2017年10月7日(土曜日)
もはや、これが荒川橋の上流の景色なのか、下流の景色なのかすら判らなくなっているところが我ながらマヌケである。
ヤクスギランドには150分コースという「やくしまの森」を満喫できるコースもあるし、太忠岳への登山道にも繋がっている。
ヤクスギランドだけで1日かけてもいいくらいだ。
今回歩いた50分コースも、できれば2時間くらいかけて歩きたい。
荒川橋からは、オレンジの救命胴衣を着けた人達が遊んでいるところが見えて、その満喫している様子がとても羨ましかった。
こんな木を見上げたり、あんな倒木を覗き込んだりしながら、荒川橋から歩くこと5分くらいで、仏陀杉に到着した。
仏陀杉の周りにも展望デッキが作られている。
人気故にみなに根の周りを踏み固められて弱ってしまったため、展望デッキを作って守っているらしい。
仏陀杉は、樹高21.5mは紀元杉より高く、周囲8.0mは若干細い。
樹齢1800年と言われ、紀元杉よりはだいぶ若い木だ。
ごつごつでこぼことした木肌が仏様を思わせるというところから、「仏陀杉」と呼ばれるようになったという。もっとも、私にはその場でも、今写真を見ても、どの辺が「仏様を思わせる」のかよく判らない。
しかし、空洞化してしまっているのに、それでも何だか重厚さを感じさせる姿が迫力である。ちょうど、仏陀杉に着いた頃に霧が出始めていて、それで余計に「迫るもの」を感じたのかも知れない。
仏陀杉まで来れば、50分コースは折り返しである。
行きとは違う道を歩けるので、帰り道も楽しい。
ここまでほとんど他のお客さんと会うことはなかったような気がする。3連休の初日だし、飛行機も満席だったし、お客さんが少ないということはないだろうし、明日に縄文杉登山を予定して、今日は白谷雲水峡に行く人が多いのかしらと思う。
仏陀杉から5分と歩かないところに、双子杉がいた。
1本の木が別れたのかと思ったらそうではなく、一つの切り株から2本の同じくらいの太さの杉の木が「切り株更新」で育ちつつあるところらしい。
高さはそれぞれ22.7mと22.2mというから、紀元杉や仏陀杉よりも高い。しかし、やはりそこは「小杉」なので、周囲が1.8mくらいとかなり細い。
これから益々太く育つとして、いつまでも仲良く双子杉の状態でいられるのかしらとちょっと心配になった。
ヤクスギランドの出口直前、最後の見どころ(くぐりどころ)が「くぐり杉」である。
入口近くにあった「くぐり栂」と同じように、二股に分かれたところのその下を遊歩道が通り、歩くことができる。
「くぐり杉」は、小杉が倒れ込んで倒れ込まれた方と2本が融合したものである。2本の木が1本の木に融合するなんて、一体どれだけの時間がかかったのだろうと思う。
くぐり抜けた後、振り返って「くぐり杉」を撮影した。
最後にもう1回、清涼橋という吊り橋を渡り、ヤクスギランドの50分コースをちょうど1時間かけて1周した。
ヤクスギランドの入口にある「森泉」でチップ制のお手洗いを借りた。売店で絵はがきと、散々迷った末に屋久杉から作ったというペンダントを購入する。
森泉の2階は休憩所のようになっていて、ガイドさんによると、増水等で下山できなくなった修学旅行生たちがここで一晩泊まったこともあるそうだ。
朽ちた屋久杉を使った電話ボックスなどもあって、なかなかフォトジェニックだったのに、ヤクスギランドの木に当てられたのか、何故か写真を撮る気になれなかった。
無線か何かで「路線バスが上がって来る」情報が入って、14時15分の出発予定時刻になっていたけれど、しばしバス車内で待機となった。
出発しちゃってすれ違えるところを探すより、広いところで待って路線バスが通った後に降り始める方が効率的らしい。
この路線バスを待っているとき、急に雨が降り出して驚いた。我々が帰る頃になって雨が降るなんて、つくづくラッキーだ。
その後、バスは順調に走り、15時15分に本日の宿であるJRホテル屋久島に到着した。
考えたら、JRが走っていない屋久島にJRホテルがあるって不思議である。
ホテルのお部屋は3階の海側だった。
JRホテル屋久島は岬の突端に建っていて、海の見えるお部屋と、モッチョム岳が見えるお部屋と、それぞれ特徴がある。
どちらかというと海の方が好きなので、海側のお部屋で嬉しい。
暑かったのと外が見たくてベランダ側の窓を開けていたら、海風が強いので、特に夜、開けっ放しにしないようにしてくださいとホテルの方から教えていただいた。
本日の夕食は18時からで時間はたっぷりある。
お昼ごはんを早めに食べていたし、ホテルの近くにペイタというパンとケーキのお店があるとチェックしていたし、添乗員さんもバスの中でお勧めしていたので、行ってみることにした。
ホテルから歩いて5分ほどである。
入ったときにはカウンターしか空いていなかったけれど、地元の方らしいおじさんがテーブル席を譲ってくれて、眺めのいい窓際の席に着くことができた。
おじさん、ありがとう!
ショーケースにケーキが並んでいて美味しそうだったので、マロンタルトとブドウのショートケーキ、そして二人ともアイスコーヒーを頼んだ。
ショートケーキは、スポンジ部分もクリームも素朴で懐かしい感じのお味だった。アイスコーヒーともよく合う。
しばし、まったりした。
お店の方に灯台への行き方を教えていただき、折角なので海の近くまで行ってみることにした。
「こんなに暑いのに!」とか「誰も歩いていないじゃない!」と言う母を宥めつつ歩くこと数分、海が見えた。
どうして危なっかしいところというのは、こんなに景色がいいのだろうと思う。
海の色も綺麗だ。お天気がいいって素晴らしい。
波打ち際まで降りられる階段もあったけれど、これが急だし狭いし手すりもないし、手すりの代わりに鎖が付いている。何だか吸い込まれそうな気がして怖くなり、階段を1/3ほど降りたところで断念して引き返した。
17時前にホテルに戻り、早速、温泉に向かった。
ホテルの尾之間温泉はアルカリ性単純温泉で、とにかくトロっとしている。
添乗員さんもバスの中で繰り返し「化粧水みたい。」「顔をつけたくなる気持ちがよく判る。」と大絶賛していた。
柔らかいお湯だ。言い方は悪いかも知れないけれど、肌にまとわりついて離れない感じがする。
内湯と露天風呂と、両方楽しんだ。
お風呂から上がると、ちょうど夕陽が沈むところだった。
このホテルの温泉は日帰り入浴も可能で、その入口から外に出ることができる。
慌てて部屋にカメラを取りに戻ったらかなり沈んでしまっていて、何とか最後の夕陽を捉えることができた。
明日は2階のテラスから狙ってみようと思う。
私が夕陽でバタバタした分出遅れてしまい、18時10分過ぎくらいにレストランに行った。
このホテルでは、温泉もレストランも、ホテルで用意されている室内着とスリッパで行くことができるのが嬉しい。周りもみなほとんどホテルの室内着姿だから気後れすることもない。
本日の夕食は「屋久島会席」だ。
母は生ビールを、私は屋久島の三岳という焼酎の原酒を使ったモヒート(ホテルオリジナルのカクテルで、モスフォレストという名前が付けられていた)を頼んだ。
前菜は3種だ。
のぶきの佃煮
塩豚ボイル はちみつとマスタードソース
鰹の燻製とポロ葱の鉄砲和え
お造りは多分、鮪とイカだったと思う。
山葵醤油の他に、酢味噌とオリーブオイルが出されて「お好みでどうぞ」という。
オリーブオイル? と思ったけれど、要するにカルパッチョだわと思えば納得だ。意外とイカとオリーブオイルの組み合わせが美味だった。
続いて供された揚げ物は、甑島産キビナゴのフリットだ。
随分と大きなキビナゴでびっくりする。
替わり鉢は、本日のお魚(が何だったのか忘れてしまった)のポキ 泡雪仕立て カレー風味のアクセント である。
多分、お店の方に「ポキって何ですか?」と聞いて教えてもらった筈なのに思い出せない。今、検索したら、ハワイ後でお魚の切り身を指す言葉で、「魚介類の切身に、塩、醤油、食用油、海藻、香味野菜などを混ぜ込んで調味した料理を指す」そうだ。
夕食は和洋折衷のコースで、ここで突然に洋風のお料理になった。
サラダは、冬野菜のバーニャカウダだ。
バーニャカウダってソースを温めつつ食べなくても大丈夫なら家でもできそうだと思う。このソースが美味しい。
合肴というのは和食用語らしいけれど、供されたのは洋風のお料理だ。
黒豚軟骨と野菜の和風シチュー パイ包み焼きである。
パイ皮を器から上手に剥がすことができず、だいぶ残ってしまったのが実は心残りだったりする。「和風シチュー」と銘打っているだけあって、さっぱりしたシチューだった。
お肉料理の名前が凄い。
「鹿児島県産黒毛和牛 A4肉もも肉のポワレ 大根おろしソース 温野菜と舞茸の天ぷらと共に」である。
まずは、何はともあれ「お肉」である。
柔らかくて美味しい。脂っこくないのが意外だった。
天ぷらはこの後ごはん(大分県産ひとめぼれ)、お味噌汁(油揚げときのこ汁)と香の物と一緒にいただく。
母はごはんを減らしてもらい、私は通常の量を完食した。
かからん団子は、鹿児島県南部や島で作られる草餅の一種である。
それにしても、黒い。
この色に最初は恐れをなしたけれど、食べてみると確かに草餅だった。
かからん団子を濃いお茶でいただいた後、さらにコーヒーをゆっくり味わった。
母と私は1時間半くらいかけていただいたけれど、周りのテーブルではもっとゆっくり、お酒をいただきつつお食事されている方が多かった。
ツアーメンバーの皆様は、相当の酒豪揃いのようだ。
ホテルのお土産物屋さんを覗いてからお部屋に戻り、のんびりテレビなど見ながら寛ぐ。
何故か屋久島まで来て「ブラタモリ」を見ている母と私である。
私は、母が飲みきれなかったビールまでいただいて、かなり酔っ払いだ。
酔い覚ましを兼ねてベランダに出てみたら、月が綺麗で、海の上に月の光で道ができていた。ほぼ満月だわと思っていたけれど、今調べてみたら月齢16.9日だから結構欠けていたらしい。
同じホテルに2連泊という余裕もあり、かなり酔っ払いということもあり、もう1回温泉に入るのは諦めて、21時半にはベッドに入った。
そういえば、今日は4時半に起きて焦りまくるところから始まった、長い一日だった。
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