月山・鳥海山旅行記1日目
2012年7月26日(木曜日)
今日が一番心配という天気予報の中、8時前に上野駅に到着できるよう家を出た。
二人ともボストンバッグに荷物を詰めている。「湿原を歩く」のがメインのツアーに乗るため雨具等々の用意をしており、荷物が重い。
上野駅8時14分発のやまびこ127号に乗る。お昼ごはんを持参するよう指示があり駅で買い込む必要があるのと、集合が新幹線車内なので精算して入場券を買わなければならないため、早めに出発した。
8時前の上野駅構内は開いているお店も少なくて、お昼ごはんに関してはほとんど迷う余地はない。翌日が土用の丑の日だということに気がつき、うなぎの入ったおにぎりとおいなりさんとを購入した。バスの車内で食べるので、お弁当ではちょっと食べにくいだろう。
上野駅の新幹線ホームは地下深いところにあるので、早めに向かう。
ところで、上野駅までの乗車券の精算と新幹線ホームへの入場券の購入は、やはり自動販売機では無理で窓口に並ばなければならないのだろうか。ここで20分くらいはかかったと思う。
新幹線に乗り込むと、車内には同じコースを回る(1日目の宿泊場所だけが異なる)ツアーの方々も乗っていたらしい。添乗員さんが二人いらして、危うく間違えるところだった。
添乗員さんは割りと年配の男性で、母と二人で「意外だね」とこっそり言い合う。
受付後、オプションで明日のお昼(ホテルにて)と明後日のお昼(お弁当)、明後日の夕ごはん(こちらもお弁当)の案内があった。
明日のお昼は時間が50分くらいしかないし、ホテル併設のレストランも広くないので、(あまり美味しくはないけれど)申し込んでおいた方がいいですよ、というのが添乗員さんの見立てである。
明後日のお昼はバス車内で食べることになる。夕ごはんは新幹線車内だ。郡山駅着が19時頃になるので駅弁は売り切れている可能性が高いという。
食べはぐっても困るし、ずっと心配しているのも面倒である。二人分で3食6000円強を申し込んだ。
9時半少し前に郡山駅に到着し、ここからバス移動になる。
バスガイドさんに連れられて郡山駅前に何台も駐まっている観光バスのうちの1台に乗り込んだ。私達の申込みは遅かったらしく、満席のバスの後方に席が割り当てられていた。
月山に行くには山形駅まで新幹線で行ってしまった方がずっと早いと思うけれど、そこはオトナの事情というものである。
東北自動車道は工事渋滞が頻繁にあるものの、週末に工事は行われていないという。それでも多少の渋滞があるということでしばらく一般道を走りながら雲に隠れて見えない安達太良山等について説明を聞き、二本松から高速道路に乗った。
渋滞区間を迂回したおかげで、バスは順調に走る。
村田ジャンクションから山形自動車道に入る直前でまず最初のトイレ休憩だ。桃の恵みという100%桃ジュースが売っており、今夜にでもお風呂上りに飲もうと2本購入した。
我ながら、健康的なお買い物である。
旅慣れた方々はここで地図をもらっていらしたようだ。車旅に慣れていない私にはそういう発想がなかったのが悔しい。バスガイドさんが「何部かはあるので」と車内で配っていたものを有難く頂いた。
バスガイドさんから、次の休憩は山形自動車道を下りる直前の月山湖PAで、そこを過ぎると山道をくねくね走ることになるので、お昼ごはんはなるべくこの間に食べてくださいというアナウンスが入った。
すでにお腹が空いて、持ってきたお饅頭を食べていた私には渡りに舟のアナウンスである。早速、上野駅で購入したおにぎりとおいなりさんをいただいた。
このバスは座席にテーブルがついており、お弁当でも大丈夫そうだった。明後日の昼ごはんのことを考えると有難い。
月山湖には日本一大きな噴水(112m)があるということでちょっと楽しみにしていたのに、下り線からは見ることができないらしい。残念である。
12時半過ぎに到着した月山湖PAは、お手洗いと自動販売機だけの本当にシンプルなパーキングエリアだ。私たちの乗ったバスはガラガラのところに着いたからまだ良かったけれど、この後に続いた2〜3台のバスでお手洗いは長蛇の列になった。この差はかなり大きい。
月山湖PAの気温は29度だった。バスガイドさん曰く、現在の日本最高気温が記録されるまで、最高気温は山形市で観測されていたらしい。「山形は涼しくありません」とキッパリと断言していた。
月山ICを下りた後は、本当に山道だった。
路線バスも走っている、弥陀ヶ原に向かう道は、文字通り、正真正銘の片側一車線道路である。
ところどころに待避スペースがあり、対向車が来るとどちらかが待避スペースまで下がらなければならない。バス同士のすれ違いなど、本当に紙一枚とは言わないけれどげんこつ1個分くらいの隙間ですれ違っていて、思わず車内からどよめきと拍手が沸いたくらいだ。
天気予報はなかなか正確で、月山の弥陀ヶ原湿原入口駐車場に到着した14時30分過ぎには、雨模様だった。
霧雨よりはしっかり降っている小雨、という感じである。お手洗いに行ったついでに(ここまでお水を運んできて運営しているということで、入口には使用料とも募金ともいえるお金を集める箱があった)、レインパンツとポンチョを装着する。
標高1400mくらいの場所だし、お天気も良くないし、レインウエアを装着しても暑くはない。
バス1台分のツアー客(40名弱だったと思う)に対して、ガイドさんが二人付く。添乗員さんが通路の左右で分けようとして、4人で参加している方々に「私達が分かれちゃう。」とブーイングを受けていた。それはそうだろうと思う。
ハイキングに出発する頃には小降りになっていて、ポンチョのフードは被らずに済んだし、カメラも普通に使えて有難い。
私は先に歩き出したグループの最後尾を歩いていたので、最初のうちは、第2陣のグループの先頭を歩くガイドさんの説明が聞こえていたけれど、そのうち、あっという間に引き離してしまった。
そうなると、ガイドさんの説明はほとんど聞くことができない。やはり20名に対して一人のガイドさんでは足りないと思う。
例えば、立ち止まって説明するときに、20人の先頭にいるガイドさんの説明を最後尾で聞くことはまず無理だし、仮に声が聞こえても、説明しているお花は高山植物らしく奥ゆかしい小ささなので、どのお花の説明なのか知ることは難しい。
ガイドさんは、途中で1回、真ん中から後ろにいた人を前に呼び寄せたけれど、その1回だけだったし、多分、ほとんど同じ方がガイドさんにぴったり張り付く格好になっていたと思う。説明したいお花を通り過ぎてから列を止め、自分は引き返して全員の真ん中辺りで説明してくれればいいのになぁと思う。
そんな訳で、お花の名前や特徴はよく判らないけれど、「多分このお花の説明をしていた」と見当を付けて撮ったお花の写真たちである。
とりあえず、私が名前を知っていたお花は、ニッコウキスゲとミズバショウ、ワタスゲくらいだった。情けない限りである。
ガイドさんによると、7月の「月山(がっさん)」は「ガス山」で、ほとんど毎日のようにガスっている日が続くそうだ。
晴天は8月に入らないと望めないらしい。
しかし、8月に入って晴天が続くと気温が上がり、お花たちは次々に萎れていってしまうという。
晴れた月山で高山植物を楽しむには、7月の稀な晴天を狙うか、8月に入った途端のまだお花が萎れていない短期間を狙うか、どちらかしかないという。なかなか難しい選択肢である。
バスを降りたときには落ちていた雨も上がり、最初のうちは濃かったガスも次第に薄れ、ほんの一部だけ青空が覗く。
さらにお天気が良ければ弥陀ヶ原から鳥海山も望めるそうだ。しかし、今日のところは、空のほとんどは雲に覆われ、全く無謀な望みである。
後になって考えてみると、森や林がある訳ではない湿原なので、標高1400mとはいえ、ここで晴れていたら相当に暑かったと思われる。
ガイドさんは「どうしても見せたいものがある」と言って、ものすごい勢いで歩いて行く。木道が続いているし、ほとんどアップダウンはないし、私が写真を撮りつつスポーツサンダルで追いつけるくらいの速さで、息が切れるというほどではないけれど、「のんびりハイキング」という感じではない。
ガイドさんが「どうしても見せたかった」というお花が、これだけは名前を覚えている「オゼコウホネ」だった。尾瀬とここでしか咲いていないらしい。
池の中から5cmくらいすっと伸びた茎の先に黄色い小さいお花が一つだけ咲いている。黄色いお花の中に赤く見えているのが「咲いたばかりのお嬢さん」のお花で、1日たつとその赤みは消えてしまう。
その木道は行き止まりになっていて、ここだけ監視兼制止するための人がいる。パラソルの下に椅子を据え、長期戦の構えである。
彼の奥にはもう少し大きな池が見え、そちらでもっとたくさんのオゼコウホネが咲いているのが遠望できる。そのオゼコウホネを保護するためなんだろう。
ここからは「帰り道」という感じだ。
ガイドさんは相変わらずの早足で「16時までに戻らなくては。」と飛ばす。帰り道は大体判るので、前を歩いている人を見失わないギリギリくらいの差を保ちつつ、のんびり歩くことにした。
池の中からすっと茎が伸びていて、水面で折れ曲がっている草のことなどを説明をしてもらった記憶はあるけれど、名前すら覚えていない。
戻って来たその場所は、私は神社だと思っていたけれど(お守りも売っていたし、鳥居もあったし)、正しくは「御田原参籠所」というところだったらしい。月山神社はこの小山の山頂にあるそうだ。
神社が卯年に開かれたということで、結構大きな兎の石像があった。最近、置かれたものらしい。「触るとご利益がある」と説明があったので撫でさせてもらい、「御田原参籠所」だとは知らずにお参りもした。
この場所から「月山山頂」に向けた登山道が伸びている。
バスガイドさんのお話では、出羽三山の神社は、それぞれ、開かれた干支の年にお参りすると、ご利益が大きいのだったか、三つの神社を全てお参りしたことになるのだったか、とにかく決まった干支の年にお参りするのがポイントであるらしい。
月山の場合は、卯年にお参りするといい訳だ。
急ぎに急いで16時過ぎに駐車場に戻って来たものの、もう一方の班がいない。そして、なかなか戻ってこない。
添乗員さんがもう一方の班にいるし、ツアー参加者の面々は「なかなか戻ってこないね。」と落ち着いていたけれど、ガイドさんは途中で一回も行き会わなかったし心配になったらしい。「探してくる。」と出かけて行った。
結局、20〜30分くらい遅れて第2陣が戻って来て、バスは本日の宿泊地である湯野浜温泉に向けて出発した。
お腹が空いたので、持参したお饅頭を食べる。疲れた体と空いたお腹に甘さがかなり効く。
バスは、登って来たのと同じ道を今度は下って行く。こんな夕方に登ってくる車はほとんどなく、すれ違いの心配もあまりない。バスは快調に飛ばして1時間くらいで麓まで下った。
母が「いい宿に泊まりたい」を連発し、今日の宿はランクアップを申し込んであった。
この日の宿は湯野浜温泉の亀やである。
海沿いの夕日がきれいに見える宿で、日没に間に合うといいなと思っていたところ、17時30分過ぎに到着することができた。
こちらの宿に泊まるのは満員のバスのうちで私たちを含めて3組だけらしい。近くの席の方が「申し込んだときにはもう一杯ですと言われた。」とおっしゃっていた。
添乗員さんは「分宿の場合は人数が多い宿に同宿する」というルールがあるそうで、我々とは別の宿である。
宿の門を入ると(門があることがまず凄いと思う)人工の滝があり、その奥には日本庭園がある。
ロビーも広く、まずはチェックイン時におもてなしのお菓子をいただく。夕食の時間を決め(これは3組同時である)、お部屋に案内してもらった。ついでに、ちょっと難しいかなと思いつつ、日没の時間もお聞きする。
日没が大体19時くらい、夕食を19時20分からにしてもらったので、お部屋でゆっくりしたがる母をせき立ててお風呂に向かった。
大浴場は、男性用は内風呂と露天風呂が続いているけれど、女性用は、内風呂と露天風呂が離れたところにある。
エレベーターを降りると、目の前に女性用の内風呂、隣に男性用の内風呂と露天風呂(これはつながっている)、さらにその奥に女性用の露天風呂という並びになっている。
かなりフェイントだと思う。
お風呂は空いていてゆっくり入れて気持ちよかった。
海を眺めながら入ることができ、そしていいお湯である。海辺だけあって、カルシウムナトリウム塩泉で無色無臭、柔らかいお湯だ。
そして、物凄く温まる。
夏だし、お湯の温度も高めで、とにかくあっという間に汗が吹きだして驚いた。湯冷めなどしそうもない。
結構のんびりと温泉を堪能し、夕日を期待して部屋に戻った。
しかし、雲が厚い。
無理かな、やっぱり夕日は冬か? と思いつつ、しつこく海と空を眺めていたら、雲の間からほんの少しだけ、真っ赤な太陽が顔を見せた。
これは、雲一つないお天気のときにぜひ見たかったなと思う。それでも、真っ赤な夕日(の一部分)が見られて満足した。
19時20分から3組6人が揃って夕食である。
食前酒は月山と名のついた白ワインだ。美味しい。
あと2組の方々はご夫婦で、母より少し年上のご夫婦と母より少し年下のご夫婦だ。そして、奥様もだけれど、旦那様の方が非常にお話好きだというところも共通している。
お料理を運んでくださっていたおじさまがいい色に日焼けしている。聞けば山登りをする方で、夜中までの勤務を終えてその足で月山登山口まで運転して行き、そのまま山に登って月山山頂で日の出を拝むというお話などをお聞きする。
そんなこんなで、かなりゆっくりと、おしゃべりをしつつ、夕食を楽しむ。
お品書きがあった気がするけれど、いただくのを忘れてしまったらしい。残念である。
この他に豚しゃぶなどもありつつ、海の幸中心の美味しいごはんだった。
ごはんのおともは、母は生ビール、私は白ワインである。
この夕食のお酒がいけないらしく、母は旅先での夕食後にすぐ寝てしまうことが多いけれど、今日は元気が残っているらしい。
先ほど行っていない露天風呂に出かける。
内湯の檜風呂と、露天の岩風呂がある。そして、再び貸し切り状態だ。こんな贅沢なことはない。
お湯があまりにも良すぎてあっという間に温まってしまい、長湯ができないのが惜しいところである。
22時半くらいにお部屋に戻り、来るときに買った「桃の恵み」を飲む。ネクターとは違い、さらっとした感じで甘さもくどくなく、美味しい。これはヒットである。
満足して眠りについた。
-> 月山・鳥海山旅行記2日目
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