モンゴル旅行記8・9日目
2006年8月19日(土曜日)
モンゴル最後の朝は早かった。
6時30分から朝食と言われて、それに間に合うように起き出す。雲は多いけれど雨はすっかりあがっている。朝焼けもないし、きっといいお天気になるに違いない。
朝食の用意ができるまでの間、ツーリストキャンプの中を散歩する。
ちょうど「黎明」という感じの空に風にはためくモンゴル国旗、頭上高くに三日月というポイントを見つけ、写真を撮る。どうしても高いところにある三日月を入れたくて、私の姿勢はどんどん低くなる。
普段は使わないビューファインダーも使って、地面すれすれから撮影した。
そうこうしているうちに、みなさん起き出して来た。
前にモンゴルに来たときにもこのツーリストキャンプに泊まったという方が、遠くに見える三角形の山を指さして、あれがモンゴルの中心だと教えてくださる。
バヤン・ゴビは砂漠の飛び地だそうだけれど、あの山はその砂漠のさらに向こうにあるように見える。
7時頃になった朝食は、ジュース、パンとバターとジャム、目玉焼きとソーセージという「洋風」のメニューだった。何だか懐かしい感じがする。
朝食後に荷物を出したところ、大八車のようなものに荷物を載せて運ぶのに手間取っていたようだ。
そういえば、扉が開いているゲルの写真は撮ったけれど、「これぞゲルの扉」という細かくて華やかな模様が描かれた扉がちゃんと写ったゲルの写真を撮っていないことに気がつき、しっかりカメラに納めた。
出発したのは8時前だったと思う。
走り始めて割とすぐ、バスが給油のために停まった。
行きにもどこかでガソリンスタンドに停まったけれど、そのときには写真を撮らなかったと思い出し、みなさんがバスで大人しく待っていらっしゃる中一人で外に出て写真を撮った。
空も真っ青で、ガソリン臭いけれど、でも気持ちがいい。
そこから2時間弱、バスは爆走した。
そして、車内の私たちは爆睡した。起きている人なんてほとんどいなかったと思う。
10時くらいにトイレ休憩を取ってもらった。
といっても、もちろん青空トイレだ。隠れやすいように、土地に起伏がある辺りをドライバーさんが探してくれる。
そこで、「今朝はやっていない!」という声が上がって、本日のラジオ体操が始まった。私は参加しなかったけれど、変な姿勢で爆睡していた分、青空と草原の間で伸びをするだけでも気持ちがいい。
ウランバートルに向かう道がこんなに真っ直ぐに伸びている。
ここからさらに4時間弱、バスはウランバートルに向けて爆走した。
もちろん、車内の私たちは爆睡だ。
ウランバートルの街が近づくと道路が混み始め、空気が何となくどよんとし始める。道路沿いに看板が現れ、やがてどんどん増えてくる。
6日ぶりにウランバートルに戻ってきた。ツァガンスムから戻ると、そのわやわやがやがやした感じに何だか慣れない。同じ国にいる感じがしない。
のろのろ運転で進み、ノミンデパートの上の方にある中華料理のレストランでお昼ごはんを食べ始めたときには14時を回っていた。遅めのお昼ごはんに慣れたとはいえ、やはりお腹はぺこぺこだ。
もうメニューも覚えていないけれど、ごく普通の中華料理だった。
周りには、騎馬イベント以来の「同じ飛行機で来た別のツアーの方」のテーブルがある。全員が揃っているわけではないのは、ウランバートル近くに滞在していた方々はもう食べ終わって次の行程に移っているからだろう。
ゆっくりお昼ごはんを食べ、ここでウランバートルにいるお友達と約束しているという方がツアーから離脱された。添乗員さんもそちらについて行き、残った私たちはそのまま5階に降りてお土産探しだ。
私は、結局、ガイドさんにお勧めしてもらったCDとジャケットが気に入ったCDを2枚(両方で32ドル)購入した。
モンゴルの詳しい地図やフェルト製品、ゲルのミニチュアやカシミア製品などなどを購入されている方が多かったと思う。
ノミンデパート1階のスーパーマーケットに移動した。
ここでの人気商品は、チョコレートとアイラグだ。
ペットボトルのような緑色の容器に入ったアイラグにはかなり惹かれたし、購入した方も多かった。しかし、2リットルくらい入りそうなそのペットボトルでは、家では飲まない私には多すぎる。
チョコレートの箱にはゲルの絵が描いてあって、「職場に持って行くのはこれしかない」とほぼ全員の頭に浮かんだに違いない。中にいくつ入っているのかどこを探しても書いてなかったので余裕を見て2箱買い、その他に、いつの間にか戻ってきた添乗員さんに「アイラグを蒸溜して作ったお酒です。」と教えてもらった紙パック入りのお酒を購入した。
締めて7ドルだ。このスーパーではドルも使えた。ただし、おつりはトゥグルグである。
この「アイラグを蒸溜して作ったお酒」のことを、添乗員さんは「馬乳酒を蒸溜して作ったお酒です。」と言い、ガイドさんは「牛乳から作ったお酒を蒸溜したものです。」と説明していた。
多分、「アイラグ」は「乳製品から作ったお酒」という意味で、でも日本人にとっては「アイラグ」イコール「馬乳酒」というイメージが強い。その辺りから生まれた齟齬ではないかと思う。
いずれにしても、今回購入した「シミンアルヒ」はモンゴルの伝統的で強烈なお酒である。
次に、ツァガンスムに行く前に立ち寄った雑貨屋っぽいスーパーに向かった。
ここで、2cmくらいの岩塩の固まりが10個くらい入ったものを四つ購入した。締めて800Tだ。この岩塩、白いものとピンクのものがある。この色の違いがどこから来ているのかは謎だ。
このスーパーでは、他に、キャビアの缶詰を買う人あり、朝食によく出されていた粉末の甘いミルクコーヒーを買う人あり、奥様から頼まれたとかで馬油を買う方もいらっしゃった。
これでフリータイムは終了し、デイユースのホテルに向かった。私たちのツアー一行はフラワーホテルである。
このホテルは日系のホテルで、大浴場もある。ぜひ体験してみたかったけれど、ホテル到着が17時で、17時30分には民族音楽コンサートに行くためホテル入り口に集合では間に合いそうもない。
部屋のシャワーをひねったら熱いお湯が出たので、そのまま超特急でシャワーを浴び、着替えて、結構ぎりぎりの時間に集合することができた。
民族音楽コンサートは、18時くらいに集まった。
今度こそ、「同じ飛行機で来た」ツアーの人々が全員集合して、ほぼ貸し切り状態だったと思う。
1時間くらいのこのコンサートでは、踊りやホーミー、馬頭琴の演奏、アクロバットのような曲芸まで色々な演し物が次々と演じられた。壁に英語と(推定)モンゴル語で説明がスライドのように映し出される。
見終わって、ホーミーも馬頭琴の演奏も、やっぱり草原で聴きたかったなと思った。
コンサートの後、そのままレストランに行って夕食になった。
レストランには(多分、珍しいことに)英語で看板が出ていた。「この名前、どういう意味なんだろう?」と騒いでいたら、添乗員さんが「遊牧民という意味です。」と教えてくれたことは覚えているから、多分、店名は「Modern Momads」だったと思う。
メニューは、グリーンサラダ、スープ(ポタージュのような感じ)、お肉の煮込み(牛だったかラムだったかすら覚えていない・・・)に付け合わせは紫キャベツの酢漬けとジャガイモとにんじん、何かのパイ(これも、生クリームたっぷりの見た目に反して、酸味のあるフィリングで美味しかったことは覚えている。しかし、それしか覚えていない)だった。
お料理は量もたっぷりで美味しかったけれど、いかんせん、私たちのテーブルは疲労度が高く空気がどんよりしている。
他のツアーの方々が「乾杯!」と賑やかだったり、集合写真を撮ったりして華やかな雰囲気なのとは随分と落差がある。
「この差は何なんだろうね。」「年齢差じゃないよね。」「ウランバートルからの移動距離の差か?」「ムードメーカーのお二人が離脱しているからだよ。」と様々に分析がなされたけれど、深く頷かされたのは「我々のツアーは、一昨日ツァガンスムで乾杯したときに終わったんですよ。」という意見だった。
そんな訳で、黙々と食べていた私たちのテーブルは食べ終わるのも早かった。写真の撮影日時をチェックしたら、最初のグリーンサラダとデザートのパイの間が30分しかあいていない。相当のスピードで食べたことになる。
だから、添乗員さんが「お店からのプレゼントで、羊の骨の駒4つを投げて全部表だった方にドリンク一杯差し上げます。」と現れたときには、食べ終わっている人があらかただったようにも思う。
12人がチャレンジして成功したのは最初に投げた女の子1人だけだった。素晴らしい!
旅行社から送られてくるアンケートとは別に、ガイドさんに特化したアンケートが配られ、夕食時に回収された。
今回お世話になったガイドさんも、ガイド業をやっているのは夏の間だけで、冬に故郷に戻ってそちらの仕事が軌道に乗れば来年はガイドはやらないかもしれないと言う。その辺のこともあって、「いいガイド」さんをきちんと評価して継続してやってもらおうという意図があるという話だった。
20時30分くらいにホテルに戻り、私はそのままホテル内にあったカシミア製品のショップ「GOBI CORPORATION」に行ってみた。
セーターやショール、マフラーなどを見る。工場から直接仕入れているようでお買い得、もらったチラシに名前と住所(だったと思う)を書くと更に5%引きになる。その代わり返品はできませんと店内に日本語の案内が貼ってあったように記憶している。
同じツアーの方も何人かいらっしゃって、お聞きしたところでは「同じ系列のショップが最初に泊まったコンチネンタル・ホテルにもあり、そちらの方が品揃えがお洒落だった」とのことだった。
確かに、色は豊富だけれどオーソドックスなデザインのものが多かったかもしれない。
職場に着て行くには却って好都合だと思い、ここでダークグレーの少し編み込みの入ったセーターと明るめのグレーのマフラーを購入した。両方で79ドルだった。
荷物を整理して、22時にロビーに集合しなくてはならない。
慌てて部屋に戻り、荷造りを開始しようとしたら、窓の外がオレンジに染まっていることに気がついた。窓を開けてみると、燃えるような夕焼けが広がっている。
もちろんカメラを持ち出してきて、しばし、窓から乗り出すようにして写真を撮る。
何だか得した気分だ。
私の「得した気分」は気分として、それで荷造りが進むわけではない。結局、時間ぎりぎりまでかかって何とかキャリーケースのファスナーを閉め、ロビーに行くことができた。
添乗員さんは手続きその他のために先に空港に向かっている。そのためか、ブレーキが利かない荷物車のブレーキがさらに利かなくなったのか、空港までは人と荷物を1台のバスに無理矢理詰め込んで行った。
なかなか空港のカウンターが開かず、荷物の預け入れまでしばし待つ。チェックインは先に来ていた添乗員さんが済ませてくれていたようだ。
空港までのバスの中で航空券を集めたのにどうしてチェックインができるんだ? と思って聞いたら「私たちはできるんです。」とのお答えだった。
JALはツアーであっても個人でチェックインをさせていたと思ったけれど、チャーター便の場合はまた別の仕組みなんだろう。
ガイドさんに別れを告げてセキュリティチェックに向かう。
これが2列あるのになかなか進まない。前の方にいた別のツアーの添乗員さんから、「封の開いた液体は機内持ち込みできないのでここで没収されます。」という注意が飛ぶ。来るときにはロンドンの事件は影響なかったけれど、ここに来てセキュリティが厳しくなったらしい。
勿体ないので封を開けてしまったミネラルウォーターはその場で飲み切る。このペットボトルは、太陽や森の形が浮き出る可愛いデザインで持って帰りたかったけれど、空っぽのペットボトルを持って帰りたいと伝えるのも面倒そうなので諦め、封を開けていないペットボトルをセキュリティチェックのお姉さんに渡してX線を通してもらう。
こうして私は難なく通り抜けたけれど、他の方々は何だか大変だったらしい。私のすぐ後ろに並んでいた方は、ペットボトルの封を開けていなかったのにカバンに入れたままX線の機械に通したせいか没収されたそうだし、もう一方の列では封が開いているいないに関わらず、液体はお酒も含めて全て問答無用で没収されてしまったそうだ。
同じツアーの方も何人か、昼間スーパーで買ったアイラグを没収されてしまった、こんなやり方はフェアじゃないと怒っていらっしゃった。
私は手荷物が重くなるのが嫌で、買ったお酒はジップロックに二重に入れてキャリーケースに入れて預けてしまったのでこちらも無事で、何だか申し訳ない感じだった。
2006年8月20日(日曜日)
ウランバートル発0時25分のJAL8872便(チャーター便)は、私が爆睡している間に離陸し、機内食サービスも終了し、5時に羽田空港に到着した。
建物の中でクーラーが効いているのに、じわっと暑い。
モノレールに乗るため、国内線ターミナルまでバスで移動する。外に出たら、まるでサウナにいるような暑さと湿度にグッタリした。
モンゴルが懐かしい。
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