ニュージーランド旅行記4日目その2
2019年1月29日(火曜日)
ひたすら、歩きやすい「散歩道」をのんびり歩く。
道が落ち込んでいるところがところどころにある。雨が降ったら水かさが増し、川の中をじゃぶじゃぶと歩く感じになると思う。
しかし、概ねの道は、平らである程度の道幅があり、両側を木々に覆われている。
たまに、コマドリが道の真ん中に現れたりもする。
12時少し前にビッグスリップと呼ばれる、大きな土砂崩れ跡に差し掛かった。
1982年に大きな土砂崩れが起き、クリントン側がせき止められて湖が生まれた。同時に、土砂崩れで木々がなぎ倒された結果、開けた場所になったという。
昨日、かなさんは「そう思って通ると、”おぉ!”となります。」と説明してくれた。
確かに、と思う。
この辺りで、添乗員さんに追い抜かれた。
彼女は我々ツアーメンバーの前後を行ったり来たりしながら歩いている。ガイドさん達並みの体力だ。
体力のない私は、相変わらずののんびりペースでU字谷の底を歩く。
土砂崩れ跡を過ぎ、7マイルの標識を過ぎた辺りに「デッド・レイク」と呼ばれる湖がある。
というか、あった筈である。
7マイルの標識もどうやら見逃したらしいし、「鱒がいるかも知れない」と言われたその湖を見た記憶がない。
水辺を見下ろした記憶はある。これがそのデッド・レイクだろうか。
デッド・レイクは「生き物が死に絶えた」という意味ではなく、ビッグスリップで生まれたこの湖によりブナの木が枯れてしまったことからついた名である。
時折り道の両脇に立っているポールは先っぽが黄色く塗られており、かつ、その下に黄色で矢印が描かれている。
こんな分かりやすい道にどうしてこんな道しるべが立っているのかというと、この高さまで水が出ることがあり、そうなったときに「道を示す」必要があるからだと教えてもらった。
確かに、じゃぶじゃぶと川を渡ったりする必要があるかも知れないから荷物はすべてビニルに入れて防水するようにと注意があった。
それを、こういう目に見える形で注意喚起されると、「ひえぇ」という気持ちになる。
12時20分、ほぼ7.5マイル地点にあるヒレレ小屋に到着した。
ここでランチタイムだ。
ツアーメンバーのみなさんは、全員、すでに到着していたと思う。
小屋といっても、ランチを食べるスペースに壁はなく、いわゆる東屋である。そこにベンチが設えられている。
ガイドさんによるホットドリンクのサービスがあり、ミルク入りのコーヒーをお願いする。
朝作ったサンドイッチは、大きい方がハムやローストビーフ、きゅうりにチーズを入れたサンドイッチ、小さい方がイチゴジャム入りだ。
トラックとは逆側から見たヒレレ小屋は、完全に森の中である。
トラックから入り、ヒレレ小屋を通り抜けて少しぬかるんだ道を行くと、川縁まで行くことができた。
もの凄い透明度である。
この川には鰻もいるらしい。目を凝らしたけれど、残念ながら私は見ることができなかった。
このヒレレ小屋からは、ヒレレ滝を見ることができる。
見ることができる筈が、どうにも見た記憶がない。
川の水の綺麗さに目を奪われて、「滝を見ることができる」ということ自体、すっかり忘れていた。
お手洗いを済ませ(クリントン・ハットからこのヒレレ小屋までの間にもトイレが1カ所あった)、13時5分くらいに出発した。
なかなか身体が温まってこなくて、半袖シャツの上に長袖シャツを羽織る。
ツアーメンバーで一番遅い出発となった私は、添乗員さんと一緒である。
10分ほどで、8マイルを通過した。
8マイル標識を超えた辺りは緑が濃く、鳥の鳴き声がうるさいくらいに聞こえている。
アメリカから来たというイタリア系のおじさん(だと思ったけど、私より若かった可能性が高い)が動画を撮りつつその鳥の声を録音していた。
マネしたつもりが、久々に使ったデジカメの操作が上手く行かず、動画の撮影に失敗していたのは痛恨のミスである。
13時半、初めてマッキノン・パスを見ることが出来る場所に差し掛かった。
ところが、実は未だにこの景色のどこがマッキノン・パスなのか判っていない。
先ほどのヒレレ滝と同じである。
どこまでぼんやり歩いていたんだと思う。このときには添乗員さんと一緒に歩いていて、彼女に聞くこともできた筈なのに、間抜けなことこの上ない。
同時に、(勿体ないことではあるけれど)ただぼんやりとその道を歩くというのは贅沢なことだなぁと思う。
荷物を背負って歩くことがかなり不安だったけれど、モンベルのお店で根掘り葉掘り「正しい背負い方」を教えていただいた甲斐があり、意外と楽に背負い、歩いている。
途中リタイアも引き返すこともできない道を歩き始めちゃってから言うのも何だけれど、意外と歩けるもんだなぁと思う。
ここから歩いてすぐ、本当に2〜3分のところに、Hyden Lakeへの分岐がある。
かなさんに「行ってください!」と力強く指示されていたこともあり、道を左に折れる。
この分岐は、先で本道に合流するので、荷物を背負ったまま行って良いことになっている。
Hyden Lakeへの分岐を折れてから後の道筋にはお花がたくさん咲いていた。
道の両脇に黄色い小さいお花が一面に咲いているような場所もあって、若干乾き気味でありつつ歩いていて楽しい。
寄り道すべき分岐である。
戻らなくて良いというのも、体力のない私には嬉しい。
その分岐を入って5分くらい、お花を眺めながら(ついでに写真を撮りながら)歩くと、Hyden Lakeに到着した。
この湖は、大きな雪崩がこの崖の上から落ちてきて地面に穴が開き、そこに水が溜まってできた湖である。
本当に、どれだけの勢いでどれだけの量の雪が落ちてきたんだろうと思う。
そして、穴があれば普通に水が溜まって涸れないくらい、この辺りは雨が多いんだなぁと思う。
この辺りでまたイタリアのおじさんと一緒になった。
何だか英語ができない人(私のことである)との会話に慣れているなぁと思ったら、何回も仕事で日本を訪れていると言う。納得である。
何の仕事をしているのかと質問したときに考え込んだのは、どうやら「コイツ(私のことである)が判る英語の範囲でどう説明すればいいか」を悩んだかららしい。
宝石の鑑定の仕事をしていて、彼が務めている会社は「世界No.1」だと胸を張る。
日本に行ったときには、その支社で働く60人のために、材料を買い集めてティラミスを作ったと笑う。シンガポールかどこかに行くときは、社員が多すぎてとても作りきれないと言う。
日本支社のマネージャーに「ティラミスを作るからフィンガービスケットを買ってきて」と頼んだら、マネージャーはフィンガービスケットではなく、ティラミスを買ってきちゃったんだよ、と笑っていた。
何というか、素晴らしいサービス精神である。
14時に9マイル標識を1通過した。
Hyden Lakeに寄り道した分の距離は含まれていないので、1マイルに45分かかった訳ではなく、いいペースで歩けていると思う。
ちょうど、この辺りからも道の右側にクリントン川が見えた。
本当にどうしてこんな色なんだろうという色をしている。
そして、水鳥が川面を跳ねるように飛ぶ姿も見ることができた。超低空飛行である。
14時20分、プレイリー湖への分岐に到着した。
ここでは、リュックを分岐に置いて行く必要がある。
ちょうど戻ってきた方に「綺麗だったわよ。」(推定)と教えていただき、私もリュックを下ろして行ってみると、先ほどのHyden Lakeと同じように崖下に湖があり、細い滝が流れ落ちている。
この場所で、何だかいい感じの二人が寛いでいるところに出会えた。フォトジェニックな二人である。
「草原の湖」という感じがする。
プレイリー湖から戻り、14時40分に10マイル標識を通過する。
添乗員さんと合流して歩いていたら、道に(推定)ケアが登場した。
いたずら好きな鳥として、ミルフォード・トラックではよく話題に上る鳥である。
彼女のトレッキングシューズを盛んにつついて遊んでいる。
割と大きめの鳥だし、全体に茶色っぽいし、落ち着いて考えると決して可愛い鳥ではない。
それにも関わらず、現れてくれたら嬉しいし、何だか可愛く感じてしまうところが、NZマジックだ。
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