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2013.10.06

ハイダ・グアイ旅行記3日目その1

2013年6月15日(土曜日)


フローティングキャビンから 5時前、誰かがベッドから落ちた音(推定)で目が覚め、5時過ぎ、誰かの目覚まし時計が鳴って本格的に覚醒した。
 両隣のお部屋ではすでにみなさん完全に起きていたようで、二度寝は無理と諦め、せっかく目が覚めたので、1階に降りてキャビンの外に出た。
 いい朝だ。


星野道夫の本 昨日は人気でなかなか見られなかった星野道夫の本と、昨日行ったスケダンス島のトーテムポールについて解説した本を眺めた。前者は写真がメインだし、後者は英語の本だから、本当に「眺めた」だけだ。でも、面白い。
 星野道夫がクィーンシャーロット島に来たときにもこのキャビンに泊まったそうで、この本にはサインも残されている。


 スケダンス島でディヴィッドさんが説明のときに使っていた本がこのキャビンにもあって嬉しい。どれくらい前に撮ったのか、今とは全く様子の違う、まだ家が建ち、人が暮らしていた頃の写真も載っている。
 本当に今の様子は「朽ちている」状態なのだなと思う。まだきちんとトーテムポールが立っているうちに、彫刻がはっきりと見えるうちに来たかったと思う一方で、保存しておけばよかったのにとは思わないのが我ながら不思議だ。


朝食 ポットのお湯をもらって今日持って行く水筒のお茶を作ったりしているうちに、朝食となった。8時である。
 パン、野菜入りのスクランブルエッグ、ジャーマンポテト、果物、ジュースが出される、温かい飲み物はセルフサービスで、私はコーヒーをいただいた。
 美味しい。
 そして、エリスも「いい朝ね。」と言ったほど、今日は上天気、波も穏やかだ。


 9時くらいから出発の準備を始めた。
 今日の宿であるローズハーバーにはリネン類が揃っていないので、今朝まで使っていたシーツ2枚と枕カバー1枚を枕カバーに納めて一人分、名前を書いたテープを貼って、それをビニル袋を入れた大きなバケツに詰め込んで持って行くという。
 こんな上天気だけれど、持参したレインウエアを着込んだに上にさらにレンタルのレインウエアを着て長靴を履くという身支度もなかなか大変で、出発したのは9時30分近かった。 


罠をセット ゾディアックボートを出発させてすぐ、まだフローティングキャビンも見えるところで、エリンがボートを止めた。
 何? と思っていると、エリンが縦横高さ40cm×30cm×15cmくらいの篭を放り投げていた。その篭の真ん中にはエビが好むエサが仕込まれていて、これでエビを捕まえ、明日、このキャビンに戻ってきたら夕食にそれをいただく計画だそうだ。それは楽しみである。
 エリンは次々と篭についたロープを繰り出していて、この海の深さが知れる。


 今日は、昨日とは打って変わって波も静かで、ボートも滑るように海面を進む。
 席替えして前から2番目の席に座っているので、前方もよく見える。出発して15分もしないうちに、正面に雪をいただいた山々が見えてきた。
 フォトジェニックである。
 標高は1000mそこそこの山だそうだ。それでも、ここまで緯度が高いと6月でも雪が残っているらしい。もしかしたら、根雪なのかも知れない。


あざらし 岩なのか島なのか、呼称に迷う大きさの岩に寝そべるアザラシを見たり、帆船が優雅に浮かんでいる(ただし残念ながら帆は畳まれていた)様子を見たりしながらゾディアックは進む。
 昨日に比べたらピクニックのようなものだ。


 服装は昨日とほとんど変わっていない。上半身は、長袖Tシャツに長袖シャツ、フリースにレインウエアを2枚重ね、下半身はアウトドア用パンツにレインパンツを2枚重ねている。
 ウールの帽子がうっとうしかったし日射しも強そうだったので、つばのある日よけ用の帽子に変えた。
 風を切ってボートが進んでいるときに足首が冷たかったのと長靴に水が沁みてきているような気がして、靴下を2枚重ねにする。 


トウヒの木 10時半くらいにリチャードソン・ポイントにトイレ休憩を兼ねて上陸した。
 早速、森に入った方が「そこでハクトウワシが死んでいるわよ。」とおっしゃる。私はできれば見たくないと思って近づかないことにする。ツアーメンバーの多くの方はご覧になったらしい。
 大きな米スギの木がそこかしこにある森の中に入って行く。樹齢300〜1000年と説明に幅があるのは、ゆっくり育つ木なので推測するのが難しいためらしい。
 1960年代にあった、森を伐採して木材を輸出しようという動きにハイダの人々が反対したことを契機として、ここは国立公園として指定されている。この森は「野生林」なのだ。
 また、周辺の海にはあわびもたくさんいる。残念ながら食べることは禁止されている。


試しに切ってみる リチャードソン・ポイントも、かつて人々が暮らしていた場所だ。
 木の皮が剥がされているのは、皮の内側の繊維を取りだし、布を織っていた跡である。以前に糸作り体験をしたときに、もちろん直径2cm程度のもっと細い草を使ってのことだけれど、同じように皮の内側にある繊維を取り出したことを思い出した。
 これらの木は、皮の一部を剥ぐだけならそのまま生き続けることができるというから安心である。
 また、トーテムポールを作るのに相応しい木かどうか確認するために中をくりぬいて確認した跡も残っている。スが入っていると、その木は止めて他の木を探したそうだ。
 この「検査」に合格した木の根元を焼いて、切り倒したという。


 リチャードソン・ポイント周辺の海は潮の干満の差が激しく、10mほどもあるという。
 おかげで、磯の様子が観察できて楽しい。
 カラス貝のような黒い貝は毒があって食べることはできない。説明がなかったら、ちょっと試しに食べてみたくなるような風情である。
 1時間ほども滞在し、リチャードソン・ポイントを後にした。


 20分ほどボートを走らせ、エリンがやけに磯に近づいて行くなと思っていたら、彼女はおもむろにエンジンを止め、手製だと思われる銛のようなものを取り上げた。
 ここでウニを獲るという。
 ウニ? と思って海中をじーっと見ると、ヒトデなのかウニなのか他のものなのか判然としないながら、確かにそれっぽいものが岩にへばりついている。事前の案内では「潮の引いた浅瀬でウニを獲る」かもと書いてあったけれど、随分とワイルドな方向に舵を切ったようだ。
 エリンも「初めてだから上手く行くか判らない。」と言っている。


ウニ漁 レインウエアを脱ぎ捨てた添乗員さんが参戦し、エリンがボートの操縦に専念すると俄然効率が上がった。
 「どなたか、やってみたい方はいらっしゃいますか?」と言われたけれど、ここで海中に落ちたくはないのでお任せする。大きなウニが次々と獲れてウソみたいだ。添乗員さんの腕も見る間に上がって行って、30分ほどでかなりの「大漁」となった。
 「これはお昼ごはんにいただきましょう。」と言う。凄い。
 我々のボートがウニ漁に夢中になっている間、近くの岩場には狸っぽい動物が遊びに来ていた。狸もウニやその他の海の幸を食べるのだろうか。


ヒッピーのおうちバーナビーナロー


 14時前、昼食のためにバーナビーナローに上陸した。
 国立公園に指定されるまで、ここにヒッピーの人々が住み着いていたそうで、家の跡も残っている。
 美しい場所だし、海の幸も豊富、鹿もいて食料に困らないというのが大きなポイントだったらしい。
 もちろん国立公園となった今では、漁は禁止されている。
 大きな木の下に小さな木(しかも綺麗な円錐形だ)があるのは、その鹿たちが葉を食べてしまったからだそうだ。よくも綺麗な形に食べたものである。


 ウニはボートの乗降に使っているステップを引っ繰り返して入れ物にして運んで来た。最初は、お鍋に海の水を汲んできて洗っていたけれど、それではまだるっこしい。何人かで波打ち際に行き、直接海の水で洗いながら中味を取り出した。
 添乗員さんがナイフの柄で割ってくれた殻から中味を取り出す。如何せん、慣れない作業なのでなかなか上手く行かない。「ちぎれちゃったから食べちゃおう。」とやっていたら、「わざとやってない?」と一緒にウニに取り組んでいたツアーメンバーの方に呆れ半分ニラまれてしまった。
 ウニは苦手だけれど、まさに採れたてのウニを海水の潮の味でいただくなんて極上の贅沢だ。美味しい。いくらでも食べられる。


昼食 ウニの処理も何とか終わり、昼食開始である。
 エリスが作ってくれたサンドイッチ、ポテトサラダ、クッキー、りんごジュースもあるし、私は水筒に麦茶を詰めてきている。そして、もちろん、ウニがある。
 美味しい。
 芝生の思い思いの場所に座って、景色を眺めながら美味しくいただいた。


鹿 出発前、「鹿の群れがいるよ。」と教えてもらって行ってみると、確かに遠くの方に鹿の群れがいて、そしてふと近くの林を見たらそこに鹿がぽつんといたので驚いた。
 鹿は元々この地にいたのではなく、ヨーロッパの人々が連れて来たらしい。そう聞いても、動物を近くで見られると嬉しい。
 そーっと近づき、かつ望遠レンズを使って、写真を撮る。何ともフォトジェニックな鹿だった。


 15時くらいに出発し、一路、世界遺産スカン・グアイを目指した。
 今日の宿であるローズハーバーの沖合で一旦ボートを止め、エリンが誰かと交信している。世界遺産スカン・グアイでは、一度に上陸できる人数に制限があり、その確認をしているようだ。
 ゴーサインが出て、再びエリンはボートを飛ばす。
 16時半過ぎに、上陸した。


 「ハイダ・グアイ」は、1980年代に付けられた呼称だそ。どちらかというと「クィーンシャーロット(諸)島」の方が通りがいいような気がする。星野道夫の「旅をする木」にも「クィーンシャーロット」と書かれている。
 Wikiによると、「ハイダ族の歴史を尊重し、植民地的な名称であるクイーンシャーロット諸島の代替として1980年代初期に作られた造語が「ハイダ・グワイ」という名称である」そうだ。2010年にブリティッシュ・コロンビア州政府が公式に改名する法律を成立させたという。
 ということで、旅行社のツアー名は「太古の森が息づく神秘の島 クィーンシャーロット」だけれど、この旅行記では「ハイダ・グアイ」で統一した。
 ハイダ・グアイとは「人々の島」という意味である。


上陸 ハイダ・グアイは、南北の大きな島を始めとする大小150余の島で構成されている。
 その南端にある島がスカン・グアイ(アンソニー島)である。
 スカン・グアイは1981年にユネスコ世界遺産に登録されている。その登録理由は「現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。」だ。


 その世界遺産の島に、いよいよ、上陸である。


 ハイダ・グアイ旅行記2日目その2 <- -> ハイダ・グアイ旅行記3日目その2

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