「旅の絵本Ⅸ」を読む
2021年11月、安野光雅著「旅の絵本Ⅸ」を読んだ。スイス編である。
読んだというよりも「味わった」という感じが近いと思う。
2018年に90歳の安野光雅氏が描いたというところがまず凄い。
もちろん以前と全く同じようにとは行かず、小さく描きこまれた人々は輪郭を失っているし、ぱっと見た印象が荒い。「緻密さ」みたいなものがなくなっていると思う。
その代わり、おおらかさ、愛しさみたいなものがより伝わってきたように思う。
旅人の挙動がこれまでとかなり違っていて、今までは画面の左から右に向かって歩いていたところ、このスイス編では旅人は右から左に向かって進んでいる。
そして、なぜか馬に乗っているシーンがほとんどない。旅の最初にその場所の人と交渉して馬を買受けているし、ずっと馬と一緒に旅をしているにもかかわらず、なぜか馬に乗っている全身像の絵がない。むしろ、馬の横に立っている絵が多い。
解説にも特段の記述はなかったけれど、恐らく、何らかの意味というか思いがあるのだと思う。
描かれた場所の中で唯一特定できたのはマッターホルンだった。
誰にでも分かる場所、という感じだ。
特に隠されたキャラクターもいなかったように思う。多分、それと分かるように小さく描きこむことが難しかったのではないか。
解説の終わりに、「旅人はオーストリアかドイツに行くのでしょう」と書かれている。
安野光雅は、10巻としてオーストリアかドイツかその両方を考えていたのだなと思う。
その10巻を読めないことが寂しい。
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