出発も遅れて、8時50分くらいにツァガンスムを目指してホスタイのツーリストキャンプを出発した。ここからは私たちツアーメンバーだけになる。
添乗員さんの「一番前の席に座りたい人!」という呼びかけに図々しく応じて手を挙げ、助手席に座る。窓が大きいし、目の前にまっすぐ続く道路や草原が続く。景色もよく見えて、楽しい。
「(一番前の席は)楽ですよ。」とも言われたけれど、しばらく未舗装道路が続き、しかも見えている道路状況から私が予測するのとバスの実際の跳ね方とが全く違い、逆に変なところの筋肉が緊張してしまった。
ホスタイはタヒという野生馬の保護地区になっている。出発してすぐ、添乗員さんに「タヒは見られますか?」と聞いたら、「もっと朝早い時間に水場などに行かないと見ることは難しい。」という返事だった。残念である。
立候補して一番前の席に座った以上寝てはなるまいと決心し、前の景色や道路沿いの景色を眺めたり、写真を撮ったりする。
昨年直したばかりだという片側1車線の道路を走っているときは別にして、ドライバーさんは舗装道路と未舗装道路が並行して走っているところでは、概ね未舗装道路を走る。不思議だ。
そのうち、舗装道路には予想外の場所に穴が空いていたり隆起していたりするので、そのたびに大きくスピードを落として走るのが非効率なんだろうと後で納得した。プロの技である。
気になってスピードメーターをのぞき込むと、「昨年直したばかり」の道路を走っているときは概ね90km/h、それ以外の舗装道路を走っているときは60〜80km/h、未舗装道路を走っているときは40〜50km/hだった。
昨日の夕食時、添乗員さんが「明日の移動時間は7〜8時間とドライバーが言っていますが、道路状況などによってもかなり違います。」と説明していた意味がよく判る。
そうやって、落ち着きなくあちこちを見たり、バッグをごそごそしてカメラを取り出したり、写真を撮ったりしていたら、ドライバーさんから声をかけられた。モンゴル語なので意味は全く判らないけれど、少なくとも怒られている感じではない。
それでも慌てて後ろを向き、ガイドさんに「何て言っているの?」と聞いたら、ガイドさんも日本語に訳すのに困っている。「前を見たり横を見たり、あちこちを見ているというのは・・・。」と言いかけると、ツアーのどなたかが「そういうのはキョロキョロしているって言うんだよ。」と助け船を出す。
すると「キョロキョロしているけれど、気分でも悪いんですかと言っています。」とのことだった。とんでもない。慌てて大きく首と手を振って否定する。
「大丈夫って何て言うんですか?」「ツゲール・ツゲール、です。」と教えてもらい、ドライバーさんに向かって「ツゲール・ツゲール」と言ったら、バス中に笑われた。
とにもかくにも、「ツゲール・ツゲール」は私が最初に覚えたモンゴル語である。
10時30分くらいに1回、12時30分くらいに1回、休憩を取った。
12時30分のときはトイレもあったけれど、この写真のとおり、かなり怪しいトイレだ。この床の木は私の体重を乗せて保ってくれるのか真剣に悩むくらいだ。途中、降り出した雨もポツポツというくらいになっていたし、すぐそばに「雨が降ったら川になるんだろうな」という感じの2mくらいの崖があってちょうどいい目隠しになっていたので、女性陣はみなそこで青空トイレとなった。
女性の場合、青空トイレならパンツスタイルよりもスカートの方が楽だと思う。私が今日スカートをはいているのはそういう理由だ。
黒い犬が番犬のように見張っていたのが何だか可笑しかった
13時過ぎに、本日の昼食場所であるツーリストキャンプに到着した。
ガイドさんに確認していたツアーの方に教えていただき、ホイルッツァガというところだと判る。でも、もちろん「地球の歩き方 モンゴル」には載っていない。
ここでの昼食はなかなか凝っていて、コールスローの前菜にスープ、メインは牛肉と野菜の炒め物と付け合わせにライスが付いた。デザートにチョコレートのお菓子も出たけれど、お腹がいっぱいになったのでおやつ代わりに持ち帰る。
随分後になって気がついたところ、こうした食事の度にテーブルに出ていた紅茶のティーバッグやインスタントコーヒーは添乗員さんが持ち込んでくださったものだ。それに気がつくまでは、「モンゴルではインスタントコーヒーはお皿に盛って出すものなんだな」と勘違いしていた。
14時20分に、再びツァガンスムを目指して出発した。
ここからは、一番前の席は他の方に譲り、昨日も座っていた席に戻る。
昼食のときに「一番後ろの席は30cmくらい跳ねるんだよ。」「今から乗馬の練習をしているよ。」というお話を聞いていたけれど、本当に頭が天井に着くのではないかと思うくらいジャンプしているのをこの目で見たときには驚いた。
確かに、それに比べたら、一番前の席は雲泥の差で楽だ。
16時くらいに、カラコルムに到着した。この街にあるエルデニゾーという遺跡には帰りに寄ることになっている。
ここは県境にもなっていて、道に遮断機のようなものが降りている。何かの手続きも必要なようで、それを待つ間にトイレ休憩だ。
朝青龍関の経営するツーリストキャンプの看板があったので、県境とその看板を記念に撮影した。
ツァガンスムのツーリストキャンプまでの所要時間を聞いたところ、添乗員さん曰く「ドライバーは1時間と言っています、ガイドは3時間と言っています、自分は4時間だと思います。」ということだった。
その後、ツアーの方々と「所要時間当てクイズ」になった。
ドライバーさんの予測を大幅に超えた18時20分頃、バスがスピードを落とした。
遊牧民のゲルにお邪魔するという。「お土産があるといいです。」というガイドさんの案内に、バス中「(お土産のつもりで持ってきた)飴とか、大きな荷物の中に入れちゃって持っていない!」と大騒ぎになった。スーツケースやバックパックなどの大きな荷物は別のワゴン車に積まれている。
7人家族のそのお宅は、フランス人監督がドキュメンタリー映画を撮ったときにモデルになったそうだ。撮影風景の写真などを見せてくださる。ちょうど雨も降り始めて、ちょっとした休憩タイムだ。
初めて飲むアイラグ(馬乳酒)は酸味が強いヨーグルトドリンクよりもう一段サラっとしている。バターのような生クリームが繊維状に固まっているような、そんな乳製品もご馳走になる。スーテーツァイという塩味のミルクティーも出していただく。
周りのゲルからも続々と人が集まってきて、歓迎してくださる。もう、どの子がこのゲルの子で、どの子がお隣のゲルの子なんだか、さっぱり判らない。
一家は、元々はウランバートルで暮らしていたけれど、お父さんが足に怪我をしてしまったのを機に遊牧の生活に入った(戻った?)そうだ。お子さん達は、お父さんの出身地であるウランバートル近郊の学校に通っているという。
ガイドさんによると、移動のしやすさが身上のゲルで、この一家のようにベッドなどの家具が置いていることは珍しいそうだ。そういえば、子どもたちがテレビで「トムとジェリー」を見ていた。
ツアーのお一人が折り紙を持っていて、大人気になっていた。彼女の周りに子ども達が集まってきて、折り紙教室が開催される。その様子を上手く写真に撮れなかったのが残念だ。
そうこうしているうちに雨も上がり、一気に青空が広がった。そうすると、今度はゲルの外で大撮影大会だ。
私も、多分姉妹なんだろう、お姉さんと抱っこされた小さな女の子の写真を撮らせてもらった。このお姉さんの女の子の目がとても強くて格好良かった。
小さい女の子が手に握っているのは、お昼に出たチョコレート菓子だ。差し上げられるような手持ちのお土産はそれくらいしかなかったのが申し訳ない。いつゲルにお邪魔してもいいように用意しておいた方がいいのだな、と学習した。
ツァガンスムのツーリストキャンプは一家のゲルから車で10分くらいのところにあった。
昨日と同じグループ分けでゲルに入って寛ぐ。
とても清潔で、ベッドが3つあり真ん中にテーブルもある。もちろんストーブは必需品だ。バスタオルとハンガー、サンダルも用意されていて至れり尽くせりだ。
夕ごはんは20時頃、その後で温泉に入れます、とアナウンスがあった。
まだ夕ごはんまで1時間以上ある。昨年もこのツーリストキャンプに来たという方に先導してもらい、女性陣ですぐ近くにある源泉までお散歩に出た。
源泉は、ツーリストキャンプから湯気が上がっているのが見えるほど近い。温泉を引いているパイプに沿って5〜10分も歩けば到着する。
柵で仕切られた中に入ると、源泉から流れ出たお湯が川になっていて、湯気が上がっている。黄色っぽい茶色っぽい色をしている。鉄の色といえばいいだろうか。
木道が造ってあり、その上を歩いて行くと、途中に建物があった。どうも銭湯のようだ。後で聞いたところによると、個室が四つあり、それぞれにバスタブが置いてあって、温泉に入れるようになっているそうだ。
源泉の真上にオボーが建てられていた。「温泉が枯れませんように」という祈りを込めて建てられたオボーだ。木道はちゃんとオボーの周りにも作られていて、みなで歩いて3周した。
ツーリストキャンプまで戻る途中、恐らくはお隣のお寺で修行をしているのだろうと思われる白人女性を見かけた。髪も短く刈っていて、僧の着物を着ており、「ちょっと来てみました」という軽いノリではなさそうだ。このとき、モンゴル仏教はどんな仏教なんだろう、と初めて思った。
夕食は20時頃だった。
ハムときゅうりとトマトの前菜と、牛肉の炒め物にライスを添えたメインディッシュ、デザートにヨーグルトが出てきた。袋入りじゃない、デザートっぽいデザートが出たのは初めてかも! とみんなして色めき立つ。このヨーグルトがとても美味しかった。
夕食を食べ終わっても、まだ、外は明るい。
思い立ったが吉日と、このツーリストキャンプの正門から写真を撮る。
右手前の比較的大きなゲルがレストランゲルだ。ここでは、お酒やおつまみなども売っていた。「次にいつ入荷があるのかは判らないから、欲しい物があったらそのときに買ってください。」と言われる。食事のときに、ビールやコーラも飲める。支払いはドルでもトゥグルグでも可能だ。
周りに山(というか丘)は見えるものの、それ以外には全く何もない。
21時近くなっても、まだ「夕方かな」という太陽だ。影が面白いように伸びてゆく。こんなに長い影なんて見たことない。
自分の影の写真を撮ろうとすると、カメラを構えているので両手を上げられず、片手だけ伸ばしているポーズが間抜けだ。こればかりは仕方がない。
今から思えばこの写真、影の長さが判るように何か比べられる物を一緒に写しておけば良かった。
21時頃から、待望の温泉となった。
露天風呂になっていて、草原を眺めながら入ることができる。
逆に、草原を行く人々からも丸見えだけれど、そこは旅行会社の担当さんから「水着を持って行ってください。水着なしで入るには相当の勇気が必要です。」という的を射た注意をもらっていたので大丈夫だ。
日が落ち、暗くなり、露天風呂を照らす灯りがつき、星が出始め、天の川もくっきり見えて、流れ星が見えるころまで、ずーっと温泉に浸かっていた。2時間くらい入りっぱなしだったろうか。
追い炊きができるわけではないので、お湯はどんどんぬるくなり、その分、長く入っていることができる。
温泉と空の色の変わりようと満点の星を満喫した。
正直に言って、乗馬はなしでもいいや、と思うくらいだった。
温泉から流れ星が見えたのが嬉しくて、上がった後も湯冷めの用心に厚着をして、星見を続けた。
やっぱり天の川は地平線から地平線にかけて流れていて、ホスタイのツーリストキャンプよりさらにくっきりと見えている気がする。標高が上がったせいだろうか。
天の川の写真を撮ろうとがんばったけれど、流石にシャッタースピードが最長16秒のカメラでは相当に明るい星しか写らなかい。それに、魚眼レンズとは言わないまでも広角レンズがないと苦しい。
この日も午前1時頃の就寝となった。
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