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2013.10.16

ハイダ・グアイ旅行記4日目その1

2013年6月16日(日曜日)


 この日が一番「眠れなかった日」だったかも知れない。
 2時半くらいに目が覚めてしまい、できるだけそっとお手洗いに行く。ハシゴのような階段を降りなくてはいけないし、ドアを開けて外に出なければならないし、なかなか静かに歩くのが難しい。
 外に出ると真っ暗で、満点の星空が望めた。一瞬。カメラを取りに戻って写真を撮ろうかと思ったけれど、三脚を持ってなかったので諦める。
 その代わり、しばらく夜空を見上げる。満天の星空過ぎて、北斗七星は判ったけれどカシオペアがどこにあるのかどうしても判らなかった。


 お手洗いに行く途中、本当に目の前2mくらいのところに鹿がいて驚いた。鹿は夜行性なんだろうか。ごく普通に草を食べている。
 LEDのヘッドライトで照らしてしまったけれど、全くこちらを恐れる様子はない。我関せずという感じだ。
 LEDに照らされて目が光るのがちょっと怖い。
 鹿を押しのけてお手洗いに行くこともできず、彼(彼女だったかも知れない)がゆっくりと草を食べながら移動するのを待った。


ローズハーバーゲストハウスのお部屋 今日の朝食はゆっくりめの8時からだけれど、ツアーメンバーのみなさんは始動が早い。5時半とか6時には身支度を始める気配がしていた。
 私も5時半に起きて、昨日の夜に部屋に戻ってきたときには暗くて何もかも放りっぱなしで寝てしまったので、片付けをしたり、日記を書いたり、ぼーっと窓の外を眺めたりしていた。
 このお部屋は、海に向いた窓の他に天窓がある。流石に星は見えなかったけれど、明るい光が差し込んできてなかなか居心地が良かった。


朝食スーザン 朝食はフルーツパンケーキだった。
 昨夜見せてもらった、自転車を改造した粉ひき機で碾いた粉で焼いたパンケーキは、少しぽそぽそしているのにしっとりしていて美味しい。スーザンが焼いてくれるパンケーキにフルーツを載せ、ヨーグルトをかけて頂く。
 美味しかったので、この半分のサイズのパンケーキをもう1枚焼いて貰っておかわりをした。


 朝食をいただいているときに、スーザンに頼んで、ゴッヅさんが出しているCDを買った。
 確か、昨日の夕食のときにもかけられていたと思う。ゴッヅさんの自宅を兼ねたゲストハウスに泊まった男性陣によると、コンピューターや楽器などが装備されていたらしい。
 2枚あってどっちにしようか迷った末、「新しい方」にした。新しいといっても2005年に出されたCDで、タイトルはTouching the Place of Wonder、20ドルである。
 ボートでローズハーバーを出発した後で、「ゴッヅさんにサインして貰えばよかった!」と思いついた。後の祭りである。


 ところで、この日の朝、起きたら全身筋肉痛だった。
 筋肉痛になるようなことは何もしていないのにどうしてだろう。多少は歩いているけれど、大した距離でも時間でもないし、上り下りがあった訳でもない。そもそも「足」ではなく「全身」だ。しかも、他の方々は全く筋肉痛になどなっていないとおっしゃる。
 朝食の後、あーでもないこーでもないと言い合って、やっと原因らしきものが判明した。
 昨日、ボートの乗り降りの際に何となくボートを引っ張って動かないようにがんばってしまった結果に違いない。そう叫んだせいか、この日も次の日も、男性陣が様々にサポートしてくれるようになり、私が一番若いのにすみませんと思った。


 ボートで出発する前、ローズハーバーの森を散策した。エリンは「長靴を履いた方がいい。」と言い、スーザンは「普通の靴で大丈夫!」と太鼓判を押す。歩きやすさを優先し、ツアーメンバーはみな、ハイキングシューズで出発した。
 近くだし、森の中だし、お天気はいいし、レインウエアを装着する必要はないけれど、何故か全員がレインウエアを着ているのが可笑しい。
 9時過ぎ、エリンの先導でゲストハウスの裏手の森に出発した。


深い森 出発して5分も歩かないうちにこんなに深い森に入っていることに驚く。
 ローズハーバーは元々が捕鯨基地だったためか、この場所は国立公園ではなく、人が唯一住める場所となっている。ゴッヅやスーザンが拓いたり手入れをしたりしていない場所は、こうしてすぐ森になってしまうのだと思う。
 豊か、かつハードな暮らしだ。


 森の中をのんびりと歩いた。
 今までで一番「道がない」森のような気がする。これまでは、結構はっきりと「ここが道だ」という場所を歩いたけれど、ここは「何となくここが道っぽいけど、コケも生えているし木が塞いでいるところもある」という感じだ。
 10分くらいで、作りかけのカヌーが置き去りにされた場所に到着した。


作りかけのカヌー こういうものを見ると、つい上の方に登りたくなってしまう。説明もそこそこにぐるっと回り、作りかけのカヌーの上の突端まで行ってみた。
 どうして森の中でカヌーを作っているかといえば、まず倒してくりぬくところまで作業をしてから運べば軽いからだという。海辺まで運んだら水を入れ、焼け石を入れて水蒸気を発生させることで、くりぬいた部分がさらに開かれ、さらに密になった外側から水がしみ込まなくなる。
 何だかお祖母ちゃんの知恵袋みたいな話である。
 ハイダの人々が、このただくりぬいただけのカヌーとオールだけでペルーにまで行ったという記録も残っているそうだ。驚きである。


 帰り道が判らなくなって、乾いていると思い込んだ苔の中に入ったら靴が泥まみれになったりしながら、10時前にゲストハウス前に戻った。
 身支度をして荷物を積み込んだら出発である。


お花畑 ボートを待つ間、ツアーメンバーのお一方が「この花は綺麗だね。」とスーザンに声をかけたら、スーザンが食堂の奥にあるお花畑に案内してくれた。
 ボートの様子を見て、準備に時間がかかりそうなことを見定めて、私も一緒にお邪魔させていただく。
 食堂の奥は畑になっていて、お花ももちろん咲いているし、野菜も育てられている。ビニルハウスを作って、イチゴの苗やトウモロコシも育てていると言う。
 昨日の夕食でいただいたミントティーのミントも、この畑で栽培したそうだ。
 もっとここでゆっくりしたかった。


凪いだ海 10時半、ローズハーバーを出発した。
 今日もいいお天気だ。
 レンタルのレインウエアを着てスーザンのお花畑を見せてもらっているとき、暑くて暑くて汗をだらだら流していたら、「あと少しの辛抱だ、ボートに乗ったら寒いんだから。」と半袖のゴッヅとスーザンに言われたくらいの気候だ。
 これだけのお天気でこんなに凪いだ海を進んでいるのに、確かにボートが動き出した途端、涼しくなって汗が止まった。
 慣れてきたつもりでも、生身に時速60kmの風は相当にキツイ。


ガルシン・ロック 20分くらい走ったところでエリンがボートを止めた。
 ガルシン・ロックと呼ばれる岩場で、アザラシやアシカ(私には相変わらず区別がつかない)が生息している場所だという。一昨日に立ち寄ったリーフ島周辺は波が荒く、なかなか観察も難しかったので、今日はこちらにボートを向けてくれた。
 何というか、「獣の臭い」がする。
 そして、威嚇しようというのか、唸り声のような何ともいえない音を立てている。
 いかにも野生動物の住処という感じがした。


イケダ湾 随分と深く入り江に入って行くなぁと思っていたら、そこは「イケダ湾」と日本人の名前のついた入り江だった。イケダアリチカという日本人がここで銅を発見し、採掘をしていたことからその名がついたという。
 1906年に開かれた銅山では、180人の日本人が働いていたという記録も残っている。1912年にカナダ人にその権利を譲って、イケダさんはどこへ行ってしまったのだろう。
 他にもハイダ・グアイに鉱山を探しに来た人がいたけれど、イケダ氏はその中でも最初の「成功者」だという。
 何だか凄い。


お墓瀬戸物のカケラ 12時半くらいに到着したガジェッドウェイ湾で上陸した。
 1910年、ここで日本資本の鮑の缶詰工場が作られ、100人もの日本人が働いていたという。エリンも私たちが日本人だからここへ連れて来てくれたのだろう。
 日本的な瀬戸物のカケラがたくさん波打ち際に落ちていて、いかにも生活の跡という感じだ。


 1915年、経営者はカナダ人でなければならないと決めたカナダ政府の命令で工場が閉鎖され、日本人は立ち去る。
 しかし、1913年に亡くなった工場主の奥様のお墓が残されていて、エリンは少し森を入ったところにある彼女のお墓に案内してくれた。


 鮑工場が撤退した跡もこの地ではサーモンの工場が建てられるなどしていたのでその方々がお墓を建てたのではないか、この奥様が鮑工場撤退後お一人だけ残ったからお墓も残されているのではないかなどと、添乗員さんの通訳も錯綜していて、工場主の奥様のお墓だけがここに遺された理由はよく判らない。
 ツアーメンバーのうちお三方が、それぞれ故人の冥福を祈ってお経をあげていた。


 余りにもしっかりしていてタフなのですっかり忘れていたけれど、エリンは若い女の子で、お経をあげている様子を見守りながら泣きそうになっているのを見て、純真なんだなぁとオバサンの感想が浮かんだ。
 エリンは、あとで、「ここには何度か来ているけれど、こうやって彼女の冥福を祈ってくれた人は初めてで、自分はずっと彼女がここに一人で遺されてしまったことが気になっていたので、こうやってお祈りをしてもらえて嬉しい。」と語っていた。


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