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2012.05.08

姥湯温泉旅行記1日目

2012年5月4日(金曜日)

 朝、家を出ようとしたら突然雨足が強くなった。
 これは、それなりの装備をしなければ1日濡れた服で過ごさねばならなくなる。姥湯温泉は相当に寒いらしいし、そんな羽目に陥ったら風邪をひくのは必定だ。
 慌てて荷物と着て行く服を選び直し、レインパンツとレインジャケットを着てレインポンチョを荷物から外し、折りたたみ傘を差して出かけることにした。ただでさえ多い荷物が増える一方である。

 なかなか咲かなかった東北の桜が一気に咲いて一気に満開になり一気に散り始めたというオソロシイ情報はなるべく見ないようにし、天気予報に一喜一憂するのも疲れたので天気のことはなるべく考えないようにし、東北新幹線で福島駅に向かう。
 お姉様方お二人との3人旅で、3人がそれぞれ東京・上野・大宮からの乗車なので、全員が揃ったのはつばさ79号が大宮駅に到着した11時25分のことだった。
 このつばさは臨時列車で、この後は福島までノンストップである。車内は空いていて、2列の座席を引っ繰り返して向かい合った4席を3人で占拠できたのが嬉しかった。気兼ねなくおしゃべりが出来る。

チキン弁当 新幹線が大宮駅を出発してすぐ、持参した駅弁を開いて早速お昼ごはんにした。
 私は、チキン弁当と、駅構内のデリで九条ネギとじゃこと水菜のサラダを選び、ペットボトルのジャスミンティを買っている。チキン弁当を選んだのは、和食だと夕食や明日の朝食と被る可能性があるけれど、間違ってもこの旅行中にチキンライスを食べる機会はあるまいという判断による。
 お昼ごはんを食べつつおしゃべりしていたら、12時35分、あっという間に福島駅に到着した。

 福島駅で、奥羽本線(愛称として「山形線」と呼ばれているらしい)の米沢行きの電車に乗り換える。12時54分発の電車はすでに到着している。2両編成のその電車は、ぱらぱらと人が乗っていて、3人で並んであるいは向かい合って座れそうな席がなかなかない。30分をずっと立ったままでは辛そうなので、端の方の席を確保した。
 外は雨が降っているのか降っていないのか、雲に覆われてはいるけれど空は明るい。
 梨畑(だと思われる)やブドウ畑(だったと思う)が広がっている。なかなかいい眺めである。
 並行して流れている川(今調べたら、松川というらしい)の水量が随分と増えていて、茶色く濁った水がすごい勢いで流れているのが見える。

 車窓を眺め、おしゃべりしていたら、あっという間に今夜の宿、姥湯温泉枡形屋の最寄り駅である峠駅に到着した。
 この峠駅ホームでは「力餅」が、往年の(?)駅弁売りのように売られている。その風情と姿にノックアウトされ、1箱10個入りなら3人で食べ切れるかもと相談し、3人で1箱(1000円)購入した。今日のおやつである。

峠駅 峠駅はかなり変わった姿の駅である。山形新幹線開通まで、この路線では、板谷峠付近の急勾配と豪雪によりかなりの難所となっており、スイッチバックで上っていたという。そのための複雑な線路やポイントなどの施設が駅構内に設けられ、その施設を雪から守るためにシェルターで覆われていたという。
 現在はスイッチバックは行われていないけれど、そのシェルター等々を再利用するような形で新しく駅が(というか、ホームが)作り直されている。
 線路まで含めて大きく覆われ、駅ではない元線路(今はアスファルトで舗装されている)までそのシェルターは続いていて、何とも不思議な眺めだ。

 峠駅では既に枡形屋さんの送迎ワゴンが待っていてくれた。おじさんの持っていたメモに名前があることを確認し、ほっとする。
 今日、この送迎を利用するのは私達の他には二組しかいないらしい。
 送迎車は13時50分発なので20分くらい時間がある。駅の中を歩いたり、すぐ近くにある峠の茶屋(力餅の発売元でもある)に行ってみたり、駅のシェルターから外に出てすぐのところにつくしが群生したりふきのとうがあちこちに生えているのを見つけて写真を撮ったり、線路の向こうの(推定)山桜を眺めたりしていた。
 何より驚いたのは、駅(標高626m)の周りにたっぷりと雪が残っていたことだ。寒いはずである。

つくしふきのとう

 駅前でおじさんが食材を積み込み、宿に向けて出発した。
 駅から8kmだというけれど、くねくねと細い山道を行くので時間がかかる。対向車とすれ違うには双方がものすごく慎重にそろそろと進むか、どちらかが少し道幅が広くなっているところまで戻るか、どちらかしかない。
 雪は普通に道端に積もっている。それも、「雪かきして端に寄せて積んだ雪が残っている」のではなく、ごく普通に積もった雪が残っている。木の周りから溶けてきていて、何だかいかにも雪国・山国である。

 ここ数日の雨のためか、アスファルトで舗装された道が30cm幅ほど崩れ、土を押えていた木材も谷底に落ちているような場所をそろそろと通り抜けたときにはかなりドキドキした。下手に振動を与えたらもっと崩れてしまいそうだ。
 また、スイッチバッグを指示する標識の立った曲がり角(スイッチバック用のスペース)を通り抜けたときには(普通乗用車は恐らく軽く切り返すか、それも必要ないくらいのスペースはあったように思う)、「おぉ! これか!」と思った。
 雨模様だったので遠くまで見晴らすことはできなかったけれど、水芭蕉が群生する心和む風景も眺めながら、30〜40分ほどで宿の駐車場に到着した。

 到着した場所は、宿の「駐車場」である。
 姥湯温泉枡形屋は、駐車場から先、車が入ることはできない。吊橋を渡り、細い急な坂を登って行く。重い荷物は、おじさんが駅で仕入れてきた食材と一緒にゴンドラ(というとものすごくいいものに思える)で運ぶと言われ、お願いする。
 雨はそれほどでもなかったけれど、谷間だからか、風ビュービュー吹きすさんで折り畳み傘などちょっと油断するとあっという間におちょこになってしまう。かなりの急坂を一歩一歩登って行った。

 宿野ロビーでは、日帰り入浴に来ていたらしい方々が雨宿りをしていらした。途中、駐車場に向かっていた方々も誰一人として傘を持っていなかったから、この雨は突然降り出したらしい。
 この寒さで、温泉に入った後ずぶ濡れになったら風邪をひいてしまう。かといって、下手に雨が止むのを待ち続けて日が落ちてからあの山道を車で下るのは相当に難儀なことである。日帰り入浴の場合は駅からの送迎はない。

 2階のお部屋に案内していただいた。
 お部屋に入ってまず窓から外をのぞくと、宿の前の細い川を轟々と音を立てて茶色い水が流れているのと、その向こうの切り立った崖が目に入る。案内してくださった方に「みなさん、まず窓から外を見られるんですよね。何かいいものがありますか?」と笑われてしまった。

宿の部屋力餅

 まずはお部屋に落ち着き、レインコートを掛け、お茶を入れる。ティーバッグではなく茶筒にお茶っ葉が用意されているのが嬉しい。
 そして、もちろん、お茶のお供は先ほど買ってきた力餅である。
 「力餅」という名前の、要するにお饅頭である。お饅頭というよりは大福に近いかも知れない。
 塩気の効いた漉し餡を柔らかいお餅で包んでいて、とても美味しい。
 あっという間に2個ずつ食べた。

 雨も小止みになってきたので、お風呂に行った。夕食が17時30分からと早い。今食べた力餅の分くらいはお腹を空かせておく必要がある。
 枡形屋では、内風呂は24時間入浴可、大きな露天風呂は混浴で夜2時間だけ女湯になる。女性用の露天風呂もあるけれど、黒の板塀で囲われていて眺めはやはり大きな露天風呂の方に軍配が上がる。
 混浴の広い露天風呂にもかなり惹かれたし、バスタオル着用可の案内ももらったけれど、何人かの男性が入浴しているらしく、この明るさの中を入って行くのはなかなか勇気が必要で、我々は断念した。

女性専用露天風呂 まず女性専用の露天風呂に入った。
 眺望がなくてもやはりこの断崖絶壁下のお風呂は気持ちがいい。
 お湯も乳白色が少し青みがかっていて、湯の花が浮いているのが判る。この風だから、湯船に落ち葉が浮いているのは仕方がないだろう。
 湯口に近いところに陣取って、温かい温泉を満喫する。

 露天風呂を堪能した後、やはり外気にさらされて温めになっていたお湯と冷たい風に「温まりきった」という感じが薄く、内風呂に入った。
 内風呂はヒノキのお風呂で、洗い場が一つある。ボディシャンプーとリンスインシャンプーがあったと思う。
 内湯の方が露天風呂よりも湯温が高い。窓を少し開けて冷気を取り込むとちょうどいい感じである。
 こちらでさらに温まってから上がった。

宿から見下ろす宿を見上げる 部屋に戻って外を見たら、青空がのぞいていた。夕食まで時間が少しあったので、浴衣から着てきた服に戻り、外に写真を撮りに行く。もちろん、そんな酔狂なことにお姉さまお二方は付き合ってはくださらない。
 急坂を下ると、雨は上がっているものの、まだ水が坂道を流れていて、宿のサンダルで歩いているとつま先を濡らしそうで不安である。第一、サンダルでは急坂を下るのも登るのも歩きにくい。
 吊橋の辺りまで下りて、辛うじて見える青空とともに宿や川、遠い景色の写真を撮る。
 薄手のフリースのシャツに薄手のフリースの上着で歩いていたらすっかり冷えてしまった。宿の入口に用意されていた幸福茶が温かく、美味しかった。

秘湯ビール 17時30分から夕食である。
 日本秘湯を守る会の会員宿でしか飲めないという秘湯ビールを頼んだ。秋田県のわらび座という会社で作っているらしい。
 飲みやすい、まろやかな味のビールだったと思う。
 そして、ごはんも美味しい。
 食べると口の中いっぱいに山菜の香りが広がる。サーモンのお刺身も甘いし、鯉のお刺身も(少し乾いているような気もしたけれど)こりこりしていて美味しい。
 鯉こくも、冷めて少し固くなっているのに何故か美味しい。
 そして、もちろん、米沢牛の陶板焼きは絶品である。
 3人揃ってほぼ完食した。

陶板焼きお刺身

 食事後、フロント周りにある売店(というか、フロントに絵葉書や湯の花が置かれ、フロント前のスペースの棚にお酒やおつまみなどが入り、壁には売り物の絵葉書がレイアウトされた額が飾られている)を覗いた。
 姥湯温泉の石鹸もあって、ちょっと迷ったけれど500円は高い!
 内湯で試しに使えていたら、もしかしたら購入していたかもしれないけれど、どんな感じか判らないのはなぁと思い、湯の花を購入した。200gで10回分である。

 大きな露天風呂が女性専用になるのは18時から20時までである。
 食休みを少ししてから、露天風呂に向かった。
 ランプが点されていい雰囲気である。脱衣場はかなりオープンな感じで、すだれのようなもので覆われてはいるけれど、お風呂に向かって大きめに開いていて、混浴の時間帯にここで着替えるのはかなり敷居が高い。

 夜になって雨は止んだものの冷え込んできたため、湯口に近づいて温かいお湯が注ぎ込まれていることを感じつつ、しばらくおしゃべりに興じた。
 お天気がよければ空に満天の星が見えたろうし、月が出ていれば切り立った崖下のロケーションも目にできたと思うけれど、曇っていたのでひたすらお湯を楽しむ。
 それでも30分程度では「温まりきった」という感じにはならず(のぼせないように肘を出していたせいもあるかも知れない)、再び内湯で温まってから部屋に戻った。

 食事の際にお布団は敷いていただいていたので、あとはごろごろしたり、端に寄せてもらったテーブルで宴会(もどき)を行ったり、いつもの温泉の夜である。
 外を流れる川の音なのか、雨音なのか、よく判らない水の激しい音がなかなかの迫力で迫ってくる。障子を閉めないと冷気が窓ガラスから直接入り込んでくるようだ。
 たまたま、この3人で見に行った映画「K-21」がテレビで放映されていた。「懐かしいね」などと言い合いながら見る。

 ・・・と書きたいところだけれど、お姉様方はお二人とも途中で寝てしまっていたようだ。
 23時過ぎにテレビを消し、電気を消そうとしたところで目を覚まして「結局、映画の最後がどんなだったか判らなかったわ。」と言っていた。

 -> 姥湯温泉旅行記2日目その1

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