箱根旅行記(2022)2日目
2022年6月22日(水曜日)
自分としては「寝たり起きたりで熟睡できなかった」という感じだった。随分と強い雨音を聞いていた記憶もある。
しかし、母に言わせると「あなた、よく寝てたわよ」ということになる。謎だ。
5時半過ぎくらいには母と二人ほぼ目は覚めており、何だかお天気がいいねー、日差しがあるねー、とうとうとと思う。
しかし、雨戸の開け方が分からないので、部屋に朝日を入れることはできない。そこだけはちょっと残念である。
6時過ぎに本格的に起き出し、この時間帯は女湯に替わっている内湯の巽の湯に行く。
内湯は今回も貸切状態である。そして、ちょっと熱めの湯温でぱっきり目が覚める。
こちらも確か天井の高い浴室だった記憶である。
珍しく母が「もう1回、露天風呂に行こう」と言うので、そのまま露天風呂に向かう。
やけに緑濃く清々しい庭を眺めながら露天風呂に向かう。
そういえば、露天風呂にも名前がついていて、女湯の方は「翠の湯」と名付けられている。
今回もお二方の先客がいらして、ご一緒させていただく。
昨日は雨降りだったから聞こえなかった鳥の鳴き声が聞こえてきて、昨日の午後よりも涼しく、風もあり、「高原の朝」という感じだ。
ゆっくり露天風呂を楽しみ、部屋に戻る。
はしごしたおかげか、またもや大汗である。
母は汗が引くと浴衣から着替えていたけれど、私はせっかくお部屋にお風呂があるのだから朝食後にもう1回楽しもうではないかという目論見から浴衣のまま、ひたすら汗が引くのを待った。
お部屋の冷水ポットが有り難い。
8時に食事処に行く。
昨夜と同じ席に朝食が用意されている。
担当の方から熱烈にお勧めされ、「昔ながらのしょっぱくて酸っぱい梅干しです」という梅干しをまず食べ、いい香りのするお茶をいただく。
この梅干しが、とにかくしょっぱい。梅干しを食べて、「酸っぱい」の前に「しょっぱい」と思ったのは初めてかも知れない、というくらいにしょっぱい。
目も胃も一気に覚醒した感じだ。
ごはんはおひつで用意されており、つやつやしている。
「食べ過ぎてはいけない」と己に言い聞かせ、軽めによそう。
こちらの朝ごはんの白眉は卵焼きとお豆腐で、この二つが二段重ねになり、卓上コンロ(というのか?)に載せられている。
できたてのお豆腐と、熱々のだし巻き卵焼きが食べられる。どちらも柔らかいお味で美味しい。
1時間弱かけてゆっくりいただいた。
食事処を出たところにコーヒーが用意され、お部屋に持って帰ることもできるようになっている。
母と二人分のコーヒーをいただき、部屋に戻って本日の予定を考える。
起きた頃はさんさんと照っていた太陽も今は雲に隠れている。山の上の方は下がってきた雲に覆われており、ずっといいお天気という訳には行かなさそうだ。
雨が降ることを前提に、岡田美術館に行くことに決めた。
本日の予定が決まったところで、お腹も少し落ち着いてきたし、仕上げの温泉である。
明るい部屋風呂はなかなか気持ちよい。
窓を開けて風を入れ、やはり少しぬるめのお湯に浸かる。
どちらも無色透明無臭のお湯の筈が、30分弱であがったときに、何故か自分から硫黄の匂いがしているように感じた。不思議だ。
部屋風呂と内風呂は自家源泉2本をブレンドしたお湯、露天風呂は、露天風呂近くから湧出している源泉1本のみのお湯だという。
2本の源泉のうちどちらかが強羅で第一号の温泉で、そのちらしが館内に展示されていた。昭和27年のことらしい。
お風呂からあがって着替え、母が「お散歩したい」と言うので内玄関のサンダルをお借りして、宿のお庭を歩いた。
昨夜、雨が降っていたし、サンダルでは少々足元が不確かだ。靴を履いた方がよかったよ、と反省した。
庭には、川が流れ、池には鯉がいて、沢蟹まで歩いている。
遊歩道まで行かずとも敷石があり、ベンチも置かれ、ところどころでお花も咲いている。
かなり見事な深い緑のお庭だった。
10時にチェックアウトし、担当の方にお見送りいただいて駅に向かう。
「お写真撮りますか」と言っていただいたけれど、母と二人して固持する。そうするとカメラを出しにくく、宿の外観の写真を撮りそびれてしまった。なかなか素敵な別荘風の(というか、元々別荘である)建物である。
建具なども昔のままで、木枠の窓にネジ式の鍵が付いていたりして、何とも懐かしい感じだった。
あと一歩、お掃除が行き届いていたら良かったのになぁと思う。
駅で岡田美術館のチケットを購入し、強羅駅前から小涌園まで数分バスに乗る。
小涌園のバス停から信号を渡った先が岡田美術館である。
現在、花鳥風月 名画で見る日本の四季 琳派・浮世絵から御舟・一村まで」の春夏編が開催されており、そこで展示されている若冲の「孔雀鳳凰図」が一番のお目当てだ。
本当なら、別に美術館に行った記録として書くところだけれど、今回は割愛する。
この美術館、とにかく広い。そして、展示物が果てしない。
1階に展示されていた(多分、常設展示である)主に中国の焼き物をもの凄く真剣に見てしまい、そうしたら5階までフロアがあるというのに、それだけで疲れ果ててしまった。
丸一日を費やす覚悟で、気力体力を万全に整えて行くべき美術館である。
2階に展示されていた日本の焼き物とガラスは、「知らなさ」「分からなさ」は中国の焼き物とほぼ同じ筈なのに、何故だか親しみというか安心感を感じるのが不思議である。
1階で何度も何度も目にした「景徳鎮」「青磁」等々の解説に母と二人して疲れ果てていたところ、何故か日本の陶磁器だって知らないのに疲れないのである。謎だ。
3階で開催されていた特別展は、やはり楽しかった。
もっとも、今になってみるとほとんど覚えていないというのも本当で、伊藤若冲の孔雀鳳凰図(孔雀と鳳凰の絵が一対になっている)と、葛飾北斎の肉筆画「夏の朝」の2点くらいしか記憶に残っていない。
誠に申し訳ない。
しかも4階の日本の絵画までは少なくとも見て歩いたけれど、5階に展示されていたらしい仏教美術については、展示室にも入らずにパスしてしまった。
重ねて申し訳ない。
しかし、その時点で入館してから1時間半以上が経過していた。どんな美術展でも大抵滞在時間1時間の私にしては、かなり長時間の滞在である。
そして、5階から外に出たら、雨が降っていた。
かなりの降りである。
荷物は入館時にコインロッカーに預けることが義務づけられていて、当然、傘など持っていない。その場に置いてあった傘をお借りする。
庭園は別に入場料が必要で、雨も降っているし、疲れ果てているし、今回はパスする。
そのまま元の入口まで戻り、ミュージアムショップでお買い物をし、外にでる。
1階の最初の通路にあった大きな壁画(福井江太郎「風・刻」―天駆ける箱根の守り神―)の全体を見られなかったので、外から見てやろうと思っていたのだ。
ただ、外から見ると今度はガラスの反射が邪魔をして、全体を見渡すことはできたものの、くっきりはっきり見ることはできなかった。ちょっと残念である。
12時47分発のバスに乗り、10分くらいで箱根湯本駅に到着した。
雨も止んだことだし、昼ごはんである。
駅のコインロッカーに荷物を預けて歩き始める。旅館の朝ごはんを食べた日にしては、お腹が空いているとは言わないけれど、とてもじゃないけど昼ごはんなんて入らない、という感じでもない。
昨日のはつ花で味を占めた私は、今日は湯葉丼 直吉を提案した。行列間違いなしという人気店らしい。
それに、湯葉丼というメニューも胃腸に優しそうである。
行ってみると店頭に銀行窓口みたいな発券機が設置されており、待っている人が大勢いる。13時過ぎの時点で15組待ちくらいだったと思う。
多分、40分待ちくらいでお店に入ることができ、注文した湯葉丼を食べ始めたときには14時を回っていた。
鰹出汁に汲み上げ湯葉と椎茸を入れ、卵で綴じて、熱々の土鍋で供されます。こちらを少しずつごはんに載せていただくというスタイルである。
箸休めにお漬物と佃煮が付いて来ており、そちらで味を変えたりしながら、口の中を火傷しそうになりながら、ぱくぱくいただいた。
湯葉丼 直吉のすぐ近くにあった「Hakone Dolce studio STELLA」も気になりつつ、しかし食べるにはお腹がいっぱいすぎる。
鈴廣で「あげかま」のセットを購入したり、ご近所へのお土産に和菓子 菜の花で「月のうさぎ」というお饅頭を購入したりしつつ、駅に向かう。
途中でやっぱりデザートが欲しくなって、杉養蜂園のはちみつソフトクリームを食べる。
窓口で「一番早く発車するロマンスカー」の特急券をお願いしたら14時48分発のはこね60号がすでに入線しており、こちらに乗って帰宅した。
今回、お天気も悪かったので、母が行きたがっていたニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズに行けていない。次回、季候のいい時を選んで一緒に行かねばと思っている。
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