屋久島旅行記2日目その1
2017年10月8日(日曜日)
昨日は朝が早かったし、(ハイキング程度とはいえ)運動したし、夕食のときにお酒も飲んだしで、旅先にしては珍しく寝入ってから4時くらいまで夢も見ずに眠った。
せっかく目が覚めたのでベランダに出てみたら、月光がなくなったせいか、昨夜よりもたくさんの星が見えた。オリオン座も綺麗に見える。
水平線近くに明るい星が見えて、カノープスかしらと思う。
6時過ぎに起き出して、温泉に行った。
今回の旅2回目の温泉である。
昨日1日続いていた頭痛は消えた代わりに、夕食を食べ過ぎたのかお腹の調子が今ひとつだ。
体調が良くなるよう念じながらお湯に浸かり、朝だしさくっと上がる。海が見える露天風呂が気持ちいい。
一休みして7時過ぎにレストランに行った。
旅行に出ると、やっぱり朝食にはパン食を選んでしまう。
JRホテル屋久島の朝食はなかなか豪華だ。お腹の調子を鑑み、控えめにしたつもりである。珍しく野菜サラダも作ったのは、多分、身体がビタミンを欲していたのだと思う。
グアバのジュースが美味しい。
母は牛乳を持ってきて「美味しい。」とご満悦である。
ロビーに天気予報が出ていて、最高気温が29度と書いてある。びっくりだ。
今日の出発は9時である。
ロビーに屋久島に関する本を集めたコーナーがあって、そこでガイドブックを見たり、お土産物屋さんを覗いたりしようと思い、15分前くらいにロビーに降りた。
添乗員さんに「今日、どこかポストのあるところに行きますか?」と尋ねていたら、すでに来てくださっていたガイドさんに「今、郵便局まで行っちゃった方がいいよ。10時までに投函すれば今日の船で運んで貰えるから」と言われた。
確か、昨日も行ったペイタの前に郵便局があった筈。
ついでに、ペイタが開いていたら昨日買い忘れたコーヒー豆を買おうと急いで友人への絵はがきを出しに小走りで向かう。
絵はがきは出せたけれどコーヒー豆は買えずにホテル玄関前に戻り、バスに乗り込んだ。
今日は1日、屋久島のネイチャーガイドさんがついてくれる。14人のツアーにお二人のガイドさんは贅沢だ。
バスは白谷雲水峡に向かって走り始めた。
ガイドさんによると、今日は屋久島全体の集落対抗運動会が安房で開催されている。
もの凄く盛大な運動会らしい。そして、運動会の後には大宴会が控えているらしい。
ガイドさんの奥さんは玉入れに、ご近所の80代の女性は輪っか転がしにエントリーし、お二人とも「今年で引退したい」と毎年おっしゃっているらしい。
ガイドさんは大阪(だったと思う)から移住されてきた方で、町内会等々で「しゃべることと書くことなら何でもやる」と役員を引き受けたとおっしゃるだけあって、とにかくしゃべりが上手くて可笑しい。
その楽しいおしゃべりの中に、例えば運動会などなどの島の「伝統」は、今は自分たち移住者が担っている、自分は50代後半だけれど永遠の若手だと、島の抱えている問題をさりげなく挟み込んでいる。
すらっとおっしゃっていたけれど、屋久島が世界遺産に登録されたことで、町役場の仕事が一変し、自殺者も出たのだという話も含まれていた。
屋久島が世界遺産に登録されたとき、とある大手旅行社は「ブームは3年」と見込んだそうだ。実際は今も屋久島には引きも切らずに観光客が訪れている。
それは、世界遺産効果よりも「もののけ姫」効果が大きいらしい。
今調べたら、屋久島の世界遺産登録は1993年、もののけ姫の公開は1997年で、見事なタイミングで「もののけ姫」が公開されたと言えるだろう。
屋久島の集落は、放射状に流れている川で区切られている。川は小さいものも含めると100を超える。
昔からある集落は当然「水」の確保が容易なところに作られていて、移住者が後から作った集落は、最初は水の確保が大変だったらしい。
屋久島の面積は東京23区より一回り小さいくらいだ。海岸線の0mから、九州最高峰の宮之浦岳山頂1935mまでがその面積に収まっている訳で、それは川の流れは急に決まっている。
屋久島は今は島全体で「屋久島町」だ。
合併前は、「上屋久町」と「屋久町」の2つの町で構成されていたという。そうした町名も含め、昔の地名はバス停の名前として残っていることが多いそうだ。なるほどと思う。
学校の前を通りかかれば、今、屋久島には小学校が8校、中学校が3校、高校が1校あるという話が出る。高校入試の倍率は0.7倍だ。
ホットモットの前を通りかかったときには、10月12日に開店することになっていて、屋久島で今一番「ホット」なニュースだと笑っていた。残念ながら、オヤジギャグだと判った人はいなかったっぽい。
10時頃、白谷雲水峡に到着した。
かなり手前から路上駐車の車が並んでいて、ガイドさんたちが「こんなに混雑しているのは久しぶりだ」と驚いていた。やはり連休は人出が多いらしい。
駐車場に到着したときには小雨よりはちょっと強い感じの雨が降っていて、お手洗いを済ませた後、入口脇の四阿で集合となり、一応、レインウエアの上だけ着込む。
ウエストバッグだけで歩こうかとも思ったけれど、途中でレインウエアを脱いだときのことを考え、リュックを背負って行くことにする。
入口近くにあったヒメシャラのお花に送られ、2班に分かれて出発した。
14人が6人と8人に分けられ、母と私は6人班の方だ。8人班が先に出発する。
どうやらうちの母と、父娘で参加されていたお父様がツアーメンバーの中で年齢順で1位と2位だったらしく、その二人を人数が少ない班に配置しようという添乗員さんの配慮らしい。添乗員さんもこちらの班に付いて来た。
添乗員さんと最後尾を争いつつ歩く。
最初は、川沿いの岩を登って行く。ガイドさんが歩くとおりに歩けば全く問題ない。雨に濡れていても滑ることはなく、足もとはそれほど心配ない感じだ。
ポンチョを着て足もとがよく見えなかったらしい母は、ガイドさんにポンチョの裾を縛ってもらっていた。私は結構こういうのが好きだけれど、母は、後で「ああいうところはキツイ。」と言っていた。
母はスポーツクラブにも通っているし、私よりよっぽど体力があると思っていたけれど、それはそれとして少し気をつけなければと思う。
岩の部分を登り切ってしまえば、あとは土の道を歩く。勾配もそれほどないので、のんびり歩くことができる。というよりも、のんびり歩くことができるコースを選んでいたらしい。
その頃には、雨も上がっていた。森の中に入って、枝が雨を遮ってくれているのかも知れない。
我々のグループはかなりゆっくりペースで、後ろから歩いてくる登山仕様の若者に先に行ってもらう。
改めて切り株更新の話を聞いたり、苔に触ってみたり、飛流橋まで15分をかけた。
「もののけ姫」の森が白谷雲水峡をモデルにしていることは有名で、でも実際のその場所にはかなり長く歩かないと辿り着けないらしい。
しかし、「苔の森」は短時間で回るコースでも少しだけ味わうことができる。
コースの途中、昨日お世話になったガイドさんと何度か出会って挨拶を交わす。
飛流橋からさつき吊り橋まで、案内図上の距離は僅か200mだ。
そこを10分かけて歩くって何て贅沢なんだろうと思う。
もっとも、歩いているときは「ゆっくりだな」とか「贅沢だな」とか思っていた訳ではない。普通に歩いているつもりだったから不思議だ。
深呼吸したり、見上げたり見下ろしたり、苔に触ったり、味わうべきことが多いからだろう。
さつき吊り橋は「吊り橋」という名前ではあるけれど別に揺れることなくほっとする。高所恐怖症ではないつもりだけれど、揺れる橋は相当に怖い。
歩いている内に日が射すこともあり、そうすると森の景色も、苔の表情も一変する。
ガイドさんは「曇っているときの方が写真が綺麗に写る。」と言っていたけれど、やっぱり太陽の力は偉大だよと思う。
森に入った辺りからだいぶ暑くなってきて、レインウエアはとっくに脱いでしまっている。
入口から30分強歩いたところで、二代大杉に到着した。
高さ32m、周囲4.4mだから、紀元杉よりも倍近く高く、紀元杉の半分ほどの太さということになる。
何というか、迫力がある。森の中にいるせいだろうか。
ちょうど我々のグループだけで二代大杉を独占することができ、ゆっくり色々な角度から眺め、見上げる。
根元が空洞になっているのは、「倒木更新」の証しだ。
二代大杉を堪能したら、後は「帰り道」である。
実はこのときはまだ「弥生杉」に行かないことを知らなかったので、この後で弥生杉までの木道の階段を延々と上ることになるのじゃないかと、戦々恐々としていた。
ヤクスギランドを歩いたときよりも暑く、汗をかいていて、お水が飲みたくなった。
さつき橋まで戻って、今度は吊り橋を渡る。
上から見ると、川がだいぶ削って深い峡谷になっていることが判る。
帰りは橋を渡った川の反対側を歩くらしい。
歩きながら見ると危険という判断か、バスの中でもらったコース案内図は持たないでくださいと言われており、今日のコースがどこで、あとどれくらい歩くことになるのか判っていなかった。
歩き始めてから1時間ほどで、飛流橋まで戻って来た。
橋を渡らずに真ん中まで行くと、そこから「飛流おとし」と呼ばれている滝を見ることができる。
案内してくださったネイチャーガイドさんは、あまり「名前」に拘っていなかった気がする。この「飛流おとし」という名前も、後でパンフレットを見て確認した。
この滝の高さがどれくらいあるのか、よく判らない。ネットで検索したら、40m、目測で50m、70mと色々な情報があって、これという決め手がなかった。
滝も、滝壺も、水の色が凄い。深い青緑色で、でも澄んでいる。
あまり自信はないけれど、飛流橋まで戻って来た後は、飛流歩道をあるいたのだと思う。割と長く川沿いを歩いた記憶だ。
そして、歩道の川と反対側には、苔をたくさん見ることができた。
雨上がりだからか、いつもそうなのか、苔が水滴をたくさん蓄えている。昨日のバスガイドさんのおっしゃるところの「ダイヤモンド」だ。
ガイドさんがせっかく「歩きながら見上げてコケないように」と配慮して少し離れたところから紹介してくれたヒメシャラの大きな木を、相変わらず遅れて歩いていた私は丁度真下でその説明を聞き、歩きながら見上げてコケそうになった。
マヌケである。
木肌がつるりとして明るい色をしているこの木はとにかく目立つ。
ちょっと、ティカルにあった火炎樹みたいな感じだ。
コースの最後、広場のようになっているところから、弥生杉を望んだ。
正直なところ「歩かなくていいんだ〜」「登らなくていいんだ〜」という安堵の方が大きかったような気がする。
我ながら、情けない体力だ。
遠目にも随分と白く見えて、弱っているのだなぁという感じがする。
高さ26.1mは、遠目の方が実感できる。周囲は8.1mで、紀元杉とほぼ同じ太さ、紀元杉より少し背が高い。
歩き始めてからほぼ1時間半、ガイドさん曰く「前のグループの歩きが遅かったからゆっくり歩けました、ラッキーでしたね。」という白谷雲水峡歩きが終了した。
もっともっとゆっくり歩いても良かったなぁと思う。
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