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2014.10.13

北斗星旅行記1日目その2

2014年10月3日(金曜日)


 北海道伝統美術工芸村までの送迎バスは14時に旭川ワシントンホテル前を出る。駅からワシントンホテルが見えたので余裕だと思っていたら、何と、駅から見えるワシントンホテルは「藤田ワシントンホテル」で、旭川ワシントンホテルは少し離れたところにあるらしい。
 慌てて探しまくり、何とか14時少し前にバスを見つけることができた。
 私が乗り込んだら出発したから、お待たせしてしまっていたようだ。申し訳ない。


雪の美術館 10分くらいでバスは北海道伝統美術工芸村に到着した。運転手さんに「帰りのバスには乗らないの?」と聞かれた。残念ながら、優佳良織体験を申し込んであるので、帰りの最終15時40分発の送迎バスには間に合わない。
 体験は15時から申し込んであり、その前に雪の美術館か国際染織美術館かどちらか一方だけなら見学する時間がある。ちょっと考えて、雪の美術館に向かった。


雪の美術館ロビー雪の美術館螺旋階段 雪の美術館では、館内の装飾がいずれも雪をモチーフとしているそうだ。
 ロビーは白で統一され、壁には優佳良織のタペストリーが飾られている。雪の結晶のモチーフも随所で使われている。
 螺旋階段も六角形になっていて雪の結晶をイメージさせる。階段の途中にも優佳良織の小さなタペストリーが飾られていた。
 いかにも女の子が好きそうな意匠である。ここ雪の美術館では結婚式もできるらしい。


氷の芸術氷の芸術 階段を降りると、マイナス15度に冷やされた中で氷の芸術が眠っていた。
 偶然できあがったものではなく、デザイン画を描き、それに基いて作られたという。
 部屋の温度は15度で、温度差30度でも曇らないガラスは特別製だ。しかし、ガラスの向こうはマイナス15度の世界な訳で、そこはことなく冷気が漂い出しているような気がする。
 寒い。
 でも、一切の色を廃した白い氷の世界は上品で好ましい。


雪の結晶の部屋 雪の結晶の写真で飾られた部屋は写真撮影スポットになっていて、次々と若い女の子たちがやってきては写真を撮っていた。
 「アナと雪の女王」のイメージのお部屋としてちょっとした有名スポットになっているらしい。
 飛行機の小さなスクリーンでしか見ていないこともあって、私は今ひとつこの「アナと雪の女王のイメージ」がピンと来なかったけれど、フォトジェニックであることは間違いない。
 続いて、雪に関するお勉強ビデオが見られるお部屋があり、ミニシアターでは雪に関する映像が流れている。


ホール あまり綺麗に写真が撮れなかったけれど、地下の一番奥にはチャペルとしても使えそうなホールがあり、天井には大きな青空の油絵が描かれていた。
 「北の空」というタイトルのこの絵は2万8000号だそうだ。想像もつかない大きさである。
 ホールを囲むように、スーベニアショップやカフェ、写真館などが並んでいる。写真館では、ドレスを選んで「お姫様」な写真を撮ってもらえる。女の子は好きそうだよなぁと思う。
 時間があったらこちらでランチかお茶でもと思っていたけれど、そんな余裕はどこにもなかった。


優佳良織の雪だるま 15時に優佳良織工芸館に行き、受付をお願いして体験料を支払う。
 工芸館のロビーに機織り機が一台置かれていて、まさかここで体験する訳じゃないよねと思っていると、担当の方がお迎えに来てくださった。体験は、別の建物(優佳良織を実際に制作している建物)で行われる。
 雨がまた強くなっていたのでお話を聞くと、ここ数日、旭川は「晴れ、突然にわか雨」というお天気だったらしい。そして、今日明日で来た私は正しく「雨をめがけて」来たようなものだということも、また本当らしい。


体験教室 3階にある教室に入ると、そこには体験用の織機がずらっと並べられていた。
 50台くらいある。壮観である。
 そして、それぞれに異なる色の縦糸がすでにセットされていて、好きな織機(縦糸)を選んでくださいと言われる。
 優柔不断な私にはかなりの難問だけれど、担当の方(普段は織り子さんをしていらっしゃる)は、あっさりと「みなさんすぐに決められますよ。」とおっしゃる。
 オレンジ系とで迷った末、生成りっぽい白を基調にピンクなど何色かまざった糸がセットされている織機を選んだ。


織始め 織り始めの生成りの横糸は1cmくらいすでに織られていて、その続きから始める。
 初心者の私は、基本、平織りで、左から横糸(いわゆる「杼」だ。体験なのでそこまで立派なものではない)を入れるときは1と3と書かれたペダルを押し、右から横糸を入れるときは2と4と書かれたペダルを押す。その繰り返しだ。
 横糸は、端っこの折り返しのところは丁寧に指で押さえ、そこから斜めに伸ばして筬で奥から手前に向けて押さえるのがポイントである。


 「派手に、クレージーキルトみたいに」と思ってまず最初の色替えで赤とピンクを組み合わせた糸を選んだ。
 色を変えるときには、前に織っていた横糸を1/3くらいだけ通してあとは上へ抜き、次の糸を同じ向きに端っこから斜めに入れて、筬で押さえる。それだけでほつれてこないから不思議だ。
 この2番目に入れた赤い糸がやけに派手に思えて、そこから先は地味に押さえる。


作成途中 せっかくならたくさん色替えをしようとか、できるだけ丁寧にやろうとか、そんなことを考えつつゆっくりゆっくり織っていたら、長さ15cmほどのミニセンターができあがるまでに1時間近くかかった。流石にここまでゆっくり作業をすると肩こりにもならない。
 左右対称にする場合、どの糸を使ったのか判らなくならないように、糸を切らずにそのままに置いておくのがポイントだ。
 最後は生成りの糸で端っこをかがるようにし、織機からハサミで切り離す。
 アイロンをかけて完成だ。


 織りながらお話をお聞きしたところによると、プロが織るときには締切があるし、製図があるし、ほとんど鬼気迫るようにして織るらしい。優佳良織は全て(毛糸を紡ぎ、染め、織り、製品にするまで)手作りで、かつ、すべて分業体制だそうだ。意外とシステマティックだなぁと思う。


 地味になったなぁ、もっと派手派手にするつもりだったのにと呟いていたら、先生から、「これは私は上品と言いますね。」と言っていただけた。ありがとうございます、と思う。
 この体験をするために大洗からフェリーで北海道に来て、1時間半の体験後、そのままフェリーでトンボ帰りをした若い女性もいたそうだ。ある種の聖地になっているのかしらと思う。


完成品 高校生などは、もの凄い勢いと集中力であっという間に織り上げてしまうらしい。
 「これだけ丁寧にやれば綺麗に仕上がるわね。」とおっしゃっていたのは、多分、前半部分にアクセントがあって、言い換えると「随分トロかったわね。」ということだろう。申し訳ない。
 しかし、ゆっくり作業した甲斐があって、前に織の体験教室に行ったときは端っこの処理が甘くて浮いてしまい、気になっていたけれど、今回はそんなこともなく綺麗に仕上がった。満足である。


 16時過ぎに体験が終わり、優佳良織工芸館に戻って見学する。体験料に工芸館の入場料も含まれている。
 工芸館には、ほとんど「絵」のような作品がたくさん飾られている。
 タペストリーもあれば、お洋服に仕立てられているものもある。図柄としては、伝統的な紋様っぽいものあり、一枚の絵のように仕立てられたものあり(ミズバショウや、白鳥、流氷などが織り込まれている)、バラエティ豊かだ。
 中でも、薬師寺に納められたという幟が圧巻で、本当に大迫力である。
 展示数はそれほど多くないけれど、ゆっくり、ガラスなしで見られて良かった。
 糸を紡ぐ機械や、織機、毛糸などが展示されているのも面白い。


 工芸館には販売室も併設されていた。興味はあるものの、如何せんお高い。
 早々に退散し、受付で高砂台というバス停16時58分発のバスがあると教えてもらい、そのバスで駅に戻ることにした。雨がかなり強く降っていたので、レインパンツを履き、バス停で待つことを考えてダウンジャケットを羽織って歩き始める。
 ところが、バス停に到着してみると、時刻表に16時58分というバスが載っていなかった。うーん、これだと、結構な雨の中20分以上待つことになるなぁと思っていたら、17時前にちゃんとバスがやってきた。
 未だにどういうことだったのかよく判らない。


 一条7丁目というバス停が旭川駅最寄りだと運転手さんに教えてもらい、駅に戻った。
 18時15分発の電車まで時間があったので、友人に北海道土産を送り、妹と甥っ子へのプレゼントを探す。
 構内のカフェでお茶をしようかとも思っていたものの、お土産について考え始めるとなかなか厄介で、あっという間に1時間が過ぎた。
 上川行きの1両編成の電車は、高校生で一杯だった。通学電車なのだろう。大体30分くらいかかることは調べてあって、ここで乗り過ごしたらどうにもならないと、かなり緊張して電車に揺られた。


 当麻駅に着くと、本日の宿であるいちいの宿の方がお迎えに来てくださっていた。駅から宿までは車ですぐである。
 先にお風呂で温まりますかという質問に「とってもお腹が空いています!」と即答し、すぐにお食事にしていただいた。


前菜お刺身


 この日は、他に若いご夫婦が2組泊まっていたようだ。
 一組のご夫婦はだいぶ夕食が進んでいて、もう一組の方とほぼ同時のスタートになった。
 前菜の牡丹海老も、お刺身も美味しい。ホッキ貝は冷凍ではなく生だという。そう言われると歯触りが違うような気がする。我ながら単純だ。
 前菜の付け合わせのほおずきが甘酸っぱく、意外な美味しさに驚いた。
 ご主人お勧めのイタリアワインの白とよく合っている。


ビーフシチュー パンをくりぬいてカニのクリームグラタンを入れたお料理が出て、黒毛和牛のビーフシチューが続いた。
 このお肉が本当に柔らかくてびっくりである。
 ご主人曰く「シチューにするようなお肉じゃない」そうだけれど、そのお肉を5時間かけて大鍋で煮込んだというから、美味しいに決まっている。


天ぷらごはんとお味噌汁


 ここで和風に変わって熱々の天ぷらが出てきて(カニと海老と南瓜だった)、じゃこと野沢菜のごはんとカニの味噌汁と続く。
 お味噌汁にはインカのめざめというジャガイモが入っていて、サツマイモかもという感じの甘さで驚く。
 ごはんの量もちょうど良くて、ペロリと平らげた。我ながら凄い食欲である。


 デザートはもちろん別腹で、旭山動物園と旭川空港(だったと思う)でしか食べられないというクレームブリュレが供された。
 「プリンとの違いが今ひとつ判らなくて。」と正直なことを言ってしまったら、「クレームブリュレは卵の黄身しか使わない。」と教えてくださった。なるほど、そういうことだったのかと思う。
 卵の味の濃いクレームブリュレは、プリンと違ってカラメルソースがない分、卵そのものの味がよく判る。
 食後には、コーヒーかハーブティを選べる。
 大満足の夕食だった。


 お食事のときに伺ったところ、連泊の場合、2日目の夕食は牛と豚のしゃぶしゃぶで、3日目の夕食はステーキになるらしい。
 そちらもぜひいただいてみたいものである。
 また、クレームブリュレに使った卵で明日の朝食には卵焼きを出しますというお話で、そちらも楽しみだ。


お部屋 1時間かけたお夕食後は、お部屋で一休みである。
 このお部屋が広い。
 この写真だと判らないけれど、ベッドの足もとには、もう1台横向きにベッドを置けそうな空間がある。
 薔薇の生花が飾ってあり、ソファセットもあって快適だ。アジア大会の男子バレーボール決勝をテレビで見ながら、ソファセットに陣取って絵はがきを書いた。


 バレーボールは残念ながら負けてしまい、その負けを見届けてからお風呂に行った。
 こちらの宿は温泉ではない代わり、薔薇風呂が「売り」である。入浴剤の入った濃いめのピンクのお湯に、薔薇の花が60〜70輪も浮かべてある。
 このお風呂に貸し切り状態で浸かれるなんて優雅だ。
 露天風呂もあり、こちらは緑茶の湯になっているらしいけれど、暗くて判らない。空には雲が広がって星は見えなかったけれど、雨は降っておらず、このまま明日までお天気が持ってくれればなぁと思う。
 1時間近く、薔薇のお風呂を堪能した。


サッポロクラシック 多分、飲む機会は今しかなかろうと、廊下にあった自動販売機でサッポロクラシックを購入して、お部屋で飲んだ。
 前は、「生ビールの缶ビールって変だろう!」と思っていたけれど、少し前にキリンビールの工場見学に行ったとき、「生」というのは酵母による発酵を止めるための加熱処理をしていないという意味だと教わった。だから、缶ビールの生ビールももちろん「あり」である。
 でも、正直に言って、味の違いはよく判らない。
 味の違いはよく判らないけれど、流石にお風呂上がりのビールの効きはよく、朝が早かったこともあって、23時に就寝した。


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