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2008.09.10

箱根旅行記2日目

2008年8月21日(木曜日)


 6時に目が覚めた。
 私は珍しく完全に熟睡したけれど、母は部屋が暑くて何度も起きたらしい。
 「暑くて私は何度も起きたのに、あんたは鼻まで布団を被って寝ていた。」とぼやくので、まずは汗を流しに温泉に行くことにした。朝6時から入ることができるのでちょうど良い。
 内湯は熱めだ。露天のジャグジーでもう1回足をマッサージして、汗が噴き出す前にさっと上がった。


 富士山を見るならやはり朝のうちが勝負だろうと、ホテルの4階のさらに上にある展望室に行った。
 椅子が4脚置いてあるだけの、殺風景といえば殺風景な場所だ。大きなガラス窓から芦ノ湖が一望で、その景色だけで満腹である。
 箱根町方面と富士山方面の2ヶ所、窓を開けることができるのも嬉しい。


芦ノ湖と富士山


 そして!
 待望の富士山を見ることができた。
 すでに8月初旬に初冠雪は迎えていたものの、ほとんど白いところのない、ブルーグレーの富士山である。手前の濃い緑や湖の暗めの青い色と対照的に、水色の空にぽっかりと遠く霞んでいる。
 本当にどうして富士山は写真に撮ると小さくなってしまうのだろう。
 展望室に電話が置かれていたので、部屋に電話をして母を呼んだ。


富士山のアップ どうしてこんなにはっきりと見えている富士山を昨日は全く拝めなかったのか、訳が判らない。
 そしてまた、朝起きたときに「上の階の人は一体何をしているのだろう」と思った地響きのような、太鼓のような音が今も続いている。「雷かな」という話もしたけれど、それにしては断続的に聞こえているし、雷雲のような雲も見えないし、青空である。


 4階からは階段でしか上がってこられない展望室に、小さめとはいえキャリーケースを抱えた(推定)オーストラリア人の男の人が上がってきた。こんなに早い時間にチェックアウトするのかしら、チェックアウト前に展望室に来たのかなと思っていたら、おもむろにそのキャリーケースを開け、一眼レフカメラとレンズ、三脚を取り出した。
 機材は万全なのに、わざわざ汚れたガラス越しに富士山の写真を撮っているのが謎だ。確かにアングルとしてはそちらの方がいいし、フィルタをしていたから反射光はシャットアウトできそうではある。しかし、はめ殺しの窓ガラスはそれなりに汚れている。
 見かねた母が開けた窓を教えてあげると、喜んでそちらから撮っていた。謎だった。


 30分くらい、ほぼ独占状態で富士山と芦ノ湖を堪能し、満足したところで朝食を食べに行った。
 食事のクーポンが、夕食は二人で1枚、朝食は一人に1枚ずつあるのは気が利いていると思う。


朝食 7時30分頃に行ったら、テーブルにはかなり余裕があった。和食を選ぶ人が多いのか、時間がずれているのか、どちらだろう。
 二人とも洋食を選び、優雅にテラスで朝食をいただく。
 箱根で、富士山の見えるホテルのテラスで朝食をいただいていると、パンくずをついばみに来ている雀すら可愛く見えてくるのが不思議である。
 朝食はビュッフェスタイルではなく、メニューから選ぶようになっている。
 私は、こんな感じのメニューになった。


 ヨーグルトドリンク(他にオレンジジュースなどが選べる)
 プレーンオムレツとソーセージ(他に、スクランブルエッグ・ハムなどが選べる)
 サラダ
 クロワッサンとロールパン
 コーヒー(紅茶も選べる)


 この朝食で出された柚子のジャムが美味しかった。ホテルのギフトショップで聞いてみたら、販売はしていませんというお話で残念だった。
 その代わり、職場へのお土産を購入する。山のホテルのクッキーなら一目で箱根に行ったと判るし、この後「買わなくっちゃ」と気にしないで済むし、駅まで持って行ってもらえるので楽ちんである。


彼岸花 朝食を食べ終えて、そのままお庭の散歩に出た。
 今はもちろんつつじは咲いていないし、薔薇園のバラも完全に散りかけである。お花を見るには8月はあまりいい季節とは言えない。
 そんな中、彼岸花が綺麗に咲いていた。
 私のイメージでは彼岸花は毒々しい赤だけれど、このお花は柔らかな山吹色である。
 歩いていると、ホテルの人が大切に丹精して庭を整えている感じが伝わってくる。
 辺りにもお散歩している人や、富士山をバックに写真を撮っている人がたくさんいた。


 母がギフトショップでストールを買っている間、私はベルデスクにホテルから箱根園までの足について聞きに行った。
 9時30分と10時10分に高速バスが目の前のバス停に来るので、それに乗って行けばいいと言う。
 「他の手段はないんですか?」と聞くと、元箱根まで行けばバスがあると言う。


 何だか歯切れが悪いなと思っていたところ、帰ってきてから友人に言われて納得した。
 山のホテルは小田急系列、箱根園は西武系列で、だから箱根園までのバスなども西武バスが運行しており、山のホテルには停まらない。
 なるほど、歯切れが悪い訳である。
 彼女は逆に西武系列のホテルに泊まり、小田急系列の海賊船に乗りたいと尋ねたところ、なかなか教えてもらえなかった経験があるらしい。


 8時前に部屋に戻り、チェックアウトまでかなりのんびりと過ごした。
 チェックアウトのときに、箱根湯本駅までのキャリーサービスをお願いした。


 9時30分に来たバスは新宿行きの高速バスで、乗客は私たち二人だけだった。
 ベテランのドライバーさんがハンドルを握り、同乗している若手の後輩に運転のコツを伝授しているようである。山道を車体の大きなバスで走るのはやはりかなりのテクニックが必要なのだろう。


 10分くらいで箱根園のバス停に到着し、すぐそばにある駒ヶ岳ロープウエイの乗り場から9時50分のロープウエイに乗ることができた。
 ここは箱根フリーパスは使えないので、クーポンを利用して割引チケット(往復840円)を購入する。


ロープウエイより ロープウエイに乗る前に写真撮影があり、その順番待ちの間に「駒ヶ岳山頂は16度です。」というアナウンスがあり、そこで待っている一同がどよめいた。
 16度? 今は真夏の8月である。
 そして、やはり夏のなせる技なのか、7時くらいにはくっきりと姿を見せていた富士山が、ロープウエイから眺めたときにはすでに雲に覆われかかっていた。
 一体、この雲はどこから湧いてきたのだろうという感じである。
 そしてまた、どうしてこう富士山は写真に撮ると小さくなってしまうのだろう。


一番よく見えた富士山富士山型の雲に隠れた富士山


 ロープウエイが山頂駅に着く頃には、さらに富士山は雲に覆われていた。
 微かに雲が切れることはあるものの、徐々に富士山とそっくり同じ形に育った雲に覆われ、私たちが山頂にいた1時間弱の間に完全に隠れてしまった。


箱根元宮へ白いお花
箱根元宮ピンクのお花


 富士山を存分に拝めなかったのは残念だったけれど、駒ヶ岳はなかなか楽しい場所だ。
 高山植物がまだちらほら咲いている一方で、ススキも少しずつ開いている。
 ロープウエイの駅から思いの外近くに箱根元宮がある。
 箱根元宮は、箱根で2番目に高いこの駒ヶ岳山頂に造られ、箱根で1番高い山であるお隣の神山をご神体として仰ぎ拝んでいる。
 残念ながら閉まっていてお賽銭は上げられなかったので、お参りして手だけ合わせて来た。


芦ノ湖


 のんびり歩いて、神山も拝み、芦ノ湖を見下ろす。
 ロープウエイで芦ノ湖から600m上がっても、湖の全景を納めることはできない。
 こうやって上から眺めると、芦ノ湖が本当に「大きなみずたまり」であることが判る。


 11時前に芦の湖畔に降り、西武バスで元箱根まで戻った。
 箱根は神奈川県だからsuicaもpasmoも使えるのに、うっかりバスのチケット(330円)を買ってしまった自分が何だか可笑しい。よっぽど遠くまで来たつもりになっていたようだ。
 バスまで少し時間があったのと、母がお昼ごはんの前に成川美術館を見たいと言うので、お腹をなだめるため、ニューサマーオレンジ味のところてんを二人で一つおやつに食べた。
 他の黒蜜味などのところてんが300円だったところ、ニューサマーオレンジ味だけキャンペーンで200円だったからという理由で選んだら、これが意外と美味しかった。


成川美術館より 成川美術館は、箱根湖畔にある日本画のの美術館である。
 私の中では、美術館そのものよりも、この「美術館からの眺め」の良さのイメージが強い。ただし、ちょうど鳥居の上辺りに見えるはずの富士山は、すっぽりと白く厚い雲に覆われてしまっている。
 入館料は、箱根クーポンの割引を利用して1人1100円である。


 このときは、第1展示室で「鬼才・米倉健史のキルトアート展」、第2展示室で「夭逝・石井康治のガラスアート展」、第3と第4展示室で「花物語−極上の名画たち−」が開催されていた。
 母は、自ら「見たい」と言った割にすいすいと驚くほどの速さで歩いて行ってしまう。日本画にほぼ興味のない私ですら、もうちょっと時間をかけるというほどの速さである。
 どうも母は、「このデザインは木彫りに応用できるか」という観点でしか絵を見ていないらしい。それでは通り過ぎるのも早い筈である。
 成川美術館の滞在時間は僅か40分程度だった。


 そして、成川美術館そばにある、深生そばに入った。12時過ぎのランチタイム真っ盛りだったけれど、すんなり席に通される。
 二人で天ざるを頼もうとしたら、オーダーを取りに来たおばさまに「1時間弱お待ちいただくことになります。」と言われた。流石にそんなには待てない。二人ともオーダーを鴨せいろ(1260円)に変更する。
 ちょっと悔しかったので周りを何となく気にして見ていたら、天ぷらもの(天丼とか天ざるとか)を頼んでいる人は全くいない。これだけオーダーがないのにどうして1時間もかかるのか謎である。
 謎といえば、鴨せいろを頼んで、そば湯が出てきたのも謎だった。小さめの丼に入ったおつゆは鴨せいろだからかなり脂が浮いている。「ここに注いで飲む?」としばし悩んだ末、結局飲まなかった。
 お作法としてはどうすれば良かったのだろう。お店の人に聞いてみれば良かったと思う。


 この辺りには寄せ木細工のお店も並んでいて、母が「やっぱり寄せ木細工を見たい。」と言う。時間も早いことだし、バスで「旧街道石畳」まで出てそこから畑宿まで歩くことにした。
 このコースなら、ずっと下り坂だから楽な筈である。
 そう考えたところで、すでに昨日の教訓を忘れている。莫迦である。


 セブンイレブンで切手を買って昨日書いた絵はがきに貼り、ポストに投函する。
 そんなことをしていたらバスの時間となり、「旧街道石畳」まで行った。バスならすぐ、石畳の上り坂をずっと歩くとするとかなりハードそうな道のりである。


旧街道石畳(復刻版)旧街道石畳 バスを降りて、そのまま左手に伸びている下り坂を行けば畑宿方面、道路を渡って反対側の上り坂を行けば元箱根方面である。
 畑宿方面に続く道は地震などで崩れてしまった石畳の道を復旧させた道、元箱根に向かう道は江戸時代のままの石畳の道だ。
 この石畳の道をヒールのサンダルで、しかもキャリーケースを転がして歩いて行った女の子3人組がいた。彼女たちは無事に元箱根まで歩くことができただろうか。


遊歩道 「江戸時代のまま」という石畳を数m体感して、13時20分頃から畑宿方面に向けて歩き始めた。
 バスの運転手さんに「石畳の道は甘酒茶屋くらいまでしか続いていないよ。」と言われていた。その甘酒茶屋までは歩いて10分くらいだ。
 甘酒茶屋から先は、土の道になったり、石畳の道に戻ったり、七曲がりの辺りではその急カーブをショートカットするコンクリートの階段をひたすら下ったり、バラエティに富んでいるといえば富んでいる道筋である。
 他に歩いている人もほとんどおらず、適当なペースで、「つま先が痛い」と嘆きつつ歩く。
 何しろ、「猿すべり坂」などという名前が付くような道の連続である。


 木立の中が涼しいとはいえ真夏のこんな季節に、こんなところを歩くのは私たちくらいだよと思っていたら、反対側から歩いてきた年配の女性4人組の方に「甘酒茶屋まではどれくらいですか。」と尋ねられた。
 時計を見ていたわけではないけれど、恐らく下り坂で15〜20分くらいだったろう。
 そう答えると、汗だくの顔をタオルで拭きつつ「そうですか。」とにっこりする。


旧街道を振り返る こちらから聞く前に教えてくれたところでは、箱根湯本からずっと歩いて上って来たそうだ。
 箱根湯本から??? この道を全て歩きで???
 何となく箱根湯本から歩き始め、途中で今日の宿である旅館があったのでそこで荷物を預け、またそのまま歩いて上って来たとおっしゃる。
 最初は荷物も持っていたんですか???
 「元箱根まで行ったら、帰りはバスだわ。」と笑顔で去って行った。もの凄い健脚と体力である。


 健脚でない母と私も、ずっと下り坂だったこともあり、当初の見込みどおり1時間強で畑宿の一里塚に到着した。
 涼しい木立の山道の下りとはいえ、もう汗だくである。
 目の前にあった金指寄せ木工芸館が目指していた「畑宿寄木会館」だと信じて飛び込んだ。


お盆 間違いだけれど、結果としてはこれが正解だったと思う。
 店内は広々として、寄せ木細工で作られた五重の塔や、富嶽三十六景などの絵が飾られている。
 箪笥などの大きなものから、コースターなどの手軽なものまで揃っている。しかも、張ったものではなく、無垢のものがメインであるところがいい。
 母はお盆を、私はお箸とバレッタを購入した。


 近くにある金指ギャラリー&ショップに立ち寄ったところ、ここのご主人が箱根駅伝の優勝カップ(もちろん無垢の寄せ木細工で作られている)を製作していらっしゃり、その写真などが飾られていた。
 木彫りをやっている母は完成した作品よりも材料の木材の方が気になるらしく、隣の倉庫を覗いて、羨ましそうにそこに積まれた木を見ている。
 やはり色目の異なる木を確保するのは難しいそうで、そこのご主人は「なくなったらあるものでやるだけです。でもまだストックがだいぶありますから。」とおっしゃっていた。


 かなりゆっくりとお買い物をして、15時23分のバスに乗って箱根湯本まで戻った。
 バスを待っているときに塔婆を持って歩いている方々を見かけた。この辺りでは8月20日前後がお盆であるようだ。


 箱根湯本に着いたら、荷物を引き取る前にお土産を買わねばならない。
 まず向かったのが、ちもとである。就職したばかりの頃に職場旅行で箱根に来て、そのときに教えて貰ったここの湯もちの美味しさは忘れられない。求肥のような白玉(四角く切られている)に、羊羹が入り、柚子の香りがする。竹の皮に包まれているところもゆかしい。
 10年振りくらいでまた食べられると思うと嬉しい。
 平日だったためか遅い時間でも売り切れていなかったのが幸いである。


 そして、ここは山の中と思いつつ、ひもの山安で鰺の干物やみりん干しを購入する。
 箱根に来る直前に教えてもらった鈴廣 かまぼこの里に行くには時間的に厳しそうだったので、ここで「おだまき」も購入する。
 荷物が重くなって来たので、お土産はこれで打ち止めにした。


 しかし、最後の一仕事が残っている。ソフトクリームを食べると決めている。
 昨日、箱根焙煎珈琲の珈琲牛乳ソフトと、杉養蜂園のはちみつソフトクリームをチェックしていた。今日は、残念ながら箱根焙煎珈琲は閉まっている。
 母と二人で蜂蜜ソフトクリームをいただく。しつこくない濃厚な甘さでとても美味だった。


 16時47分発のロマンスカーに乗り、夕ごはんは新宿で買うか食べることにして、帰路についた。
 天気予報ではこの二日目は午後からかなり雨が降るということだったけれど、結果的にお天気に恵まれ、自宅に帰るまで雨に降られることもなく、箱根のお山の上で太鼓のような雷の音を聞いただけで済んだ。
 箱根はなかなか楽しかった。
 次は紫陽花の季節や紅葉の季節に行ってみたい。


 箱根旅行記1日目はこちら。

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