2010年9月23日(木曜日)
6時に目覚まし時計の音で起きた。旅行に出ると早寝早起きになる私にしては、目覚ましが鳴るまで爆睡というのはかなり珍しい。
バゲージダウンは10時だ。グラスボート(7JD)のオプションに申し込んだので、その出発の9時前には荷造りが出来ている必要がある。エジプトに出国する船の乗り降りは自分でキャリーケースを運ぶ必要があり、大量に買ったバスソルトが恨めしい。
7時前に朝食を食べに行った。
どうしても部屋の冷房が切れずに寒いので、バルコニーに出て暖まる。朝のこの時間なら、結構、快適である。
グラスボートに申し込んだのは10人くらいだった。昨日、夕食後に添乗員さん、ガイドさん、母娘3人組で飲みに繰り出したと言いつつ、5人とも眠そうにも見えない。流石、元気である。
バスでアカバ要塞と考古学博物館の近くにある乗り場に向かった。
ガイドさんは乗り場まで付いて来たのに、乗り込もうとしない。添乗員さん曰く「船が怖くて乗れないんですって。」ということだ。確かに揺れそうだし、あまり頑丈そうではない船である。
船の底はガラス張りになっていて、海の中が結構よく見える。
10人でこのガラスの回りを囲み、覗き込む。
季節が良くなかったのか、時間が良くなかったのか、はたまたグラスボートの性能なのか、それほど遠くまで見通せるわけではないし、「おぉ!」というような色鮮やかな大きなお魚がいたり、「紅海」の名前の元となったという赤い珊瑚が見えるということもない。
一番「おぉ!」と思ったのは、沈んだ戦車の上を通ったときだ。
参加者の中に船が少し苦手だという方がいらした。この小さい船の中でずっと下を向いているのは辛いだろうと思う。途中から完全に遊覧船に乗った感じで回りの景色を楽しんでいらっしゃった。
船長のサービスだったのか、グラスボートはかなり沖の方まで出てくれた。流石にそこまで水深が深くなると青い波の動きが見えるだけだ。全員で、近くなった対岸のイスラエルやエジプトの街の様子を眺める。
やっぱり、どう見てもヨルダン側よりイスラエル側の方が栄えている感じがする。
紅海にはタンカーが何隻も停泊していた。
グラスボートの船長さんはそのうちの一隻に近づき、このタンカーはガス欠で置き去りにされてしまい、ずっとここに停泊しているのだと言う。
そうなんだー、とみんなしてタンカーを見上げていると、ふいっとドアが開いて、痩せた男の人が顔を出した。「うわっ。」「きゃっ。」とグラスボートは悲鳴の嵐である。
無人船だと聞いていたのにドアが開いて人が顔を覗かせたら、それは驚く。
この一幕が船長さんの茶目っ気だったのかどうか、未だに謎である。
結構楽しく1時間15分くらいのグラスボートの遊覧を満喫した。
ガイドさんに「博物館に寄る?」と言われてちょっと心が動いたけれど、あまり時間もなかったので次の機会にと考えることにして、そのまま再びバスでホテルに戻った。
ホテルに残った方々は、お部屋でゆっくりしたり、再びスークに出かけてお買い物をしたりされたそうだ。そんなお話を伺っているときに、お部屋の冷房を切るには主電源になっているカードキーを外せばいいと聞き、気がつかなかった自分の阿呆さ加減に頭を抱えた。
今日の昼食は船内で頂く。ホテルのロビーでランチボックスを受け取り、11時に港に向けて出発した。
20分くらいバスで走って港に到着した。
もしかして撮影禁止かしらと思いつつ、構内に入る許可を得るためにしばらくバスが駐まっていたので、港の写真を撮った。
あまり人の姿もなく、「国際港」「ここから出国」というイメージではない。
荷物は船の側まで運んでもらえるという話でバスに置いたまま、出国審査のためにターミナルビルに入った。出国審査は空港での審査とほとんど変わらず、窓口にパスポートを出してスタンプをもらって終了だ。
たまたま両替所が開いていたので、みんなでエジプトポンドに両替をする。ヨルダンディナールからの両替も出来るという。絶対にまたヨルダンに来ると決めているのでヨルダンディナールは残すことにし、ドルから両替してもらった。
100ドルが500エジプシャンポンドになった。小銭をちょうだいと頼んだら「ない。」とキッパリした答えだった。前回エジプトに来たときに余ったエジプシャンポンドを持ってくれば良かったと思う。
少し自由行動にしましょうと言われても、見るべきところがあるわけではない。
スタンドカフェがあり、1軒だけあったお店では電化製品やおもちゃなどが売られていて観光客向けのものは売られていない。
お手洗いに行こうとした方は、「真っ暗で電気のスイッチが見つからないわ。」と戻っていらっしゃった。
ここにいても仕方がないと思ったのか、それとも乗船開始のアナウンスがあったのか、12時前にバスに戻って船に向かった。
バスからキャリーケースを降ろしてもらい、それぞれ引きずってカーフェリーの車を駐めるのだろうところにまとめて荷物を置く。「きっとびっくりされますよ。」と昨日、添乗員さんに言われていた通り、確かにびっくりである。
別に荷物置き場があるわけではなく、その辺の道に放置するようなものである。鍵をしっかりかけてくださいと注意される訳だと納得した。
狭い階段の上がり口でガイドさんとはお別れである。
みんなで口々にお礼を言ったり握手してもらったりして別れを惜しみ、バスを降りるときにガイドさんにもらったミシン目入りの紙を渡して半分にちぎってもらう。添乗員さんに「これだけは失くさないでください。」と強く注意される。
客席の入口でエジプトの入国カードをもらい、ラウンジのようになっている席に陣取って早速記入する。
添乗員さんによると、いつもはエジプト人で大混雑しているけれど、今日はかなり空いている上、観光客を船尾、エジプト人を船の前方に集めているらしい。
いつもはここから出入国の手続きのため船内の窓口に並ぶらしい。今回はまとめて続きしてもらえるという。ヨルダンの出国カードとパスポートが集められ、添乗員さんの手によってどこかに運ばれて行った。
個人旅行だったらめちゃくちゃ不安だろうなと思う。
このツアーを選んだ理由の一つが「船での国境越え」なのだ。楽しみである。
それにしても、船内は寒い。
ちょうど私が座った席の後ろにエアコンがあり、かなり強力な冷風が吹き付けてくる。「寒いかも知れません。」と言われて持ち込んでいたフリースを着込む。寒いかもしれませんどころではない寒さだ。
お腹が空いているせいかも知れないと、ホテルでもらったランチボックスを開ける。サンドイッチが二つ、お水とオレンジジュース、トマトとキュウリが丸のまま入っていいて驚く。パウンドケーキとバナナがついてかなり立派なランチボックスだ。
そして、このサンドイッチが意外なことにかなり美味しかった。
ランチボックスの中味もおおかた食べ終わった13時10分に船は出航した。
汽笛が鳴るわけでもなく、大きく揺れるわけでもなく、ラウンジからは外が見えず、とても静かな出発だったので気がつかず、外を眺めていた方が「動き出したわよ」と声を掛けてくださって出航を知った。
外が眺められるわけでもないのでヒマだし、エアコンの風は寒いし、船内を探検する。
とは言っても、探検できるほどの広さはない。そもそも、甲板に出られるようなドアは見当たらないし、窓はあってもかなり曇っているので外は眺められない。
お手洗いに行った方から「なかなか凄い。」という話を聞いてパスすることにし、エジプト人が多く乗っているという客席を眺め、ヨルダンの港にあったのと同じようなお店(出稼ぎに出ている人がお土産に買いそうなものを集めたお店)を眺めて、10分くらいで探検は終了である。
船内の売店で2Lのお水とクッキー(合わせて2JD)、温かいコーヒー(1JD)を買って席に戻った。
15時くらいにはエジプトのヌエバに到着していたと思う。しかし、何故かそこからの動きが全くない。船は停泊しているのに人が動き出す気配がない。
「どうしたんだろうね。」「いつ下りられるんだろうね。」「ガイドブックに相当に乗下船の手際が悪いって書いてあったよ。」などとしゃべっているうちに、バタバタと人の動きがあって、添乗員さんに「下りますよ!」と声をかけられた。
多分、45分くらいは待機したと思う。
ついに、エジプトに上陸である。
キャリーケースを転がして船の外に出て、そこに来ていたバスに乗り込んだ。
バスが少し走って停まったところは、トタンの屋根だけで壁がない。ここで荷物をX線に通しますと言われ、再びがんばって自力でキャリーケースを転がして列に並ぶ。
もの凄い大荷物を大きな荷車に乗せた一家がいて、前に入られそうになったのをガイドさんが助けてくれる。弱気になっていると、いつまで立ってもX線検査を通り抜けられない。
ヨルダン出国のときにはX線検査なんてなかったなと思う。
X線検査を抜けたところに再びバスが待っていてくれた。
バスの中に軍人とおぼしき人が乗り込んできて、パスポートをチェックする。別に悪いことはしていないけれど、何だか緊張してしまう。
絶対に失くすなと言われていた半券の出番はついにないまま、私たちは無事にエジプトに入国した。
エジプト入国税(15USD)をどこかで払った筈なのに、どこで払ったのか覚えていない。確か直接自分で支払ったのではなく、ガイドさんがまとめて支払ってくれて、後で集金されたように思う。
本当にツアーでよかった。間違いなく、自力ではこの出入国はできなかったと思う。
エジプトでのガイドさんはマナさんという若い男性だった。日本語は日本大使館の図書室で独学で身に付けましたと言う。そんなの嘘でしょと言いたいくらい、とんでもなく日本語が上手い。日本語検定の1級を受けるつもりです、と言っていた。
マナさんとは、この港からエジプト出国までのお付き合いである。
明日のシナイ山登山の説明がまず最初にあった。
出発は明日2時頃、気温は10度くらいになるらしい。山頂は2度くらいだと聞いてくらくらする。マナさんは「雪がないので滑らずに安全です」とこともなげに言う。暑くもなく寒くもなくベストシーズンだそうだ。
今の気温は25度くらいだそうだ。もっと暑く感じる。
シナイ山には3700段の急な階段もあるけれど使う人は滅多におらず、ラクダで途中まで上れる道を使います、こちらの道を使っても700段くらいの階段を最後に上ります、と言う。
何だか戦々恐々としてしまう。シナイ山登山は、私にとって、今回のツアーで最大の難所だ。
シナイ半島の名前は、エジプトの月の神である「シナ」に由来する。
また、昔からアジアとの交易の先端地でもあったという。そもそも、シナイ半島はアジア大陸に属すると言われて目から鱗だった。
キリスト教やユダヤ教にとっても出エジプト記の関係から「聖地」「巡礼地」である。
さらに、現在はダイビング・スポットとして人気があり、観光業の中心にもなりつつある。リゾートがいくつも出来ていて、「聖地」としてよりもダイビングの街として人気だという。
驚いたといえば、この電線がアスワンから延々と電気を送ってきていると聞いたときにも驚いた。
エジプトの発電はアスワン・ハイ・ダムがそのほとんど(あるいは、すべて)を担っていて、この電線が切られたらエジプト全土が停電するとガイドさんは言う。まさに生命線である。
これだけ空は晴れているにも関わらず、この後、パラパラと雨が降ったのが意外だった。エジプトの降雨量は年間300mmくらいだというから、相当に珍しかった筈である。
ガイドさんの話は、エジプトを「支配した」大統領4人でそのうちもっともエジプト人に愛されているのはナセル大統領であるとか、第三次中東戦争でシナイ半島をイスラエルに奪われたとか、エジプトの軍隊は中東地域で2番目に強いとか(1番目はイスラエルだと言っていた)、徴兵制の話もあったし、ベドウィンの人たちの生活の糧は麻薬であるとか、何だか複雑な気持ちになる話が多い。
セント・カタリーナ村の入口にはゲートがあり、ガイドさんは「チケットを買う。」と言って降りて行った。村に入るのにチケットが必要というのが今ひとつピンと来ない。何らかの保護区になっているということだと思う。
そのゲートから10分ほど走り、セント・カタリーナ・ツーリスト・ヴィレッジというホテルに18時30分くらいに到着した。
コテージ式のなかなか雰囲気のよいところである。
しかし、明日は1時30分にモーニングコールが入る。滞在時間がごく短いのが残念だ。
セントカタリーナ・ツーリスト・ヴィレッジのお部屋は全室スィートルームのようだ。
リビングとベッドルームがある。バスルームにはバスタブがあったけれど、お湯がタンク式なので貯めるには多分足りないだろうという案内があった。
可愛い。
私はこういう雰囲気が好きだし、今回のツアーの中で一番このホテルが好きだ。一方、ツアーの方々にはあまり評判が良くなかったようだ。
鍵がどうしても閉まらずにスタッフを呼んできたら、ドアノブを回さずにドアを引っ張って「鍵はちゃんとかかるじゃないか。」と言われたと女の子二人が嘆いていたときには、思わず笑いつつも気の毒に思った。
「明日は早いので今日は少しでもとにかく休んでください。」と言われ、夕食は早めの19時からだった。
ここでもビュッフェ式だ。正直に言うと、ごはんはヨルダンの方が美味しかったと思う。
アルコールは一切出てこない。他に甘い飲み物しかなかったので、今回もノンアルコールビール(3USD)を頼んだ。昨日、アカバで飲んだノンアルコールビールは泡がなかったけれど、今日のノンアルコールビールは泡がちゃんとある。優秀だ。
エジプシャンポンドで支払ってお釣りに細かいお金をもらおうと思ったら、とても困った顔のウエイターのおじさんに「お釣りがないよ。」と言われ、諦めてUSDで支払った。
夕食の途中、満月があまりにも綺麗に上って来ていたので、テラスに出て写真を撮った。
食事を終えた方から、みなさん明日のことを考えて次々とお部屋に戻って行く。
お一人参加の方と「私たちは、お風呂の時間が半分でいいから大丈夫。」などと言い合いながら、コテージに帰る道すがら、コテージと満月の写真を撮った。
それでも20時30分ころには部屋に戻り、お水になっちゃうよりはと持参していた水のいらないシャンプーで髪をさっぱりさせ、シャワーを浴びて明日の用意をし、21時には就寝した。
<この日の服装>
タンクトップ、長袖シャツ、カプリパンツ、スパッツ
(船内では、上にフリースシャツ)
<歩数計>
ヨルダン・エジプト時間9月22日18時から23日18時まで 10852歩
(ただし、このうち7018歩は、前日のスーク散策時の歩数である。)
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