白馬旅行記(2011)1日目
2011年8月21日(日曜日)
考えたらほぼ半年ぶりの旅行である。一緒に行く母は確か昨年秋以来だからもっと久しぶりの旅行だ。
今年の前半は、妹の出産と育児、東日本大震災で旅行という感じではなかった。
出かける頃、我が家の辺りは小雨が降っていて、それがさらに荷造りを迷わせる。母に散々「邪魔になるよ。」と言われつつ、長い傘(正式名称は何というのだろう)をさして出かけた。
大宮駅でおやつ代わりに塩飴やクッキーなどを買い、8時42分発あさま561号に乗り込んだ。
予約したときにはまだ余裕があった指定席車両も、乗ってみればほぼ満席で驚いた。
空が明るくなった、黒い雲が出てきた、とほんの僅かな天候の変化に一喜一憂しつつ、長野駅に到着した。
雨は降っていない・・・。
まずは東口に出て、アルピコバスの、特急バス長野ー白馬線の回数券を購入し、コインロッカーに大きな荷物を預け、善光寺口に取って返した。
ちょうど善光寺に行くバスが発車したばかりだったので、雨も落ちていないことだしと歩き始める。
途中、「かるかや山西光寺」の看板を見かけて寄り道した。
長野市街にあるから仕方がないといえば仕方がないけれど、この黄色い壁のホテルが借景というのはどうなんだろう。「あれがなければねー。」と母と言い合う。
私のお目当ては、「絵解き」で有名なお寺の飛び出すお花のおみくじである。
お参りして早速おみくじを引くと、母ともども小吉だった。
しかし、その内容がかなりヒドイ。仕事の目処が立たないとか、恋愛面では相手に誤解されるとか、人生を儚まなければならないような希望のない中味である。もちろん、しっかりと結んで来た。
その後、御朱印をお願いしていたら、一人旅らしいお姉さんがやってきた。
西光寺には善光寺七福神巡りの第一番寿老人がいらして、七福神巡りのための台紙も販売され、すべて巡って善光寺で御朱印をいただくと満願となるそうだ。無人のお社もあるので、自分で御朱印を押す必要があったり、参道から少し外れたところにお社があったり、その辺りの注意事項をお寺の方が説明していた。
御朱印を集めたり、マスコット人形のようなものを集めたり、なかなか楽しそうな企画である。
母に「やってみる?」と聞いてみたところ、「いらない。」というすげない返事が返ってきたので、当初予定通り、善光寺、東山魁夷美術館というコースを行くことにした。
母が言うには、信心もないのに御朱印をもらったり七福神巡りをしたりするのはどうか、ということらしい。私のためにわざわざ東京大神宮で恋愛成就のお守りを買ってくださった方の言葉とも思えない。そこは敢えてツッコまないことにした。
「緩い坂道はキツイ。」などと情けないことを言いつつ歩くこと5分くらいで善光寺の仁王門が見えてきた。
仁王門の手前には宿坊がいくつも軒を連ねている。どこも趣のある建物で、ちらりと見える内装なども渋くていい感じだ。いつか、宿坊に泊まってお朝事などにも参加してみたい。
仁王門には当然のことながら仁王様がいらっしゃる。仁王像の前に細かなネットが張ってあるせいか、この仁王様が3DCGのように見える。不思議だ。
ご挨拶をして先に進むと、そこはいかにも「仲見世」な感じの道と人混みだった。
すぐ先に山門が見えているけれど、時刻は11時近い。朝早く出かけてきたこともあって小腹が空いた。
母に「お参り前に食べるの?」と白い目を向けられつつ、人だかりが出来ていたいづみや旅館で、なすのおやきを買い、母と二人で半分ずつぺろりといただいた。
お腹も落ち着いたところで、改めて山門に向かう。
山門は登れるようで、上から長野市街を見下ろしている人が結構たくさんいる。そういう情景を見ると、石川五右衛門と「絶景かな、絶景かな。」という台詞を思い出す。あれは確か京都南禅寺の話だった。
雨が落ちていないとはいえ、雨模様の天気予報にもかかわらずかなりの人出で驚いた。さすがは善光寺である。
この山門にかかっている「善光寺」の額の「善」の字は牛の顔のように見えるらしい。肉眼で見たときは判らなかったけれど、撮った写真を拡大したら確かに牛の顔に見えて何だか可笑しかった。
手と口を浄め、お線香をあげ、理由が判らないままその煙を体にかけて本堂に進む。
最初に目に付くのはびんずる尊者様で、あちこち皆が撫でるものだからツルツルぴかぴか光っている。
自分の悪いところを触ると治してくださるというお話で、もちろん頭をたくさん撫でさせていただいた。母は主に膝を撫でていたようだ。今日もサポーターをしている母である。
私は善光寺さんに来るのは2度目だ。お戒壇巡りをした記憶がないので、恐らく最初に来たときは内陣には入っていないと思う。今回はお戒壇巡りをしたいと思っていたので、内陣券を購入して上に上がる。
そこでは普通に法要が行われ、読経の声が聞こえていて、でも列を作って並んでいる私たちはただの観光客で、何だか変な感じである。
そこからまっすぐお戒壇巡りに行けそうだ。ただ、30分待ちという立て札が出るくらい混雑していたこの日は、内陣である畳敷きの広いお部屋をぐるっと回るように指示された。
ご本尊を拝みつつぐるっと内陣を回った後は、いよいよお戒壇巡りに向かう。
ちょうど腰の辺りの壁を右手で触りながら行ってくださいという注意があって、階段を下りる。
しばらくは、入口からの明かりでまだ辺りを見ることができるけれど、曲がり角を曲がると底は本当に真っ暗闇である。ダイアログ・イン・ザ・ダークに負けないくらいの「本当の」闇だ。全く何も見ることはできない。
きっとみんなが触ってツルツルになった壁を触りつつ、すり足でご本尊の真下にあるという「極楽の錠前」を目指す。
すり足でも何回も前を歩く人の足にぶつかってしまい、とうとう「動きます〜。」「止まります〜。」と声をかけてくださるようになった。申し訳ないことだ。
それで、肝心の「極楽の錠前」である。どういう形をしているのだろう?
確かに、そこに、金属製のモノがあって、極楽浄土に行けるようお願いしてきた。でも、どうすれば私が探り当てたものが「極楽の錠前」であると確信が持てるのだろう?
ちなみに、私は「極楽の錠前」は縦に20cmくらい、直径4cmくらいの棒状だと思ったけれど、確かに私が触ったものが「錠前」だったのか、全く自信はない。
「極楽の錠前」から出口はすぐそこである。
階段を上がると、曇りの天気にもかかわらず辺りが非常に明るく眩しいくらいに感じられる。
出口に向かう途中で御朱印をいただき、併せて「内陣でしかお渡ししていません」という、ご住職が摺ってくださったというご本尊の姿の版画(多分、きちんと別の言い方をしていたと思うのだけれど、思い出せない)もいただいた。
限定ものに弱い私である。
待ち時間が長かったため、既にお昼を回っている。
お線香と仏具をいくつか買い求め、この後東山魁夷美術館に行くし、母が「おそばを食べたい」と言うので、仁王門すぐそばの「かどの大丸」というお蕎麦屋さんでお昼をいただいた。
創業1700年頃という老舗だ。
そこまで古くなければ、この好立地を得ることはできまい、と納得する。
私は更級そばのとろろそばをいただいた。手打ちのためかやや太さが不揃いだなぁと気になりつつ、つるつると美味しくいただいた。
母は更級ではない普通のおそばをいただいていて、つゆにつけずに食べ比べてみたところ、「違うということは判る」というくらいの違いがあった。
再び善光寺の境内を抜け、東山魁夷美術館に向かう。道がよく判らずに「このまま真っ直ぐ行けばいいと思うんだよね〜。」などと母に言っていたら、よっぽど私の声が大きかったらしく、前を歩いていたおじさんがビックリしたように振り返り、「ここを真っ直ぐ行った左手の公園の奥ですよ。」と教えてくれた。
驚かせて申し訳ない。
善光寺で働いていらっしゃる方のようだった。
東山魁夷美術館は、正確には、長野県信濃美術館の別館である。
この日は、「III 日独交流150周年記念 ドイツ・心の旅路」と題する企画展が開催されていた。
東山魁夷というと、青い空と森と湖に白馬というイメージだ。今回の企画展で飾られていた絵は、ドイツの自然を描いたものもありつつ、それ以上に街並みを描いたものが多く、色彩も茶系からオレンジが多い。
私の持っていたイメージがステレオタイプすぎるせいか、意外な暖かみを感じた。
母は私よりはずっと美術方面に関心がある筈なのに(一応、木彫りを教えている)、絵を見るスピードが速い。
ウィンドウショッピングの方がよっぽど時間をかけて見ているよ、という速さで次々と絵の前を通り過ぎてしまう。以前に箱根の成川美術館に行ったときもそう感じていて、これはもしかして展示されている絵が好みに合わなかったのかと思ったくらいだった。
しかし、今日の様子を見るとどうもそうではないらしい。今回も、絵の前はかなりのスピードで通り過ぎているのに、東山魁夷の軌跡を追ったDVDはやけに熱心に見ていた。
聞いてみると、木彫りのお仲間と美術館などに行ったときも「早いね。」と言われたと言う。
駅に向かう途中、九九や旬粋で、そば粉のガレットとクレープを焼いているのを見つけ、お昼を食べてから2時間、おやつにいただいた。
たくさんのメニューがあってかなり迷った末、母は「ラムレーズンとクリームチーズ」という温かいクレープを、私は「完熟りんごのシロップ煮と生クリーム」という冷たいクレープを選んだ。
なかなか美味しい。
母に一口もらったラムレーズンは相当にラムが効いていて、酔っ払いそうだった。
母と私で駅まで歩いたら寄り道をして15時長野駅発白馬八方行きバスの時間に間に合わなくなるに決まっている。100円で駅までのバスに乗った。
白馬行きのバスは、一人で2シートを占拠しても大丈夫なくらいの乗車率だ。
道が濡れていないから、白馬の方でも今日はほとんど雨が落ちなかったのだろう。
16時10分の定刻に白馬八方バスターミナルに到着した。
今夜の宿であるホテル五龍館の場所を案内所の人に聞いたら近そうだったので歩いて向かう。
確かに近い。5分くらいだったろうか。
車で来るか、八方バスターミナルまで迎えに来てもらうか、どちらかの人が多いようで、歩いて玄関前に着いたら、ホテルの人がびっくりしたように迎えてくれた。
「これまでずっと晴れていたのに、雨の日を狙ったように来てしまった」と思っていたら、白馬ではこの夏、ずっと白馬三山を拝めていないそうだ。
元々、夏はあまり姿を現さないそうで、2011年の夏は特に見晴らしがよくなくて、見えた日は1日か2日しかないですね、とおっしゃる。
母と10年以上も前に来たときにはくっきりと山が見えた記憶があって、ずっとそういうものなのだと思っていたら、あのときは運良く見えたということだったらしい。
こちらのホテルでは、お部屋にお菓子を用意する代わりに、ロビーにかき氷などを用意している。
かき氷を食べるほど暑くはなかったので、煮込まれていた玉こんにゃくと、バナナの梅酒煮を部屋に勝手に運んで、お茶と一緒にいただいた。
やはり和室で足を伸ばしたりゴロゴロと横になったりできると落ち着く。
1時間くらいそうしてゴロゴロした後で、温泉に行った。
ここの温泉は非常にph値が高い強アルカリ温泉である。源泉掛け流しというのも嬉しい。
あまり混雑していなかったので、露天風呂にゆっくりじっくり浸かる。何だか早く上がるのは勿体ないような気がして、ほとんどガマン比べのように半身浴で長風呂をしてしまうのが常だ。
それでも、露天風呂にはいい風が吹いていて、のぼせることもなくじっくりと楽しむことができた。
お風呂上がりに「**に効く」と銘打ったお水が幾種類か用意されている。取水口が違って効能が違うのかと思っていたら、ホテルの方によると、同じお水にそれぞれ「**に効く」粉が溶かされているそうだ。
美白の水とストレス解消の水が減っていたのが何となく可笑しかった。
夕食は19時15分からレストランでいただいた。
席につくと、どどん!と用意されている鍋やレタスにびっくりだ。このレタスは、味噌が3種類用意されてそちらをつけて召し上がってください、お代わり自由です、と説明された。
私は地ビールを、母は生ビールを選んで、早速、お食事の開始である。
お刺身は「信州サーモンです。」とおっしゃる。「何故、信州でサーモン?」とお聞きしたら、姫鱒とブラウントラウトとの掛け合わせで、卵を産めないのでその分身に脂が乗って美味しいです、というお話だった。
確かに、このお刺身は絶品だった。
この日の夕食のメニューはこんな感じである。
先附
とうもろこしの冷やし茶碗蒸し
前菜
厚焼き卵・山葵枝豆、川海老、ベッたら寿司
旬の逸品
高原レタス 三種の味噌(肉味噌、茄子味噌、エビチリ)で
お造り
信州サーモン
台の物
信州スタミナ鍋(白馬豚、モツ、鶏団子、餃子、キャベツ、もやし、豆腐、しいたけ、にら)
焼き物
鱧のトマト釜グラタン仕立て
強肴
白馬豚のロースト 杏とエンドウ豆の二色の彩り
食事
信州サーモンの冷や汁仕立て 野沢菜
水菓子
レアチーズムース
1時間以上かけ、とても美味しくいただいて、大満足だった。
部屋に戻るとお布団が敷かれていた。スティックのお茶が補充されていたのも嬉しい。
お腹がいっぱいになって滅多に飲まないお酒も入れた母は、そのまま「今日はもうお風呂はいい。」と寝る態勢に入っている。1時間くらいゴロゴロとお腹が落ち着くのを待ってから、一人で温泉に向かった。
夕食前よりもさらに空いていて、ほとんど貸し切り状態である。嬉しい。
露天風呂を占拠して、涼しい風に吹かれながら、のんびりと浸かることができた。
売店で売っていたりんごジュースが何だかとても美味しそうだったので、お風呂上がりか明日の朝に飲もうと買ってあった。
1本は多いなぁと思っていたら、母が目を覚ましていて「半分ずつなら飲む。」と言う。1本を半分こして飲むと、すり下ろしたりんごを搾ったような、りんごそのままの味のジュースで美味しかった。
天気予報を見て、明日、せめて土砂降りの大雨にならないよう祈りつつ、眠りについた。
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