能登旅行記2日目その1
2015年8月29日(土曜日)
6時半と6時45分に母と私でそれぞれ目覚ましをかけ、その助けを借りて起き出した。
雨音がしていることは夢うつつに聞こえていて、外を見ると結構な降りになっていた。
7時過ぎに大浴場に行くと、昨夜とは違って先客がいらした。それでも3人だから、のんびりしたものだ。露天風呂に屋根がついていたので、早々に露天に出て、朝風呂を楽しむ。
朝食は8時にお願いしてあった。
フロント横の、「レストラン」というよりは「食堂」という風情のお部屋でいただく。
和食の「旅館の朝ごはん」といったメニューだ。どうして旅先で和食の朝ごはんをいただくとご飯をお代わりしたくなるんだろうと思う。「ちょっとだけ。」と言いつつ、今回もおかわりした。
お部屋に戻って出かける支度をし、9時にチェックアウトする。
昨夜のビール代の支払いと、あとロビーにあった売店で能登海洋深層水から作ったという「九十九塩」と、支配人さんお勧めの宗玄の純米生酒を購入し、助成金をしっかり活用させていただいた。
宿の車で穴水駅まで送っていただけるのが有り難い。
チェックアウト後、すぐに出発である。穴水に近づくにつれ、空に晴れ間が見え、道路が乾いて来るのが嬉しい。
能登の家々の瓦は、もうほとんど全てと言っていいくらい、黒くつやつや光っている。わが家の辺りでは、すでに「瓦屋根の家」自体がほとんどないので、それだけで「原風景」という感じがする。
何故黒いのかは諸説あり、中では「雪が溶けやすいように」という説が有力らしい。
そして、大抵の家の屋根には「雪止め」があるけれど、能登でも特に雪が多い地方では、貯まってから雪が落ちたら危ないので、わざと「雪止め」を付けないというお話だった。
ホテルのときんぷらで先ほど「九十九塩」を買った話をしたところ、つい最近まで、NHK朝の連続テレビ小説「まれ」にも登場した、揚げ浜式製塩の能登のはま塩も売店に置いてあったという。
それが、ザ! 鉄腕DASH!!の「世界一うまいラーメン作れるか」で取り上げられて以降、大人気となり、とても生産が追いつかずに仕入れることができなくなってしまっているらしい。
「連続テレビ小説の影響ではない」というところに時代を感じるなぁとしみじみする。
食べ物の話つながり、珠洲市つながりで、二三味珈琲の話にもなった。
「昨日カフェに行ったらお休みだったんです!」と言ったら、「言ってくれたら持ってきたのに。」とおっしゃる。支配人さんも二三味珈琲のファンで、お休み前にお宅に買いだめしてあったという。
うーん。惜しいことをした。
他のお店の珈琲はもう飲めない、というくらいお気に入りだとおっしゃる。
10時くらいに穴水駅に到着した。
待ち時間が長くなってはと、途中、ゆっくりめに走って時間調節をしてくださっていたようだ。本当に有り難い。
穴水駅には、遠藤関の記念館があるという。
能登半島の特に穴水町はお相撲の盛んな地域で、町営の相撲場もある。そんなことは知らなかったよと驚いた。
駅の窓口で、のと里山里海号の切符を引き取る。
10時47分発なので、穴水駅のお隣に2015年3月にオープンしたばかりだという穴水町物産館 四季彩々に入って色々と見てまわった。
ひばの木を使った入浴剤(ひばの木を乾かしてあって、それを入浴剤としてお風呂に入れてください、という感じ)と、絵はがきを購入した。
ホームに出ると、すでにのと里山里海号が入線していた。
隣には、マジンガーZの電車もいる。マジンガーZの作者である永井豪が輪島の出身で、のと里山鉄道ではラッピング電車を走らせている。
やけに「オタク」っぽい男性がホームをうろうろしているなと思っていたら、さらに向こうにきらきらした女の子たちが描かれたラッピング電車があった。
そちらは(後で調べたところによると)、2011年に日本テレビで放映されていた「花咲くいろは」というアニメのキャラクターだった。このアニメに登場した駅のモデルがのと里山鉄道の西岸駅で、能登まるごとタイアップ、みたいなアニメ作品だったらしい。
ホームをうろうろしていたら、ちょうどマジンガーZが運転席(ではないけど)にいるような写真が撮れた。何だか嬉しい。
のと里山里海号の前では、地元の子ども達が金色のポンポンを持って、歓迎+送迎の踊りを踊ったり歌を歌ったりしてくれていて、その前を通って電車に乗り込むのが若干気恥ずかしい。
後で聞いたところによると、お休みの日も両親が働いているお子さんたちの学童保育だったようで、里山里海号でガイドを務めていた方の息子さんもそこにいたらしい。
この日ののと里山里海号の乗客は、我々二人と、家族連れ(といってもみなさん年配の方だ)の3人と、二組だけだった。
アテンダントとして乗車している方々の方が多いくらいだ。ちょっと心配になる。
少し前に発車したマジンガーZの車両は、ツアー客だと思われる方々でほぼ満員だったので、路線としての人気は高そうだけどなぁと思う。
お隣に座った相客の方は、夏休み限定で全コースで販売しますという辻口博啓プロデュースのスイーツを食していた。美味しそうだ。しかし、母と私のお腹にはとても入りそうになく、カウンターで珈琲だけ買っていただいた。
発車してすぐ「手作りでイルミネーションを施しました」というトンネルを通過する。「ようこそ」といった文字が作られていて、ほのぼのとする。
少し走ると海が見えてくる。散々迷った末に海側の窓に向いた席を予約したので、海がよく見え、景色がよく見え、そして暑い。
緑の向こうに海が見えたり、黒い屋根瓦の家々の向こうに屋根が見えたり、若干くすんでいつつも、青い空と青い海が嬉しい。
走り始めてからそれほど時間がたったとは思えないところ、「第一のビューポイントです」と電車が減速した。
ぼら待ちやぐらである。
ぼら待ちやぐらは、このやぐらの上で終日、ぼらの群れを見張って網をたぐるという漁法のためのもので、最盛期には穴水町内に40基を超えるやぐらが立てられていたそうだ。
1996年秋を最後に、この漁法を行う漁師はいなくなり、今ではおばあさんを模した人形がやぐらの上に人がいる。ガイドさん曰く「穴水で一番働きもののおばあさん」である。
こんなに陸に近いところにあって、ぼらの群れが海岸まで来たということなのか、遠くまで見ることができたということなのか、ちょっと不思議に思う。
次の見どころは、能登鹿島駅である。
別名「能登さくら駅」とも呼ばれていて、駅の両側に桜の木が植えられている。しかも、かなり太い「年代物」の桜の木だ。
季節になると桜のトンネルができてそれは綺麗な景色になるらしい。
能登鹿島駅を過ぎると、海の向こうに能登半島と能登島を結ぶツインブリッジのとが見えてくる。
能登島と能登半島は2本の橋で結ばれており、2本目の橋がかかるまでは橋の通行は有料だったらしい。それでは能登島で暮らしている人の負担が大きすぎるだろうと、思わずガイドさんの説明にツッコミを入れたくなった。
深浦漁港に達する少し前に、もう一つのビュースポットがあった。
田んぼがあり、その向こうの海に筏が並んでいるのが見える。
ちょっと記憶が怪しいけれど、確か牡蠣棚だという説明だったと思う。能登半島で牡蠣の養殖が盛んだなんて知らなかった。ちょっと驚く。
確かにこれだけ島や半島に囲まれていたら海は穏やかだし、養殖漁業に向いているだろうと思う。
最後のビュースポットが深浦漁港である。
曰く「昔ながらの漁港」である。漁に出ているのか、それとも漁師さんがもう少なくなっているのか、船が1艘しか見えないのがちょっと寂しい。
黒く光る屋根瓦の乗った家が並び、深く切れ込んだ海の青緑色が綺麗だ。
漁港を俯瞰する景色は、能登鉄道からしか見ることができない。まさに「里山里海」という景色だなぁと思う。
のと里山里海号は、穴水駅、和倉駅、七尾駅でのみ乗り降りすることができる。そして、この他に1ヶ所だけ停まり、ホームに降りることができる。
それが能登中島駅である。
能登中島駅には、日本に2両しか残っていないという郵便車が展示され、中に入ることができる。
今の郵便物は車や飛行機で輸送されているけれど、その昔は、鉄道がその多くを輸送していたらしい。
「かつて」といっても、能登中島駅に保存されている「オユ10 2565」という車両は、1957年から1971年の間に72両が製造され、1984年頃まで使われている。
郵便車は、郵便を運ぶだけではなく、車内で区分作業ができるようになっていたことから、「走る郵便局」と呼ばれたという。
のと里山里海号の見学スポットになっていて、我々が行ったときには「ふるさと鉄道保存協会」の方が色々と説明もしてくださった。
年2回の一般公開を逃すと、のと里山里海号に乗らずに見学するのは結構難しいのかも知れない。
また、郵便車両内には記念スタンプが置かれ、郵便車のすぐ外には昔懐かしい赤い丸形のポストが設置されていた。うっかり写真を撮りそびれたのがショックだ。
ここで投函すると、記念消印を押してくれる。スタッフの方によると、このポストは本物の郵便局のポストではないので、駅員の方がポストから取り出して郵便局に持ち込むらしい。
郵便を出せるようにと、のと里山里海号の車内で郵便車の写真がついた官製はがきが販売されている。5枚セットの販売で、バラ売りをしてくれないところが惜しい。
ハガキを購入したものの、10〜15分の停車時間は目一杯見学してしまい書いているヒマがない。アテンダントさんに降車の際に託すとポストに投函してもらえるのが有り難い。
記念スタンプを押し、自分宛にも1通出した。
能登中島駅の駅名看板には、「演劇ロマン駅」とも書いてある。アテンダントさんに聞くと、能登中島駅には、無名塾の拠点ともなっている能登演劇堂があるそうだ。知らなかった。
能登中島駅を過ぎると、海はほとんど見えなくなってしまう。
車内の内装など工芸品の説明が始まり、こちらも車内を見学する余裕が出てきた。
車内は、例えばパーテーションが飾り棚も兼ねていて、珠洲焼きや輪島塗りの作品が展示されている他、座席にかけられている布が能登上布(これが結構な高級品である)だったり、パーテーション自体が組子細工になっていたり、各座席にあるテーブルがヒバの木だったりする。
美術展兼物産展みたいな車内だ。
お手洗いも同じようにギャラリーみたいになっていた筈だけれど、「流石にトイレの写真を撮るのはどうだろう」と思って撮らなかったら、どんなお手洗いだったか忘れてしまった。少なくとも一見の価値があったことは確かだ。
和倉温泉駅で降りる人はおらず、乗客全員、アテンダントさんの能登弁のご挨拶を受け、七尾駅で降りた。
七尾駅到着は12時2分だ。朝ごはんをたくさんいただき、車で穴水駅まで送っていただき、その後は電車に乗っていただけなのに、どうしてちゃんとお腹が空いているのか謎である。
駅のコインロッカーにミラコロを預け、観光案内所で美味しいお寿司屋さんを聞いたところ、すし王国「能登七尾」というリーフレットが差し出された。
お腹も空いたことだしと、駅から近いのと前廻転寿司 夢市に行った。
セットメニューもオーダーすることができる回転寿司で、「地魚握りセット」を母と二人でオーダーした。
アカイカ、バイガイ、イワシ、マグロの炙り、もずく、甘海老、鰤、穴子、蟹、鯛というラインアップで、これにお味噌汁が付く。
とにかくイワシが美味しい。甘くてとろっとしていて、まぐろ顔負けである。
「まだ食べられるね。」「食べたいね。」と、回転しているお寿司ではなく、板前さんの後ろのホワイトボードを隅から隅まで読んで研究し、追加で、白エビの軍艦巻きと甘鯛をオーダーした。期待通り、美味しい。
二人で4000円ちょっとで大満足の昼食になった。
そのまま腹ごなしも兼ねて、一本杉通りを歩いた。
仙対橋から始まる一本杉通りには風情あるお店が並び、語り部がおり、それぞれのお店で体験メニューなども用意されている。
高澤ろうそく店で、お花の絵柄の手描きろうそくや、無地の和ろうそくなどいくつか購入した。父へのお土産である。
お店の2階にはろうそく作りが判る展示などもあったようで、気がつかなかったのが残念だ。
また、一本杉通りには、お醤油の専門店や、お茶を臼でひくことができるお茶屋さん、海産物とガラス工芸のギャラリーが何故か一体化しているお店などもある。
商店街の中程に「花嫁のれん館」があった。
ゴールデンウィークには、それぞれのお店やお宅にある「花嫁のれん」を外から見えるように飾って観光の目玉になっているという。
説明してもらったところでは、能登地方で、お嫁さんがお輿入れの際にのれんを持参し、嫁ぎ先の仏間の入口にかけ、そののれんをくぐることで今日から私はこの家の人間になりますと決意を見せるという儀式がある(あった)そうだ。
そういう気持ちを表すために使うものだから、1回使った切り、使われずにずっとしまい込まれる。
それでも、娘を嫁に出す実家では、「あなたの家に染まる」という意味を込めて軽い絹を使い、華やかな模様が描かれたのれんを作る。
花嫁のれん館が建設中で、完成すれば、いつでも多くの花嫁のれんを見学することができるようになるという。
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