2005年8月20日(土曜日)
7時からかなりたっぷりと朝食を食べ、8時30分にホテルを出発した。
昨日の夜はかなりの大雨だった。今朝は厚く雲に覆われつつも何とか雨は落ちていない。
ここまでバスの席は前・中央・後ろに三分割され、ツアーメンバーも三分割されて、毎日「このグループの人たちはこの位置」というのが決まっていたけれど、今日は自由席だそうだ。
途中、クヴェラゲルシの村を通り、レイキャビクに向かう。
クヴェラゲルシは地熱帯に属し、アイスランド全体の1/4の温室が集まっている農耕地域である。ヨーロッパで初めてのバナナ栽培も行っているという。ただしそのバナナは、小さいサイズの火を通して食べるモンキーバナナだ。
「だからスーパーで買ったバナナチップスがアイスランド産だったのね。お土産にもっと買おうかしら。」とおっしゃる方がいらしてなるほどと思う。
レイキャビク市内に到着する前、雲の中にエーシャ山が見えた。
ガイドさんによると、アイスランドのサンタクロースは何故か13人いて、両親とともにこのエーシャ山に住んでいるそうだ。クリスマスが近づくと1日に一人ずつ山から下りてきて、クリスマスイブに全員揃う。クリスマスを13人全員で過ごした後、今度はまた1日に一人ずつ山に帰って行くという。
最初のサンタクロースが山から降りてくる日から最後のサンタクロースが山に帰る日までが「アイスランドのクリスマス」である。
9時過ぎにレイキャビク市内に到着した。
アイスランドを1周して戻ってきた目には、とても大きな都市に見える。レイキャビクの人口が18万人で、アイスランド第2の都市であるアクレリの人口は15000人だから、それも当たり前かも知れない。
レイキャビクは世界最北に位置する首都である。(そういえば、世界最南に位置する首都はどこなんだろう?)
政治的には、東西冷戦終結の契機となった、アメリカ合衆国レーガン大統領とソビエト連邦ゴルバチョフ大統領が会談を行った場所として知られている、と思う。会談の場所にレイキャビクが選ばれたのは、アイスランドがワシントンD.C.とモスクワからほぼ等距離にあるからだ。
その会談が行われたというヘウジーハウスに向かった。
海辺に建てられているやけに普通の家だ。塀も門もなく、流石にドアは開いていなかいものの、窓から室内の様子を見て取ることができる。「こんな無防備なところでいいのか。」「でも、1986年当時は周りに建物は全くなくて、却って警備はしやすかったのでは。」などという声が聞こえる。
窓からシャンデリアや燭台や絵が見えて、それなりに飾られつつも、決して豪奢な感じではないところが好ましい。
その後、レイキャビクの中心地に移動した。
今日はレイキャビク・マラソンの日で、市内中心部はあちこちが通行止めになり、走る気満々の人々で溢れている。気楽な仮装レースもあるのか、童話のお姫様のようなドレスを着た女性も見かける。応援のための青い風船やぱちぱち音を立てるおもちゃも配られている。
たくさんの鳥が群れていたチョルトニン湖のほとりにある市庁舎には、残念ながら入ることができなかった。
街中で普通の建物と並んでいる国会議事堂や、アイスランド建国の父ヨウン・シグルズソンの銅像、元は監獄だったという首相ハウスなどを眺めつつゆっくりと歩く。
この辺りは政治の中心であると同時に商業の中心でもあって、メインストリートが通っている。普段は夜も早いらしいけれど、今日はカルチャーナイトで、普段は閉まってしまうお店も夜通し開いていたりして、とても賑やかになるそうだ。
散策後はバスに戻り、レイキャビクの街を一望できるペルトランに向かった。
ペルトランは熱湯貯蔵タンクの集まりだ。そのタンクが建っている様があまりにも不格好でかつ街のどこからでも見えてしまったことから、そのタンクの上に半球状のガラス・ドームを乗せて、レストランや会議室、サガ博物館などを据えたという。レストランはタンクのてっぺんにあり、1時間に1回転する展望レストランになっている。
「ペルトラン」はアイスランド語で真珠という意味だそうだ。
ペルトランではガラスドームの周りに作られた展望台に出ることができた。風が強く、流石に寒い。
レイキャビクの街が一望でき、さらに反対側には国内空港があって飛行機の離発着を見ることができる。
緑が多く、赤い屋根の可愛らしい家がたくさんあり、遠くにハットルグリムスキルキャ教会も見える。
眺望を堪能してドームに戻るとそこはカフェになっていた。暖かい。
男の人3人が集まって何やら図面のようなものを広げて打ち合わせをし、その横で小さな姉妹がジュースを飲んでいるテーブルがあった。彼女たちがあまりにも可愛かったので、誰がお父さんなんだろうと思いつつ声をかけ、一人ずつ写真を撮らせてもらった。
アイスランドの子ども達は大抵彼女のようにクリームブロンドの髪をしていて、大人になるにつれて段々髪の色が濃くなるそうだ。
それにしても可愛い姉妹だった。
ペルトラン1階にあるサガ博物館にも惹かれたけれど、トータル30分強の持ち時間しかなかったので諦め、代わりに英語版のパンフレット(500クローナ)を購入した。パラパラとめくると、使われていた道具類の展示と、人形で当時の情景を再現した展示とがメインのようだ。
短時間で果敢に見学された方がいらして、「ちょっとおどろおどろしい感じだったわ。」とおっしゃっていた。
11時くらいに、ペルトランから見えたハットルグリムスキルキャ教会に戻った。
市内中心部の通行規制のためか、アイスランドに来てほとんど初めて渋滞を見た。どんどん中心部に入れなくなっているらしく、バスを教会の駐車場に残し、あとはランチまで歩いて見学しましょうということになった。
教会には地上70mの高さに有料の展望台があり、エレベーターで上がることができる。上がりたい人はどうぞと20分くらいの自由時間になった。
ペルトランで眺望は堪能したので教会の展望台はパスし、教会とその前に建つレイブル・エリクソンの銅像とを写真に撮ろうと、カメラのファインダーに全景が入るところまで、教会からまっすぐ伸びる道路を後ろに下がった。
そうやって歩いていたら、ハンドメイドのセラミックのお店があった。道路からちょっと引っ込んだところにあり、看板が出ている。「LISTVINAHUS」という名前だ。
店構えがなかなか可愛らしかったので、お香立てにしようと小さなロウソク立て(1450クローナ)を一つ買い、お店の写真を撮らせてもらった。お店の奥は仕事場になっており、まだ焼いていない器などがたくさん並べられ、ろくろも置いてある。そこでバナナを食べていたおじさんが全て作っているそうだ。
そろそろ集合時間だとお店を出たところで、ばったりツアーの方々が歩いているところに出くわした。
慌てて「まだ集合時間じゃないですよね?」と聞くと、カルチャーナイトの準備中だった教会は見学できず、展望台にも上れなかったので、早めに次の目的地に向かうことになったらしい。教会に一歩も入らなかった私は捜されていたようだ。申し訳ないことをしてしまった。
そのままお昼を食べる中華料理屋さん「上海」まで行き、ランチタイムまで30分強の自由時間になった。ちょうどそのレストランが面した道路がレイキャビクの繁華街で、お店が並んでいる。
教会の方に少し戻り、「THE HANDKNITTING ASSOCIATION OF ICELAND」という、半地下の少し入りにくい感じのお店に入り、散々悩んだ末、マフラーを2本(1本2900クローナ)を購入した。アイスランドの伝統的な編み方・デザインではないけれど、単色でゆったりと編まれていて使いやすそうだ。
集合時間ジャストに「上海」に到着すると、すでにみなさん席に着き食事が始まろうとしていた。
昼食のメニューは以下のとおりだった。久々の炊いた白米とおしょうゆ味、お茶が嬉しい。
牛肉と卵のスープ
レタスと白菜のそぼろあんかけ
チキンの黒こしょう焼き
海老とブロッコリーのオイスターソース炒め
ご飯
フルーツ
中国茶
食事を終えてレストランを出ようとしたら、いきなり雨が降り出した。少し待ったけれど止みそうもなかったので、みな次々とレインコートを着込んで歩き出す。突然の雨にも慣れたものだ。
レイキャビク・マラソンは正午スタートだったらしい。選手の人たちは冷えてしまわなかっただろうか。
教会の駐車場で待っていたバスでガイドさんとはお別れした。
溶岩台地の道を走ること1時間弱、ブルーラグーンに到着した。バスタオルなどを借り(正確には添乗員さんが借りてみんなに配ってくれ)、更衣室に向かう。
ここのロッカーキーはなかなか複雑で、ロッカーの扉を閉めると、一番近いスイッチボードのようなところにロッカーナンバーが表示される。そのナンバーが点滅している間にスイッチボードにリストバンドになったキーをかざすとロッカーの扉がロックされる。開けるときは逆の手順だ。
また、ブルーラグーンは大きな露天風呂だけれど、水着着用、その水着に着替える前にシャワーを浴びて備え付けの石けんで体と髪を洗わなければならない。流石にシャワーブースを開けて点検するわけではないけれど、更衣室に係員が常駐している。
なかなか厳格だ。
ブルーラグーンは、もの凄く広い。更衣室から出てウッドデッキのようなところからすぐ湯船(というか露天風呂)になっている。サンダルなどは置いておくところがないので必要ありません、という添乗員さんの説明がよく判る。
更衣室近くはちょっとぬるめで概ね奥の方が熱いお湯になっているようだ。
WaterProofの写ルンですを手首に引っかけて、まずは大きく一周する。写真を撮ったり撮っていただいたり、美容にいいらしい泥を容器からすくって顔中に塗りたくったり、打たせ湯に打たれたりする。
サウナよりも温泉だ。
ブルーラグーンの底は美容用の泥と同じようにぬるぬるしていたり、溶岩そのものなのかゴツゴツした岩状だったりする。足を取られてこけそうになった。
すぐ横に溶岩が積み上げられて遊歩道のようなものが作られている。湯船からも直接行けるし、見学の人(というか、洋服を着ている人)もどこからか来られるらしく歩いている。私も水着のままで上がってみたら、なーんにもないところで少し高くなっているため、風が吹き付けてあっという間に冷えてしまった。
いわゆる「ブルーラグーン」の外にもミルキーブルーのお湯の池が広がっており、何だか不思議な風景だった
2時間の持ち時間のうち、30分を過ぎる頃にはツアーの方々ほとんどの姿が見えなくなった。私一人、1時間以上もうろうろボンヤリとお湯に浸かる。
それだけ長くお湯に浸かったおかげか、上がってもかなりポカポカしていた。そのポカポカしたところで、ソフトクリームを食べる。
昨日、ゲイシールでソフトクリームを食べていた方が「美味しいよ。」とおっしゃっていて、流石にゲイシールで写真を撮るべく寒風の中で粘っていた直後は食べる気がしなかった。お風呂上がりなら大丈夫だ。
普通サイズでも私の握り拳くらいの大きさがあり、ミルク味であまり甘くなくてさっぱりして美味しかった。
ブルーラグーンのギフトショップも見たら、いかんせん高い。
バスソルト1回分が770クローナもする。1500円のバスソルトなんてとんでもない。その他のローションやクリームなどは推して知るべしである。
アクレリのお土産物屋さんでもブルーラグーン製品が売られていて、そちらの方がお安かったのではないだろうか。バスソルト1回分が700クローナで買えたような記憶がある。
また、空港でもブルーラグーン製品は販売されていた。
ブルーラグーンから今日の宿であるグランドホテルに直行し、17時にチェックインした。アイスランドに到着した日に泊まったホテルだ。もう明日には帰国なのだということをひしひしと感じる。
前回泊まったときはツインベッドルーム、今回は一人で泊まるには無駄に広いダブルルームだった。
テーブルの上にチョコレートの箱が置いてあって、添乗員さんに尋ねたら、レイキャビクの旅行社がバス故障のお詫びとして配ったものだという。
後で聞いた話だと、今日はカルチャーナイトのためレイキャビク中のホテルが満室で、このホテルでも通常はノースモーキングルームにしている部屋も今日だけはスモーキングOKにしてあったらしい。
そのため、テーブルのチョコレートの箱の横に灰皿が置いてあり、これまで出番のなかったお香をたいてリラックスした。
夕食は19時からだ。徒歩15分のスーパーマーケットに出かけようと思ったら、お部屋の確認等々に回ってくるはずの添乗員さんがなかなか現れない。明日の出発は5時とかなり早いから、あちこちで捕まっているのだろう。
ホテルの部屋にお湯を沸かすポットがあったので、持って行ったティーバッグでお茶をいれ、折り紙でくす玉を折った。ドライバーのグンメさんにはお子さんが二人いるという話だったので、二つ作ってお礼代わりに差し上げようという心づもりである。
アイスランド最後の夕食のメニューはこんな感じである。これにアイスランド・ビール(600クローナ)をいただいた。
前菜 クジラのカルパッチョ
メイン 鮭とオオカミウオのソテー
デザート フルーツケーキ コーヒー
グランドホテルのメインダイニングは、アイスランドでも屈指のレストランだそうだ。ツアーのみなさんも、今日はいつものツーリスト・スタイルではなくドレスアップしている方が多かった。私もワンピースなど着る。
オオカミウオは、途中のスーパーで薫製を買った方がいらした。お裾分けをいただいて食べたときにはちょっとクセの強いお魚かと思ったけれど、素直で淡泊な白身魚でおしょうゆで食べたらとても美味しかった。
食事後、何人かの方がカルチャーナイト見物に出かけていらっしゃったけれど、私は明日の朝が早いのと、行きはいいとして、帰りがタクシーにしろ歩くにしろ、アイスランドの治安がいいとは言っても一人では不安だったので、お部屋で過ごすことにした。
そういうことなら、ブルーラグーンで散々お湯につかったとはいえ、さらに温泉気分を満喫しようとバスタブにお湯を張り、硫黄臭いアイスランド版の温泉を心ゆくまで堪能した。
明日は4時にモーニングコール、4時30分から朝食が食べられて、5時にはホテルを出発する。
まずは荷造りをやっつけてしまおうと奮闘していた23時頃、バンッバンッという音が聞こえた。
実はこれまでオーロラはもちろんのこと、星空すら拝めていない。最後のチャンスだとカーテンを全開にしていたので、窓の外に花火が上がっているのが見えた。
カルチャーナイトで花火が上がるとは聞いていたものの、街の中心部の方角だという話で、部屋からは見えないものと諦めていた。それがかなり遠いけれどばっちり正面に見える。
残ったメディアの限りを使って、アイスランドの花火を動画で撮影した。
ふいに花火が途切れ、よくよく外を見ると、大雨が降り出していた。カルチャーナイトに繰り出していた人々は大丈夫だったろうか。
星空とは出会えないまま諦めて多少でも眠ることにして、目覚まし時計を3時30分にセットした。
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