ニュージーランド旅行記5日目その2
2019年1月30日(水曜日)
マッキノン碑まで一緒に歩いてくれたかなさんはここでアナちゃんと交代していた。
アナちゃんはかなり長い間、雨の中、吹きっさらしの峠で我々を待ってくれていたようだ。
温かい飲み物をいただいてほっとしたのも束の間、とにかく寒い。レインウエアの中に来ている半袖Tシャツがぐっしょり濡れていて、それで体温を奪われている気がする。
「とにかく寒いので先に行きます!」と宣言し、歩き始める。動けば温まるかと思ったけれど、相変わらずやっぱり寒いままだ。
マッキノン碑は標高1146mで最高地点ではなく、ここからまた少し登りになる。その登りの途中で、座って休憩しているツアーメンバーの女性お二人に会った。
そのままご一緒し、最高地点1154mのマッキノン峠に到着したのが12時過ぎである。
ちょうど同じタイミングでマッキノン峠に到着した二人連れの方々と交代で写真を撮り合う。
3人の格好の色合いが似ているのは、3人ともレインウエアその他の山道具がモンベルだからだ。
モンベル、人気である。
やっぱり寒くて、マッキノン峠を味わっているお二人に「寒いので先に行きます!」と宣言し、一足先に歩き始める。
マッキノン峠からパスハットまで、10分くらいだった。
トレッキングポールとレインウエアを入口にあるフックに掛け、中に入ると暖かくてほっとした。
ザックを小屋の真ん中に下ろし、びしょ濡れになったTシャツを脱ぎ(その下に来ていたタンクトップは流石に着替えられない)、長袖のシャツに替えた。
レインカバーもしていたし、ザックの中の大きなビニル袋に着替え等々は入れていたので、荷物は濡れていないようだ。
そのうち追いついてきたかなさんに、開口一番「着替えましたか?」と聞かれて、「着替えました!」と元気よく回答する。「上に着ましたか?」と重ねて聞かれ「そこに出しました!」とさらに元気よく答えてフリースを指さしたところ「すぐに着てください!」と指示が飛んだ。
私が余りにも「寒い」を連発していたので、低体温症を心配してくださっていたらしい。
あまりにも寒くて、パスハットの中が温かく、また温かい飲み物をいただいて、かなりほっとしていたらしい。
見事にパスハットの中やお昼ごはんの写真を撮っていない。
壁に沿って作り付けられているベンチに腰掛け、お昼ごはんを食べた。サンドイッチも完食したし、体調的には問題なさそうだ。
パスハットの外には、「世界で一番見晴らしの良い」トイレがある。
しかし、この霧ではその「見晴らし」は全くない。ただ一面の白が広がっているのみである。
私が到着した頃にはツアーメンバーの半分は出発済み、添乗員さんたちも次々と出発して行き、私がお手洗いを借りる頃にはパスハットには殿に付くガイドさんとあと2〜3人が残るのみだった。
かなさんに「ご自分のフリースは下山後のために荷物に入れて置いてください。」と言われ、フリースをお借りして着込む。
パスハットまでに220mlのペットボトルに入れていたお水を飲みきったので、500mlのボトルから移し替える。500mlのボトルが空になったのを見たかなさんに「追加しますか?」と言ってもらう。あと1本持っていますと答えたら「それなら大丈夫でしょう。」というお返事だ。
下りだし、大丈夫だろう。
かなさんに「すぐ追いつきます。」と見送られ、13時10分過ぎにカズアキさんと一緒にゆっくり出発した。
まだ雨が降っているのでレインウエアは着て、びしょ濡れになった帽子はザックにしまい、レインウエアのフードを被る。
雨の中でも結構写真を撮っていたので、手袋は付けない。
ウエストバッグもザックにしまい、お水とカメラをレインウエアのポケットに入れる。
13時22分に17マイルの標識を通過する頃に、霧が少しずつ晴れてきた。
山の反対側に回ったためか風も止んできて、かなさんにお借りしたフリースのお陰もあり、登っているときのような寒さは感じない。
歩き始めて20〜30分くらいでかなさんが追いついてきた。
雨はまだ降ったり止んだりを繰り返しているし、足下が岩だったりするので、結構滑る。かなさんも危うく転びそうになっていて「このツアーが終わったら、靴を買い換えなくちゃ。」とおっしゃる。
道の途中でチェーンソーが置かれていて、その周辺は草の緑の匂いがむっとするほどだ。
雨の中をガタイのいいお兄さんが草刈りに精を出しているところにも行き会う。
この重いチェーンソーを持って上がってきて、雨の中を自在に操って草刈りをするなんて、私からすると尋常でない体力である。そして、有難いことである。
14時15分、18マイルの標識を通過した。
下を見るとまだ真っ白である。そして、この辺りの下りはまだ勾配も緩やかで歩きやすい。
一旦、谷底みたいなところまでたどり着き、じゃぶじゃぶ歩けるくらいの川を渡る。
この辺でだいぶ暖かくなってきたのでお借りしたフリースを脱いでザックにしまおうとしたら、かなさんに「返していただいて大丈夫ですよ。」と言ってもらい、そのままお返しした。何だかお世話になるだけなって申し訳ない。
14時半くらいに、サザーランド滝のビューポイントに到着した。
もちろん、何も見えない。視界は真っ白である。
このミルフォード・トラックは、この「サザーランド滝」を見るために拓かれたと言われている。今日、16時前までにクィンティン・ロッジに到着できたら、往復1時間半くらいかけて滝の足下まで行くことができるけれど、私にはとてもとても無理そうだ。
せめてここから見ることができたら嬉しかったけれど、残念ながら、サザーランド滝を目にすることはできなかった。
そしてまた、ちょうどこの辺りから、下り坂が急になってきた。
ストックに頼りまくりである。
14時45分くらいにアンダーソンの滝の始まりに到着した。
アンダーソンの滝は七つの滝が集まって構成されており、その滝に沿って木の階段が作られている。
この頃には雨もあがっていて、レインウエアのフードを取れるくらいになっていた。有難い。
階段の途中、踊り場のようになっているところは、同時にフォトスポットでもある。
写真を撮る振りをして休憩しつつ、ゆっくり木の階段を降りる。
結構つるつるして滑りやすいし、足下の穴にストックを刺してしまうとそのままコケそうになる。
15時10分、アンダーソン滝下にあるシェルターに到着した。
「シェルター」という名前のとおり、「小屋」ではない。屋根があって、壁はなく、屋根の下にテーブルと机が設えられていて、その奥にトイレがある。
ここまで一緒に降りてきたカズアキさんは休憩を取らずに先を急ぎ、へとへとの私はここで一息入れた。
一人でへたっているところに、かなさんとツアーメンバーのお一人が追いついてきた。
膝を痛めたとおっしゃっていて、下り坂は特に大変そうである。
何故か3人で(というか、私は聞き役専門で)人生についてアンダーソン・シェルターで語った。
ここでかなさんのリュックを試しに背負わせてもらおうとして果たせなかった。ベンチに置いてあった彼女のリュックが重すぎて持ち上げられない。
今日の出発時点では、さらにパスハットで提供してくださった飲み物用のお水や、コース途中にあるトイレをメンテナンスするための道具や補給用のトイレットペーパー、消毒用のディスペンサーも入っていたらしい。
凄すぎる。
結果としてかなりゆったり休憩し、ツアーメンバーの女性と二人でアンダーソン・シェルターを出発する。
かなさんは、追いついてきた中国からいらした母娘のお二人に付くことにしたようだ。
この辺りもかなりの急坂だ。おしゃべりしながらゆっくり歩く。
19マイルの標識を15時40分に通過した。
木々の間からかろうじて見えるダッドレイ滝を遠望し、そこから7〜8分歩いた16時30分頃に20マイル標識を通過した。
こんなに急な下りなのに、後ろから追いついてきた(推定)アメリカ人の女の子がもの凄い勢いで駆け下りて行くのを見て唖然とする。素晴らしすぎる脚力である。
「登りよりも下りの方が大変だ」ということを、今回、初めて身に沁みて感じた。
かといって、今日の登りが楽だったとか、今日の登りがずっと続けばいいとか思った訳では全くない。
17時ちょうど、本日の宿であるクィンティン・ロッジに到着した。
はっきり言って、びしょ濡れのへとへとのボロボロである。
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