ニュージーランド旅行記5日目その1
2019年1月30日(水曜日)
確か発電機が回って灯りがつくのは6時と聞いていた。前日夜の相談の結果、5時半にそれぞれ目覚ましをセットして起き出した。
サンドイッチ作りは6時からである。それまでに懐中電灯を頼りに身支度をし、荷造りをあらかた終える。
添乗員さんお勧めのバジルソースをたっぷりパンに塗り、ハム・チーズ・キュウリ・トマトを挟んでサンドイッチの完成である。もう一つは、甘い物が欲しいと思い、イチゴジャムのサンドイッチを作った。おやつにチョコレートももらう。
朝食は、シリアルにヨーグルトをかけてアプリコットのコンポートと一緒にいただく。オレンジジュースとコーヒーを飲む。今朝もツアーメンバーの方から「バナナ、半分食べない?」と声をかけていただき、有難くいただく。
ポンポローナ・ロッジでは、マフィンとポーチドエッグが朝食に供され、自分でエッグベネディクトを作って食べられるところが売りだ。荷造り等々の手際が悪く、朝食後の出発準備に時間がかかる私はホットミールを待つ余裕がない。残念ながら見送った。
この日の天気予報は小雨である。
迷った末、半袖Tシャツ、スポーツタイツに山スカートを履く。トレッキングシューズを履き、ゲイターを付ける。
できるだけこのままで行き、雨が降ってきたらレインウエア上下を重ねる心づもりで、リュックの外ポケットに入れる。
峠越えのコースだから、もちろんストックを準備する。
雨だし大丈夫だろうと思いつつ、念のため、虫除けを付ける。
準備万端でロビーに行き、7時20分からラジオ体操だ。
ポンポローナ・ロッジにもピアノがあり、かなさんがラジオ体操のテーマを弾いてくださるのに合わせて、我々ツアーメンバーが集まって準備運動である。
今日も、2〜3人、外国の方がラジオ体操に参加してくださっていた。
基本的には「遠巻きにされている」という感じではある。
7時半に出発した。
昨日よりも「我先に」という感じで足早に出発して行く人が多かったように思う。
ロッジを出て直進すると昨日来た道に戻ってしまう。そちらの道には板を渡して通行止めになっている。
ロッジを出てすぐ右に曲がり、5分も歩くと11マイルの標識があった。
まだ雨は降っていない。
さらに10分ほど歩くと、開けた場所に出た。青空も見える。小川を流れている水は、山からの雪解け水だ。
この辺りまでは、まだ前後に歩いている人の姿を見かけたけれど、8時10分くらいに12マイルの標識を過ぎる頃には完全に一人旅になっていた。
この小川を超えて森の中に入った辺りからが「プラクティスヒル」で、足慣らしといった感じの上り下りがある。
しばらく、森の中に入ったり、川の流れる開けた場所を歩いたりといったことを繰り返す。
赤い大きなリュックを背負っているのはガイドさんで、このとき私の前を歩いていたのはアナさんだ。
今日の登りは11回ジグザグ道を歩くと言われている。己を励ますためにつづら折り11回を数えようと思っていたけれど、この「ジグザグ」の起点が今ひとつ判らずに、結局数えることはできなかった。
しかし、8時50分過ぎに13マイルの標識を過ぎた頃には、すでに道は石畳っぽい感じに変わり、徐々に登り坂になっていたと思う。
あまり水分を取らない方の私でも、9時20分くらいにミンタロ・ハットに到着した頃には、ウエストバッグに入れた220ml入りのペットボトルのお水が空になっていた。
意外と暑かったのかも知れない。
ミンタロ・ハットで標高600mくらいである。標高410mにあるポンポローナ。ロッジから200m弱登ったことになる。
お手洗い休憩を取り、小屋の中にある水道で空になったペットボトルに水を補充する。この他に500mlのペットボトルを2本満タンにして持っている。昨日、かなさんにしつこいくらいに「ミンタロ・ハットで必ずお水を補給してください。」と念を押されている。
小屋の中に入るために靴を脱いだついでに、靴下をはき直す。
5本指のシルクソックスの上に厚手のウールソックスを重ねていたら、内側の5本指ソックスが何だかよれてきて気持ち悪い。歩くときの気がかりはできるだけ少ない方が良い。
身支度を終えて「ミンタロ・ハット」看板の地点に戻ったら、道の真ん中にガイドのララちゃんがリュックをどんと置いていた。今日は彼女が殿らしい。そして、私はほぼ最後尾を歩いているようだ。
ミンタロ・ハットを出発する頃にぽつぽつと雨が降り出した。レインウエアの上を着る。レインパンツは迷った末、かなさんに相談してもっと雨が強くなったら履くことにしてリュックの外ポケットに戻す。
リュックにレインカバーをかける。
レインウエアを着るとウエストバッグが邪魔だったので、カメラとペットボトルだけレインウエアのポケットに入れて、ウエストバッグはリュックの一番上に仕舞う。
9時35分、ミンタロ・ハットを出発した。
ほぼ最後尾にいるというのに、コマドリの写真が撮りたくて何枚もシャッターを押してしまう。我ながら余裕があるのかないのかよく判らない。
コマドリは少し遠いところにいて、がんばってもかなりブレブレの写真になった。
9時50分くらいに14マイルの標識を通過した。この辺りは雨が多いところらしく、シダがうっそうと茂っている。
まだ傾斜は緩い。
クリントン川にかかる橋を渡り、何だか変わった面白い形の木が生えているところを抜ける。景色が色々と変わるのは、気分転換になって有難い。
恐らくこの辺りですでに「つづら折り」に入っていたのだと思う。Dangerなどと書いてある看板が最初に出てきたときにはとにかくびっくりした。10時過ぎくらいである。
Dangerって何? という感じである。
要するに「落石注意」ということらしい。それにしても「ここから200mは立ち止まるな」とか書かれると不安なことこの上ない。
何となく一息入れて呼吸を整え、お水を飲んでから看板を足早に通り過ぎる。
危険な箇所を抜けると「Safe stopping area」と書かれた看板が設置されていた。「Safe」の文字が燦然と輝いて見える。ほっとする。
危険箇所を通り過ぎてほっとしても、とにかくずっと登りが続く。
しんどい。息も切れるし、汗だくである。
そんなしんどい道中で、ウェカに出会えると嬉しい。
ガイドのアナちゃんがミルフォードトラックでキウイを見たことがあると言っていて、自分たちも見られやしないかと、それくらいの鳥を見るとついつい興奮してしまう。
このウェカなど、思わず見間違いしてしまいそうだ。
今回のツアーでは「キウイを見た」という人はいなかったと思う。ちょっと残念だ。
10時40分に15マイル標識を通過した。1マイルに50分かかっている。
リュックを下ろしてしまうとまた背負うのに体力を使いそうだったし、レインウエアのポケットにお水、リュックのポケットにチョコとナッツを入れている。休憩は立ち止まって立ったままお水を飲んだりチョコを食べたりしていた。
雨が降っていると座るところもない。
11時くらいに、道ばたで木の下で地面が比較的乾いた感じのところを見つけ、リュックを下ろして休憩した。ペットボトルにお水を注ぎ足し、ナッツを食べる。
見上げると、中国からきた母娘二人連れ(だと思う)の姿が見えた。
確か、ママの方は「初めてのトレッキング」と言っていて、私同様、登り坂に苦戦しているようである。
後になって考えてみると、実は峠越えのこの日が一番お花を多く見られたように思う。
雨が降っていなかったらもっとたくさん写真を撮るところだけれど、登り坂で息が切れるし、そんな余裕はなかなかない。
雨が小止みになってきて、光りが入り、真っ白で全く見えていなかった周りの景色が少しだけ見えると何だかとても嬉しくなる。
山肌から雨が滝になって流れているのが見える。
そうやって一歩一歩、悪戦苦闘しながら歩いていると、名前を呼ばれたような気がした。11時35分くらいのことである。
かなさんの声だ。
「どこ〜?」と返事を返すと、ここここと手を振ってくださって、やっと発見することができた。
どこかを痛めたらしいカズアキさんと、二人で登って来ている。
待っていたいところだけれど、待たなくても多分追いつかれるし、待っているだけの体力もない。
このとき既に、大量に汗をかいたところに、標高900mの森林限界を超えてから風に吹かれて体が冷え、相当に寒く感じていた。
雨は森の木々とレインウエアがかなり遮ってくれていたから、やはり原因は汗だったと思う。
私の汗っかきはモンベルのジオラインの想定を超えていたらしく、びっしょり濡れて乾く気配もない。
今から思えばフリースを着てしまえば良かった、「濡れた上から着たところで暖かくならない」と思い込み、「着込んでもっと汗をかいたら大変だ」という気持ちもあって、とにかく止まらずに動き続けることを選んでいた。
この辺がやはり「経験のなさ」の怖さなんだろうなと思う。風邪を引いたり具合が悪くなったりせず、本当に良かったと思う。
基本的には、森林限界を超えても周りは真っ白で景色を見ることはほとんどできなかったけれど、時々さーっと霧が晴れて、ちょっとだけ渓谷の底が見えたりした。
また、ちょっと可愛い実がなっていたり、よりみずみずしい緑を見ることができた。
自然が相手だし、そもそも雨の多いところを歩いているのだし、と自分に言い聞かせる。
中国からの母娘お二人と前になったり後ろになったりしつつ歩き、11時50分、標高1146mの地源にあるマッキノン峠の記念碑に到着した。
アナちゃんが記念碑の前に待機していてくれて、温かい飲み物をくれる。
コーヒーはすでに売り切れだという。私は身体が温まる飲み物にしようとココア(チョコレートドリンク、だったかも)をいただいた。
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