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2012.08.25

甲府旅行記1日目

2012年8月18日(土曜日)


 1週間前から我が家に滞在している妹母子に何故か見送られ、9時30分過ぎに母と家を出た。
 最初は、お昼過ぎに到着する特急に乗って行き、甲府駅の近くでお昼ごはんを食べようと思っていた。しかし、えきねっとで35%引きで買える特急券を発見し、計画変更した。これだから、旅行は早めの準備が肝心だ。
 11時29分新宿発の特急かいじは、甲府駅着が13時10分だ。新宿のデパ地下でお弁当を買い込み電車の中でお昼ごはんを食べることにした。


 デパ地下に行き、お昼ごはんはあっさりと崎陽軒に決まった。母は、東京エリア限定の中華弁当、私は一度食べてみたかった横浜チャーハン弁当である。
 母のお弁当は豪華版、チャーハン弁当はサイズも可愛らしく物足りないような気がする。ちょうどすぐそばに京都から抹茶スイーツのお店が来ていたので、そこで抹茶冷やしぜんざいを購入した。冷凍してあって、1時間くらいで食べごろになるというからちょうど良い。


 お弁当を即決したので、電車の時間までだいぶ余裕がある。
 新宿駅到着時に相当雨が強く降っていたため、晴雨兼用の傘しか持って来ていない母が「傘を買いたい。」と言い出し、デパートに向かった。
 折りよくセール中で、母は折りたたみ傘だけでなく、ストールまで(しかも2本!)買い込んでいた。
 そういえば、以前に河口湖に行ったときも高速バスの発車まで余った時間に母はデパートで帽子を買い込んでいたなぁと思い出した。


横浜チャーハン弁当 特急かいじに乗って「雨が強くなった!」「青空が見えた!」と窓外の天気に一喜一憂しつつ、早速お弁当を開く。
 やはり見た目どおり、母のお弁当の方がボリュームがある。二人とも「甘めの味付けだね。」と意見が一致する。しょっぱいと塩分を気にする方々から不評だけれど、甘めであれば万人向けということらしい。
 お弁当を食べ終わってちょっと物足りなかった私が抹茶冷やしぜんざいを食べようとして、溶けていない上にスプーンが付いていないことが判明した。これは食べようがないと、宿に到着してからのお楽しみに変更だ。


 13時過ぎに甲府駅に到着したときには雨は小降りになっていた。これくらいなら大丈夫と傘は差さず、県立美術館行きのバスが来る南口に出る。
 次のバスは13時21分発で、それほど待つ必要もなくラッキーである。
 てっきり駅始発のバスだと思っていたら、どこかから来たバスのようで、数分の遅れで到着した。バスに乗る人は4〜5人で、その方々も次々に降りて行き、貸切バスのようになった。
 もしかして美術館もガラガラではないかと思い始めた頃、美術館がある公園の駐車場が見えた。結構一杯になっていて、みんな車で移動するのだと改めて認識した。


美術館入口 山梨県立美術館最寄りのバス停に着いたときもやっぱり小雨が降っていた。「これくらいの距離なら」と傘を差さずに美術館まで小走りで向かう。
 今回の目当てはミレーである。母と「常設展だけでいいよね。」と話し、チケットを買う。
 母はいわゆるシルバー割引で無料(特別展を見る場合はチケットが必要)、私は甲府市内宿泊者割引で通常500円のところが400円だ。母は自ら年齢を明かしていたけれど、私は受付の方から先に尋ねていただき(ボストンを持ったままだからだと思われる)、何て親切なんでしょうと思う。
 常設展のチケットで、ミレー館と「2012年夏のスペシャル展示 美術館に行こう! ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」を見ることができた。


 まずはミレー館に向かう。「館」といっても別棟の建物があるわけではなく、どちらかというと「ミレー室」という感じである。
 黒い天井に赤い壁で、その色から受ける印象よりも落ち着いた空間だ。
 山梨県立美術館といえば、「種まく人」をオークションで落札したことは覚えていたけれど、その他にもミレーの作品を多数所蔵していることをテレビで見て、ぜひ行きたいと思っていた。念願が叶って嬉しい。
 昨年度に新たに購入された絵もあって驚く。
 ミレーの他にも、同じバルビゾン派の画家の絵も所蔵されている。


 昔、我が家には何故か子供向けのミレーの伝記物語の本があり(他の人の伝記は一切ない)、私にとってミレーはかなり近しい画家となった。母にその話をすると、「私は知らないから、(買ったのは)お父さんじゃない?」というつれない返事だった。我が母ながら、ロマンを解さない方である。


 よく知られる「落穂ひろい」とは別の構図(というか、縦横が違うだけ)の絵もあったし、もちろん「種まく人」のちょっとアンバランスな暗い画面も懐かしい感じがする。
 私が一番気に入ったのは、ミレーの最初の妻を描いたという肖像画だ。タイトルは「ポーリーヌ・V・オノの肖像」で、黒っぽい背景に、黒いドレスを着た若い儚い雰囲気の女性が描かれている。
 また、「鵞鳥番の少女」と題されたスケッチのような小品も、ちょっと絵本の挿絵風で、線だけで描かれた素朴な感じが良かった。


 次は、ミッフィーである。
 もっとも、「ディック・ブルーナに学ぶモダン・アートの楽しみ方」というタイトルからも判るように、ミッフィーはあくまで脇役だ。「ミッフィーのたのしいびじゅつかん」という絵本をモチーフに、ミッフィーに紹介させる形でいわゆるモダン・アートを紹介し、解説している。
 そのモダン・アートの紹介をメインにしつつ、ミッフィーたちの原画も展示され、ディック・ブルーナに関する解説や彼の創作技法なども紹介されており、なかなか楽しい。
 ブタのポピーさん(日本名は「うたこさん」)というキャラをここで初めて知った。


 こういうものを見ると、母と私の会話のテーマは甥っ子に集中する。
 小熊のボリスは甥っ子に似ているとか、これをお土産に買って帰ろうとか、塗り絵のコーナーがあったのでそれも頂いて帰ろうとか、ミュージアムショップでもやけに盛り上がった。
 妹にというよりは甥っ子に小熊のボリスのぬいぐるみと、ミッフィーの小さめのガーゼ地ハンカチ(よだれ拭き用のつもりである)を購入し、自分用にハンドタオル2枚と、友人のお嬢さんに喜んでもらえるような絵葉書を購入した。


 コインロッカーに預けていた荷物を引き取り、湯村温泉に向かうバスがちょうど出たばかりで次は1時間半後だったので、タクシーで本日の宿に向かった。
 が、しかし、である。
 タクシーが走り始めてすぐ、お財布を確認しようとバッグを覗いてみたら、その肝心のお財布がない!
 焦って、ショルダーバッグは元よりボストンバッグの中を探してもない!
 だとすると、財布に入れていたコインロッカーの鍵を出したときにどこかに置き忘れたとしか考えられない。


 慌てて、タクシーの運転手さんにお願いして、美術館まで戻ってもらった。
 運転手さんはここで待とうかと言ってくださったけれど、財布の捜索に一体どれくらいの時間がかかるものか判らなかったので精算してもらい(この支払いも母に頼むしかない。一人旅でなくて本当に良かった。)、慌てて美術館に駆け込んだ。
 コインロッカーやお手洗いのあたりをうろうろバタバタ走り回って探していると、お掃除の方から声がかかった。
 その方が見つけて、事務所で預かってくださっていたらしい。もう本当に忝い。
 最敬礼して、受け取りにサインをし、無事にお財布を手にしたときには本当にほっとした。


 あー、焦った。
 母には散々ばかにされたし呆れられたし、もう1回お願いしに行ったタクシー会社のおじさんにも笑われたけれど、でも、無事に手元に戻ってきたのだからいいのである。
 拾ってくださった方、預かってくださった方には本当に感謝だ。
 そして、今回持って行ったショルダーバッグはとても小さくて、普段から持ち歩く物の多い私には不向きである、がんばって荷物を減らしてもやっぱり荷物は減らないし、バッグにしまう面倒くささゆえに財布を忘れるようでは本末転倒である、と反省とも言い訳ともつかない反省をした。


 美術館から今夜の宿である甲府湯村温泉の柳屋まで、焦りまくっていたので所要時間は覚えていないけれど、タクシー料金は1500円だった。
 途中、運転手さんに教えてもらって振り向いたら富士山がてっぺんだけ姿を現していた。ずっと雲に覆われていたので嬉しい。そして、今回の甲府旅行で(本当にてっぺんだけとはいえ)富士山を拝めたのはこのときだけだった。運転手さんに感謝である。
 晴天であっても、甲府から見える富士山は山の向こうに本当にてっぺんだけだそうだ。甲府は山に囲まれた盆地とはいえ、ちょっと意外なビジュアルの富士山だった。


栃もち 多分、16時過ぎに宿に到着したと思う。丁寧にお迎えしていただき、お部屋に案内していただいた。
 和室10畳に、掘りごたつがある2畳くらいのスペースとテーブルと椅子があるスペース、1階のお部屋だったのでお庭に面したベランダとデッキの中間のようなスペースが付いている。
 全26室のお宿で、案内してくれた仲居さんのお話によると、この日の宿泊客は30名前後、そして宴会のお客さんがいらっしゃいます、ということだった。
 お迎えのお菓子に栃もちをいただく。「手作りです。」とおっしゃっていただけあって、素朴な甘さで美味しい。


 母は、この仲居さんから「親子なんですか? 姉妹かと思った。」と言われてご満悦である。いや、ちょっと待て、一体、私がいくつで母がいくつに見えているんですかと追求したかったけれど、大人気ないと思い直して控えた。
 元々用意されていた浴衣は「中」サイズで、身長を告げると私用には「特大」というサイズの浴衣が用意された。重ね重ねショックである。しかし、浴衣を2枚いただけるのは嬉しい。
 嬉しいといえば、切手が貼られた絵葉書もいただいた。宿の名前が入っているのはご愛嬌として、なかなか風情のある絵葉書である。


 夕食は17時半、18時、18時半から開始時間を選べ、お部屋食だという。
 18時半からでお願いし、少しゆっくりした方がお風呂が空くだろうと、買ってきたまま食べられなかった抹茶冷やしぜんざいをいただく。
 スプーンがない状態なのは電車の中と変わらないけれど、溶けた状態を見てみると、とろっとはしているけれどそのまま飲めそうな濃さである。底に沈んだ小豆と白玉団子は栃もちについてきた楊枝で頂く。
 かなり濃い抹茶ぜんざいで満足した。


雨降りのお庭 お部屋に落ち着いた頃、雨が降り出した。絶妙なタイミングである。美術館を出たときには晴れていて、宿に入ったら雨。まるで雨女の私のためにあるような演出だ。
 雨が止むのとお風呂が空くのを待ってしばらくお部屋でごろごろし、17時を過ぎた頃、小雨になったのを見計らって「露天風呂にも屋根くらいはあるだろう」と大浴場に向かった。


露天風呂 大浴場は、先客がお二人くらいとガラガラだった。
 内湯にはジェットバスがあり、露天風呂があり、露天風呂の隣にサウナがある。塀越しに湯村山の緑が見える。
 露天風呂に屋根はいけれど、雨が完全に止んでいた。素晴らしいタイミングである。
 ほとんど貸切状態で温泉を満喫する。この前行った湯野浜や鬼首温泉のお湯は熱くて流石の私も長湯はできなかったけれど、こちらは風も涼しくて、いつまででも入っていられそうである。
 カルシウムナトリウム塩泉で、無色無臭透明なお湯だ。からすの行水派のの母がとっととあがった後もさらにお湯を満喫し、髪を乾かしながら足裏を叩く機械を占拠し、大浴場を出たところにあるマッサージチェアまで満喫して部屋に戻った。


 夕食が次々とお部屋に運ばれてくる。チェックインのときお世話になった女性がお着物に着替えて用意をしてくださった。
 ヤマモモ酒の食前酒、二人とも頼んだ生ビールで乾杯し、次々と現れるお料理をものすごいスピードで食べてゆく。先ほど食べたばかりの善哉は、風呂に入っている間にどこかに行ってしまったらしい。
 ジョッキで頼んだらいつも残してしまう母からグラスにビールをもらい、そちらもいいペースで飲む。


 お品書きをいただけたので、さらにお料理をいただくのが楽しい。
 この日のお夕食の献立は以下のとおりである。


夕食スタートお通し
 もろこし豆腐 山桃 美味出汁
前菜
 姫サザエ、枝豆松風、焼きもろこしのテリーヌ、ゼリー寄せ(穴子、空豆、蟹スティック)
お造り
 海老、蟹、旬のもの
凌ぎ
 黒ごまおざら
煮物
 南瓜玉子豆腐、海老団子、茄子オランダ煮
富士桜ポーク洋皿
 山梨県産富士桜ポークソテー
山形の一品
 煮貝(甲州名物鮑の醤油煮)
揚げ物
 山葵葛あられ揚げ、レンコン、南瓜、モロッコ豆
酢の物
 とろろ、オクラ、帆立、ジュンサイ、黄身酢
食事
 生姜かちりごはん
お椀
 鳥つくね、冬瓜、葛仕立て
甘味
 フルーツ


鮑 海なし県の山梨県であわびが出てきたのには驚いた。そして、美味しい。
 同じように考える人が多いのか、特に説明書きがお皿に付けられていた。
 曰く「昔、ぜいたくに醤油で煮たものを持ち込んだところ、杉の樽の香りと、馬の背で山までゆられた日数とで、美味この上ないものになっておりました。それで山国の山梨の名物に貝があるのです。」ということだ。
 何にせよ、美味しかった。


 じゃことしょうがのごはんも美味しくて、一瞬「おにぎりを作っておくか」と思ったものの、とても食べられそうにないので断念し、食事を下げてもらってお布団を敷いていただいたのが20時半くらいだった。
 お布団を敷いてくださる方と何故か熊の話になり、「熊除けの鈴って役に立つんですか?」とお聞きしたところ、「熊は基本的に人間を怖がっているので、人間が来るぞと知らせれば向こうで避けてくれる。それを知らせる方法として熊鈴は、人間よりも高音をよく聞き取れる熊には有効である。」というお話だった。
 「だから、山歩きに行きましょう。」と言われたので「いえいえ、平地で。」と答え、笑われてしまった。


夜の露天風呂 柳屋には大浴場が二つあり、時間で交代になる。その交代時間が22時だ。
 かなり眠くなっていたし、母は寝てしまっていたけれど、絶対にまたお風呂に行くんだとテレビを見ながら無理やり目を開け続ける。
 22時30分くらいに行ったら、やはり大浴場はガラガラで、内湯も、二つの露天風呂(ヒノキ風呂と岩風呂である)もゆっくり満喫した。
 夕立があったからか、風が涼しくて気持ちいい。


 明日の朝食は7時半、8時、8時半と三つの時間帯から選べ、8時からでお願いしてある。
 目覚ましをかけなくても7時くらいには目が覚めるだろうと、23時過ぎに灯りを消した。


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