« 湯谷温泉旅行記1日目その1 | トップページ | 「山とハワイ 上:登れ!世界最大の山 ハワイ島篇」を読む »

2022.10.16

湯谷温泉旅行記1日目その2

2022年9月30日(金曜日)

ジャスミンティ 露天風呂からお部屋に戻り、ジャスミンティを入れる。
 お茶菓子として用意されていたスイカの種を食べつつ、お茶を飲みつつ、窓際の椅子に座って本を読む。
 この椅子が意外と座り心地が良い。
 古い木造だから誰かが廊下を歩いていると家鳴りの音が聞こえるしドアの開け閉めの音もはっきり聞こえる。窓の外を流れる川の音が聞こえ、虫の声も聞こえる。時々とんびの声もしていた。落ち着く。

 落ち着くといえば、こちらの宿は浴衣ではなく作務衣が用意されている。着方が下手な私はたとえ作務衣でも襟元がどんどん広がって行き落ち着かないことが多いけれど、こちらの宿の作務衣は襟元にボタンがあって留めることができて安心だ。どこの旅館でも採用してくれるといいのになぁと勝手なことを考えた。それくらい着心地が良く安心だった。
 そして、用意されていた湯上がりの足袋も、丁字染めで緩すぎずきつすぎずでとても履き心地が良い。丁字は、正倉院御物の防虫・防かび等に使用されたりしていた染料だという。流石、薬膳の宿という感じだ。

内湯 しばらく本を読んだ後、夕食前に内湯に入るべく17時過ぎに行った。ちょうど良く内湯が空いている。
 湯気が籠もっていた内湯も窓を全開にしたらあっという間に涼しい風が入ってきた。気持ち良い。
 お湯は露天風呂と同じで渋い緑色に濁っている。お湯の温度も露天と変わらない、ように思った。
 内湯のカランは並んで二つ、湯船も露天風呂より一回り小さい。こちらは、知っている人同士なら大人二人、知らないと一緒はちょっと避けたい、というくらいの大きさだ。

 窓を開け放ったので、川の対岸にある遊歩道らしき道が見える。しかし、歩いている人が一人もいない。そもそも歩ける道なのか謎である。
 歩けない道なら対岸から見られる心配はないから、目隠しのよしずは外してしまってもいいのでは? などと考える。
 18時から夕食の方もいらっしゃるし、順番待ちしている方もいないだろうと、18時過ぎまでゆっくりさせてもらった。

 18時半になるかならない頃に夕食の用意ができたとお部屋に電話が入った。
 食事処への階段を降りて来ていただいたら係のものがお声がけしますと言う。
 行ってみると丸テーブルが入った個室に案内されて驚いた。私一人で占拠してしまっていいらしい。
 テーブルの上には、薬種がいくつか乗ったお皿が用意されていて、食前酒として、紹興酒かプーアール茶かを選べますという。もちろん紹興酒をお願いした。

紹興酒 宿の方が、薬種をお猪口に入れ、温かい紹興酒を注いで食前酒「不老養顔鬆」を作ってくださった。
 漢字のとおり「人を若くきれいにする老酒」だと献立の紙に書かれている。薬種は、霊芝、クコの実、白にんじん、麦門冬の4種類だ。
 このうち霊芝だけは固いので食べられないけれども、噛んでエキスをいただいてください、と言う。その他の三つは食べていただけますという案内だ。

 また、この後もお料理が出されるたびに、そこで使われている薬種と効能を説明してくださった。
 ここでももちろん説明していただいたし、薬種を説明する資料もテーブルに置かれていていつでも読めるようになっていたけれど、いつものことながら、全然覚えられなかったし、写真に撮ってくるのも忘れてしまった。
 とにかく、身体に良くて美味しいお料理が供されたことは間違いない。

前菜 前菜の「健身開胃碟」は、献立で「新鮮な中性の前菜」と説明されている。
 キャベツとりんごの上に、海老、キュウリ、インゲン、くるみ、牛肉、キクラゲが載せられている。
 そういえば、この前菜に使われている薬種は何だったろう。メモし忘れたらしくて書いていない。キクラゲは薬種の一つでもあるから、それかも知れない。

 上に乗せられた野菜や海老はほんのり甘い味付けで、下に隠れているキャベツとりんごは、恐らく何も味付けをしていないか、したとしても軽く塩か酢をしたくらいで、とにかくさっぱりしている。
 器の効果もあって薬膳っぽい見た目でありつつ、お味は優しい。薬膳と聞いてイメージしてしまう苦みや渋みはなくてほっとする。

スープ 次に供された「滋腎益血鶏」は、鶏のムネ肉のスープである。
 私の聞き間違いでなければ、「鶏のムネ肉は、粉末にして表面に振られている」という説明だったと思う。本当だろうか?
 スープは鶏のスープで、とろみがつけられ、溶き卵が散り、最後に青葱が散らされている。
 こちらも優しい穏やかな味のスープである。疲労回復や血圧調整の効果があるという。

炒め物 3品目は「紅花斐燴果」という紅花入り海老の炒め物だ。
 炒め物と言いつつ、海老は衣をつけて揚げてあったのではないかと思っている。くわいなどの野菜を加え、餡でまとめてある。海老もプリプリしていて美味しい。
 紅花はかなり万能の薬種のようで、血液循環を良くすることで、肌荒れ、腰痛、肩こりなどに効くという。

 この辺りで紹興酒を飲みきり、薬膳酒をお願いすることにした。10種類くらい用意され、利き酒セットのように三つを選んでオーダーすることができる(もちろん、一種類をお願いすることもできる)。
 メニューには、それぞれの薬酒の効能も書かれていてかなり迷う。迷った末、クコの実、霊芝、何首烏の3種類をお願いした。

20220930_190530 一番左がクコの実のお酒で、滋養強壮、疲労回復、眼精疲労、成人病予防に効く。
 真ん中が霊芝で、高血圧、成人病予防、あと二つ何かに効いた筈だ。
 一番右の何首烏(カシュウ)は滋養強壮、コレステロール降下、動脈硬化抑制の効果がある。
 我ながら、ほぼ老人向けラインアップである。よっぽど体力に自信がなかったらしい。あと、成人病に不安を持っていることが読み取れる。

 この薬酒たちは小さなグラスに入っており、恐る恐る飲むとかなりアルコールが強めだった。
 行く前に読んだどなたかのブログで「9種類飲んだ。10種類全部を飲めなくて残念」と書かれてあったけれど、私にはとてもそんなには飲めそうにない。三つを厳選して正解だ。

20220930_191037 次のお料理は「黄耆天麻海巻」で、お魚の蒸し物だ。
 衣をつけて蒸されたアカダイの上に乗せられているゴボウの輪切りみたいなものが「黄耆」で、真ん中に散らされたオレンジっぽいものが「天麻」だ。
 なかなかピンポイントな効能のお料理で、高血圧に伴う頭痛やめまい、情緒不安、腎機能低下に効くという。
 霊芝の薬酒と一緒にいただく。お酒の効果か、お料理の効果か、相乗効果か、この辺りから大汗が出始めて驚いた。タオルで顔を拭ってしまう。

20220930_192105 次のお料理は、「陳皮漢果駝鳥肉」という、ダチョウのお肉の煮込みだった。
 薬種としては陳皮と羅漢果が使われている。身体の酸化防止、胃腸・喉にいいらしい。
 菊花がレンコンの上に乗せられて出てきて、「菊には毒消しの効果があると言われていますので、散らしてお召し上がりください」と説明があった。

 ダチョウのお肉なんて、食べたとしたら20年近く前にケニアに行ったときくらいだ。覚えていないのだから初めて食べると言っていいだろう。
 お醤油とお砂糖で甘辛く味付けされている。少し濃いめなのは、ダチョウ肉に臭みがあるからなんだろうか。全く気にならない。
 最初に説明がなかったら、これがダチョウのお肉だとは気づかなかったと思う。
 かといって、「何も説明がなかったら何のお肉だと思ったろう?」と考えても思いつかなかった。

麻婆豆腐 そして、献立に書かれていないお料理が供された。
 「料理長からの一品」の麻婆豆腐だ。
 そう言われると何だかサプライズのようで嬉しい。
 豆豉が入っていますという説明をいただいたから、豆豉も薬種の一つということなんだろうか。
 ダチョウのお肉ともども、白いごはんが欲しくなるお味だった。

青梗菜の炒め物卵白と貝柱の炒め物 次にいただいた「珍珠芙蓉貝」は、いかにも美容に良さそうな名前でありつつ、湿疹とかすみ目に効くという。
 卵白と貝柱の炒め物で、真珠の粉も使われ、上にクコの実が散らされている。
 見た目どおりの優しい味で、卵白も真っ白で炒めてあるとはちょっと信じがたい。

 青梗菜の炒め物は「麦冬燴時菜」という名前だ。名前のとおり、麦門冬が入っている。
 青梗菜の左右にある黄色っぽい細長いものは金針菜、つまりは百合の花である。
 こちらのお料理は便秘と喉にいいらしい。謎な組み合わせの効能である。

お食事 そして、お食事である。これが贅沢な組み合わせだ。
 ごはんは、「菟絲子笋米飯」といって、漢方のトシシ、ひじき、大豆が具として入り、お米には餅米も加えてもちもちした食感を出しているという。
 奥に見えている奈良漬けのようなお漬物は、キクイモである。
 お茶は羅漢果のお茶で少し甘い。ごはんにはちょっと合わないかも知れない。しかし、もちろん漢方のお茶で老化防止と肺をきれいにする効能があると言われれば飲まない訳には行かない。

 おつゆは、烏骨鶏のスープだ。献立に「血檽珍珠鳥」と書かれていると思うけれど、2文字目が自信がない。実際は木偏ではなく末とか未に見えるけれど、これらと需を組み合わせた漢字を見つけられなかった。
 それはともかく、烏骨鶏のスープである。具として山芋の加えられており、身体にいいに決まっている。いかにも「滋味溢れる」といったお味だ。
 「軽度中等度の糖尿病」が効能に挙げられているところが何だか凄い。

 こんなフルコースを食べたらお腹がいっぱいになりそうなものなのに、「お腹が苦しい」とかいったことは全くなかった。
 腹八分目とは言わないまでも、「ちょうどいい量のお食事をいただきました」と感じる。

デザート 「忘れられちゃったかしら」と少し心配になったくらい後で、デザートが運ばれてきた。
 「迎賓時令果」という白キクラゲのデザートである。胃腸炎と乾咳、高血圧に良いそうだ。ナツメも入り、甘いシロップ漬けになっている。
 一緒に供されたタンポポコーヒーは、不思議と甘く、少し乾いた感じの味がした。
 18時30分からちょうど2時間かけて完食である。
 美味しい上に身体にも種々の効能がある(に違いない)。何て素晴らしいのだろう。

 部屋には、雨戸が立てられ、お布団が敷かれていた。
 お布団ですぐ寝られる態勢が整えられていたためか、急激に眠気が襲ってくる。
 慌てて歯磨きだけは済ませ、テレビで世界卓球を見る。かなり音が伝わり易いことは分かっていたので消音にする。
 21時くらいだと思う。いつの間にか眠ってしまった。

 湯谷温泉旅行記1日目その1 <-  -> 湯谷温泉旅行記2日目

|

« 湯谷温泉旅行記1日目その1 | トップページ | 「山とハワイ 上:登れ!世界最大の山 ハワイ島篇」を読む »

旅行・地域」カテゴリの記事

*202209湯谷温泉の始末」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 湯谷温泉旅行記1日目その1 | トップページ | 「山とハワイ 上:登れ!世界最大の山 ハワイ島篇」を読む »