カンボジア旅行記2日目その2
2019年12月31日(火曜日)
アンコール・トムのバイヨン寺院の第3回廊に上った時点でまだ10時過ぎだった。驚きである。
第3回廊は、とにかく顔だ。
ガイドさんも、説明することよりお写真スポットを外さないことに全力を傾けている。
この左側で日を一杯に浴びているお顔は、ガイドさん曰く「京唄子さん」である。言われて見ると、確かに似ている。
全部で50を超える塔の四面に彫られた170を超える顔達が何なのか、実はよく分かっていないらしい。
そもそも「誰の顔」なのかも分かっていない。
仏教寺院だから、観音菩薩のお顔だという説が有力だけれど、バイヨン寺院にはヒンドゥー教の神様も祀られているから、ヒンドゥー教の神様の顔でもおかしくない。
建立当初は、全てのお顔の目は開いていたと考えられている。(根拠は不明である。ガイドブックにそう書いてあった。)
後に、瞑想する表情に変えるために、まぶたを削ってしまったという解釈である。
だから、何のために??? と思う。
いずれにしても、阿修羅しかり、モナリザしかり、この「謎の微笑み」ほど、我々の興味と関心を引きつけるものは他にないのかも知れない。
我ながらどうしてこの角度で撮ったのか謎だけれど、お顔のアップの写真を撮ってみる。
何だか左を見ている角度の方が「前向き」な感じがする。
これなどはかなり保存状態がいいお顔で、かつ、記念写真用に何となく場が用意されているくらいメジャーな存在のお顔らしい。
しかし、そういう「有名な」お顔以外にも、この辺りにはとにかく顔がごろごろとある。というか、集まっていらっしゃる。
時間が許せば「お気に入りの顔」「自分と似ている顔」を探すのも一興と思う。
やはり、折角アンコール遺跡に来るのならば、このお顔達を間近で拝見したい。
閉鎖の1日前に来られて本当に良かった。
第三回廊からまっすぐ、最初の入口に戻った。
とろとろ歩いていたらガイドさんが持つ旗を見失い、「何も声がかからなかったから、きっと真っ直ぐ行ったんだろう」と当たりをつけて降りて行った。ツアーメンバーの顔が見えてほっとする。
同じようにガイドさんを見失ったらしい方がいらして、ガイドさんと添乗員さんが探しに行っている間しばし、バイヨン寺院の入口で待つ。暑いし階段も多いし、有難く休憩した。
10時45分過ぎ、バイヨン寺院を出て次に向かったのはパプーオンである。
入口から寺院本体まで続く空中参道があり、ガイドさん曰く「この下がフォトジェニック。」である。
寺院本体にたどり着く前に皆して回廊の下に潜り込み、200mあるという柱の並びを堪能する。
思えば変な絵面ではある。
パプーオンは「子どもを隠す」という意味である。
カンボジアの王様がシャムの王子を殺してしまい、怒ったシャムに攻め込まれた際、王妃がシャムの報復を恐れて自分の子どもをこの寺院に隠したことからその名が付いている。
目には目をではないけれど、正しい恐れ方だよと勝手に思う。
パプーオンは、建築的にいうとミラミッド型のヒンドゥー教寺院である。
11世紀半ばに建造され、バイヨン寺院よりも100年から200年ほど古い。アンコール・ワットもまだ出来ておらず、アンコール・トムの建造に着手してからまだ30年ほどしか経っていない頃だから、かなり初期の建造物と言える。
このパプーオンは高さが30mあって、ガイドさんに「てっぺんに上るとバイヨン寺院の第三回廊を見ることができる。」と言われ、全員でこの急階段を上がることになった。
それにしても急である。
そして、実際に上ってみると、この左の写真のようにkeep outのテープが貼られて、てっぺんまで登ることはできなかった。
残念である。
添乗員さんが「ここは随分前から上がれなかったと思いますよ。」とぼそっと呟いていて、「そういうことは早く言ってください」と思う。ガイドさんも「時間がないツアーだとなかなかここまで来られない」と言っていたから、上がったのは久しぶりだったのだろう。
しかし、先ほど下を覗いた空中回廊が続く様子が上から見ることができて、これはこれでいい眺めである。風も気持ちいい。
ただし、ここもまた日差しを遮るものがなく、暑い。
バイヨン寺院を見られなくてがっくり来た我々を見かねたのか、ガイドさんがアンパンマンがいますよ、と教えてくれた。
この後、他の遺跡でも何カ所かで見た記憶があるから、一般的な意匠なのだと思う。
実際はもちろんアンパンマンではなくて、何かのお花を象っているという話だ。
このパプーオンは、裏側に涅槃像が隠されている。大きすぎて写真に収めることができなかったのが残念だ。
実際のところは、隠されているというか、作り替えられている。
15世紀にかけてパプーオンが仏教寺院に作り替えられる過程で涅槃増も付け加えられたらしい。
強引といえば強引、見事といえば見事である。
11時40分くらいに、「王宮」に向かった。
正確には、今残っているのは、アンコール・トムの建造に着手したスールヤヴァルマン1世が王宮の敷地内に作った儀式の場である。
現在は入場禁止になっている。
この写真では分かりにくいけれど、この建物の周りは1mくらい掘り下げられている。
池でもあったのかと思ったら、ここに宝があるんじゃないかと思い込んだ人々にどんどん掘り進められて跡だという。
「今は掘ることは禁止されている」と言われ、「そりゃそうだ」と思う。
それはそれとして、王宮には沐浴のための大小の池が用意されていたという。それも、「そりゃそうだ」である。
建造当初は、建物の基盤部分はラテライトで作られ、その上の建物は赤い砂岩で作られていて、上部は金箔で覆われていたという。
それは確かに「この近くに宝があるんじゃないか」と掘りたくなる気持ちもちょっと分かる。
ところで、どういう話の流れで教えてもらったか忘れてしまったけれど、「シェリムアップ」というこの町の名前は、「シャムを追い出す」という意味だということは、王宮を見学していた辺りで説明があったと思う。
先ほどのパプーオンの話と繋げて考えると、なかなか趣深い。
12時前に象のテラスに到着した。
テラスの側面に象のレリーフが彫られていたり、三つの頭を持つ象が鼻で蓮の花を掴んでいるように象が彫られていたりする。
象のテラスでは、神と王のみが見ることを許されていたアプサラの踊りが披露されていた。
我々が入ってきたのは、王のみ使うことが許されていた、王宮からの入口である。
象のテラスは、幅320mもある。
テラスを下に降りると、側面には、象のレリーフの他に、ガルーダ(鷲の頭と人間の体を持つヴィシュヌ神の乗り物)とガジャシンハ(ガルーダとシンハが一体化した聖獣。シンハは獅子。)がテラスを支えている様子が浮き彫りになっている。
ガイドさんは「レプリカではないガルーダは珍しい。」と言っていた。
象のテラスのお隣には、ライ王のテラスが続く。
象のテラスやバイヨン寺院と同様、創建したのは、ジャヤヴァルマン7世である。
はっきり言って、アップで見ると相当に気持ち悪い。
だいぶ崩れてきているからまだいいものの、この仏像たちがくっきりはっきり彫られている前に立ちたくはない、という感じである。
ライ王のテラスの上には、閻魔様の像が鎮座している。
もっとも、ここにあるのはレプリカだ。
ガイドさんはこの像は閻魔様の像だと言い、ガイドブックにはこの像はライ王自身の像だと書いてある。諸説ありすぎてよく分からない。
ついでに言うと、もはや暑いし疲れたし、「どうでもいいかな」という気分になってきたのもまた事実である。
今回参加したツアーは、アンコール・トムとアンコール・ワットをそれぞれ3時間かけて観光するというのが売りである。
「たっぷり3時間観光するためには、たっぷり3時間観光できるだけの体力が必要である」としみじみ思い知った。
次に入ってみたクーレン(倉庫)では、疲れ果ててガイドさんの説明も半分くらいに聞いてしまい、どうしてこの倉庫を見学したのか、全く覚えていない。
何というか、足下が悪く(見学用に整えられていない)、どうということのない廃墟だった記憶だ。
だって倉庫である。
倉庫から(多分そのまま)歩いてすぐのところに沐浴のための池があった。
ガイドさんはさらっと「沐浴をしていた場所だ」と話して脇を通って行った記憶だ。ガイドブックを見ると、池の周りの建造物はは「プラサット・スゥル・プラット」という謎の塔で、12個が並んでいたらしい。
そして、こちらもまた何のために作られていたのか分からないそうだ。
そして、これまたどうして見学することになったのかよく分からない仏像である。
ガイドさんが「偽物ばっかり見てきたから、本物を見て。真ん中にいらっしゃるのが、お釈迦様だから。」と説明してくれ、何となくみんなでぞろぞろと中に入った記憶である。
そして、何故か、ガイドさんは入って来なかった。
そもそも「本物の仏像」とは何なのか。「偽物の仏像」とは何なのか。「オリジナル」とはどういうことか。
かなり微妙な問題ではある。
よく分からないなりに、お参りした。
アンコール・トム見学の掉尾を飾ったのは、凱旋門(勝利の門)である。
この南側に「死者の門」があって、負けたときはそちらを通り、また戦争で死んだ人の魂もそちらを通ると言われていたという。
そして、掉尾を飾るに相応しく、この門の上部にも「お顔」が鎮座していた。
このお顔の内部も空洞になっている。
カンボジアには多分、ほとんど地震がないのだろうと思う。
アンコール・トムの見学は、13時前に完了した。
この後は、もちろん、お昼ごはんである。
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