「ピラミッド 隠された回廊の謎」を見る
2009年7月5日(日曜日)21時からNHK総合で放映された、NHKスペシャル エジプト発掘 第1集「ピラミッド 隠された回廊の謎」を見た。
「エジプト発掘」は、エジプトのピラミッドの時代、ツタンカーメンの時代、クレオパトラの時代の3つの時代を取り上げ、近年になって新たに発掘されたり提唱されたりした事実や仮説を検証するという番組のようである。
今日、その第1集として、ピラミッドが取り上げられた。
取り上げられたピラミッドは、ギザにあるクフ王のピラミッドである。
クフ王のピラミッドは、平均2.5tの石を300万個積み上げて造られているという。
文献によると、このピラミッドの建造には20年が費やされたとされており(判っており、と書くのはちょっと早計な気がする)、近年になって発掘された「労働者の街」の規模その他から、ピラミッド建造に従事したのは4000人だということが推定されるのだという。
番組では「わずかこれだけの人数で」と言っていたけれど、20年で300万個の石を積むには、単純計算で2分に1個の石を積まなければならないというのだから、4000人が「わずか」になってしまうのも頷ける。
さて、どのような方法でこんな神懸かりな事業ができるのだろう、というのが番組で取り上げられた第一の謎である。
ピラミッドに向かって直線の通路が造られたという説や(こちらが主流と聞いて驚いた)、ピラミッドの周りに螺旋状の通路が造られたという説(私はこちらが主流だと思っていた)などが、次々と否定される。
全長1.6kmにもなる通路は、その材料やそもそもの長さからして非現実的であるとか、ピラミッドから500mのところにある石切り場を考えるといかにも動線がおかしいとか、狭い螺旋状の通路では事故が頻発した筈であるとか、螺旋状の足場があったら稜線をまっすぐに作ることは難しい、などである。
何だか否定のための否定のように聞こえてしまうところが、新説を唱える人の宿命だろう。
今回、番組で取り上げた新説は、フランス人建築家である、ジャン・ピエール・ウーダン氏が唱えたものである。
この人は、50代後半で、10年前からピラミッドの建造方法の謎にチャレンジしているのだという。
シュリーマンじゃないけれど、建築家としてひとかどの名声と財産を為した方なんだろうな、などと思ってしまう。
それはともかく、このウーダン氏が唱えたのは、ピラミッドの内部に通路を作り、その通路を利用して建造したという説であった。
そうすれば、天候などにさゆうされることなく、ピラミッド建造に専念できたはずであるということである。
螺旋状にその通路がある筈だということなのだけれど、そんなに大きい石を運べるくらいの通路があるならこれまでに発見されているんじゃないかなと思ったら、20年以上前の調査で、確かにピラミッドに螺旋状の空洞があることが判っているらしい。
あとは、ピラミッドに観光で入場したとき、冬に行ってもものすごく暑かったのだけれど、あの暑さの中でそんな大変な肉体労働が可能だろうか、という疑問は浮かんだ。
それにしても、ピラミッドの調査というのはとても難しいということが判る。
ピラミッドの外壁に近い場所にそんなに大きな空間があれば、例えば赤外線とかレントゲンとかそういうものを使えばすぐに判りそうなものなのに、そういうわけには行かないらしい。
しかも、今回、ピラミッドの稜線の一部に5m四方の平らな空間があることくらい(これはピラミッドの中ではなくて外の話である)すぐに判りそうなものなのに、今回、1時間半もかけて外壁を登り(おまけに、建築家であるウーダン氏にその許可はおりないようで、ウーダン氏はエジプト考古学者にその調査を依頼している)、目視で確認し、どこにでもありそうなデジカメで写真を撮っているのである。
それって、原始的にすぎやしないか、というのが私のもう一つの感想だった。
「ピラミッドは何のために作られたのか」とか「そもそもピラミッドとは何なのか」という謎は一切追いかけないという潔い方針のこの番組のもう一つの謎は、クフ王のピラミッド内部にある王の間の真上には、一つの重さが60t(だったと思う)もあるような岩で形作られた「重力軽減の間」がある。その60tもの重さの岩を、高さ60mの位置までどうやって引っ張り上げたのか、ということである。
ちなみに、内部通路説では、通路の傾きと石の重さから600人(やっぱりこの辺りは記憶違いかも。6という数字が出過ぎている)で引っ張り上げる必要があり、そうすると、5m四方の平らな空間くらいでは600人が立ち往生してしまうので使えない、ということになるのだそうだ。
そこでウーダン氏が考えだしたのは、王の間に伸びる大回廊に錘の岩を台車で落とし、その「落ちる力」を使って反対側に結びつけた60tの岩を引っ張ることで、あと150人強の人力があれば引っ張り上げられる、という方法である。
滑車の原理を使うといえば正しい説明になるだろうか。
その傍証として、大回廊の両脇の一番下の岩に一直線の傷がついていることや、7cmずつせり出すように積まれた岩の下から3番目のところだけが角が崩れてしまっている点、下の方に潤滑油によるものではないかと思われる黒いシミがついている点などが挙げられていた。
昨年1月にクフ王のピラミッドにも入ったのに、大回廊を通るときにはその上の方を見上げ、空間が大きくなって空気がよくなったことと、屈まなくてよくなったことだけを喜んでいたのが痛恨の極みである。足下を注視していれば私にも同じ発想ができたかもしれないのに。(というのは冗談である。)
そうしたら、大回廊をあんなに精緻に作る必要はなかったんじゃないかとか、色々と疑問がないわけじゃないのだけれど、「どうやって」という疑問に答える仮説であることだけは間違いない。
何だかんだ文句を言いつつも、楽しく見てしまった。
次回のツタンカーメンも楽しみである。
2009年7月5日(日曜日)21時から
NHK総合 NHKスペシャル「エジプト発掘 第1集ピラミッド 隠された回廊の謎」
NHKの公式Webサイト内、NHKスペシャル「エジプト発掘」のページはこちら。
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